表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/45

会議室まで壊すなんて許せない!

 ノアは会議室に乗り込んできたサバルの眼前にいながら無傷だった。

 空間を統べるノアにとって物理的な攻撃を防ぐのに魔法を使う必要はない。

 むしろ使うこともできない。


 爪研ぎをする熊のようにガリガリとノアを覆う空間の壁を引き裂こうとするが、空間に干渉できないサバルではどうすることもできない。


「そろそろ諦めて謝ったらどうだ?」

「グルルルル」

「だめだな、言葉も通じない。俺がやるのも面倒だ。ワイド、適当に伸してやれ」

「承知した」


 サバルの扱いに困ったノアは傍観していたワイドに丸投げした。

 ワイドも暇していたので快く引き受けた。

 近づくワイドに爪を振り回したサバルだったが、飛んできた枝を払うように軽々と受け流した。


「机に固執するノア様にあしらわれて可哀想ですが、礼儀をわきまえない獣風情が調子に乗るのも気分が悪い。少しばかり私に付き合ってもらいますよ」


 ワイドはサバルの腕を軽く弾き飛ばし、胴に平手を打ち込む。

 衝撃でサバルは再び会議室の外へと飛ばされた。

 砂煙をたてながら飛んでいくサバルに、ワイドは歩いてついて行った。


「久しぶりの戦いがこんな雑魚だとは思いませんでしたが、軽い運動にはちょうどいいでしょう」


 ワイドはそう言って居眠りをしていたマルマとメルメを抱えた。


「むにゃ?」

「なにぃ?わいど」

「久しぶりに運動しましょうね」


 ワイドは嫌そうなふたりに構わず、外へと向かっていった。

 会議室に残ったのはまだ冷静を保てている狐獣人のサプレと人族のジュメだった。


「それで?お前たちも俺に言い掛かりをつけたいのか?」

「「……」」


 ノアは席に座ったままのセプレとジュメに問いかけた。

 二人は俯いたまま何も言わない。

 二人を見ず、ノアはアルフェを向く。

 アルフェもまたノアの視線に気づき、その意味を理解した態度をとる。


「だんまりか……黙ったところで立場が危うくなるのはアルフェだけどな」

「「……!?」」

「俺はアルフェの上司だ。隣人とはいえ、ここでは俺がルールだ。そんな場所でアルフェを理由にアルフェを知る者が言いがかりで暴れている。責任の所在はどこにある?」

「そ、それは……」

「アルフェだよな?」

「あ、アルフェさまでは……」

「じゃあ誰なんだ?お前ら三人か?それともエルフ全体の問題か?」

「え、エルフ様は違います!」

「僕達が悪いです……」

「だよな?」


 ノアの威圧的な声にセプレとジュメは渋々ながら自身が悪いと告白した。


「お前たちはよりにもよって俺が可愛がるオークがつくった机を破壊した。そして俺が夜なべして建てた会議室に穴を開けた。こんなの許せるか?許せねぇよなあ?」


 ノアは壊れた机を愛おしそうに撫でながら、セプレとジュメを責めたてた。

 その後ろでヒルデがぼそっと「会議室を壊したのはノア様ですよね?」と呟く。

 ノアは聞かなかったことにして激情を声に乗せて二人になすり付ける。


「会議室まで壊すなんて、許せねぇよ!」

「「ひぃ!?」」


 ノアの荒げた声にビビり散らすセプレとジュメ。

 ノアの茶番にヒルデがクスクスと笑う。

 場の雰囲気は二人以外には、ほんわかしたものに感じていた。

 そこへサバルを伸してきたワイド達が帰ってきた。


「おや?まだ終わってなかったんですか?」

「ワイドか。そっちは終わったのか?」

「はい、見ての通り、マルマとメルメが倒してくれました」


 ワイドの後ろにはサバルの足を一本ずつ持って引きずるマルマとメルメがいた。

 二人の三倍ほどあるサバルを軽々と持ってきたことに、セプレとジュメはお互いの手を取り合ってプルプルと震えた。


「たらいまー」

「ただいまー」


 マルマとメルメはサバルを会議室まで運ぶと、足を放り投げてノアに抱きついた。


「おかえり、その熊やっぱ口だけだったか?」

「ん、よわよわ」

「ざこだった」

「そうか。アルフェ、こいつ雑魚だったってさ。怒らないから、こいつが獣人ではどれくらいの強さなのか教えてくれるか?」


 マルマとメルメの強さを知らないノアでも、サバルは強そうな見た目をしていたことだけはわかる。

 サバルが貧弱とはいえ、あれだけ威勢のいいことを言っていたのだ。

 ノアはサバルの強さに興味を持った。


「はい……サバルは獣人の中でもCランクの強さがあります」

「しーらんく?それって強いのか?」

「はい、上位20%ほどに属します」

「なるほど。じゃあマルマとメルメはしーらんくか?」

「魔人であるマルマちゃんとメルメちゃんはBランク以上かと思います」

「なるほど。じゃあラウラとリノンは?」

「申し訳ありません……悪魔には詳しくないので……」


 アルフェはおずおずと後ろに下がった。

 ノアは諌めることなく、ワイドに視線を向けた。

 ワイドはコホンと咳払いをした。


「んー、ワイドならわかるか?」

「悪魔の中では弱い部類ですが、人族や獣人族とは比較することはできません。指標が違いますから」

「なるほどな。とりあえずそこの熊カスはここにいる誰よりも弱いってことでいいか?」

「さすがにそれは失礼かと」


 ワイドは三人を見回したあと、ニコリと笑った。


「うちのゴブリンと同じくらいですね」

「へえー、それでよく森を歩けたな」

「運が良かったのでしょう」


 ノアとワイドは三人を馬鹿にするように嘲笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ