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被告ノアは嘘をついている

 親切な門番が一晩中、質問に答えてくれたおかげで街について詳しくなっている。

 その実、ノアを引き止めた門番を牢屋の近くから逃げられないようにしていただけだ。


 冒険者ギルドはノアたちが住む森が隣接しているため、それなりに巨大な施設になっている。

 酒場も併設されているので、ギルドからは少し酒の匂いが漂っている。


 ノアたちが入ると視線がヒルデとルルドに集まった。

 悪魔特有の角は隠しているが、二人共容姿端麗なので視線を釘付けにするのは予測ができたことだ。


 服装はメイドと執事のものではなく、この街に紛れ込むため、普通の服をしている。

 それでも隠しきれないのが立ち振舞だ。

 どうしても洗礼された動きをしてしまう。

 その点、ノアは生まれも育ちも一般的な人種なのでそこまで注目は浴びなかった。


 ファングウルフとブラックリザードを連れている点では一番脅威的に見られていたかもしれない。


 受付に並ぶと前方の冒険者からチラチラと見られた。


「なんだよ」

「な、なんでもないです」

「そうか。ヒルデの胸を見てるのは知っているが、それ以上見るとこのロードが間違ってお前さんの足首をおやつと思って噛み付くかもしれん。もう振り返るのはよしたほうがいいぞ」

「ひぃ!?」


 少し脅したところで後方から冷たい視線を感じるノア。

 そこにはノアを含めた全員に冷ややかな目線を向けるヒルデの姿があった。


「ヒルデ、落ち着け」

「はい……ノア様」

「なんだ?」

「あとで説教です」

「なんでだよ!?」


 ヒルデの気に障った発言をしてしまったことを後悔するノアに、また笑いをこらえるルルド。

 再び足を抱えて倒れるルルドがいた。


 受付に到着すると視線を泳がず受付嬢。

 全員を見回したあと、ルルドに視線を向けて話し始めた。


「今日はどのような御用で?」

「あ、私ですか?こちらのノア様に用事を聞いてください」

「え?あ、ごめんなさい。なんでしょうか?」

「身分証として登録しようかと思って」

「歳はいくつでしょうか?」

「24だが」

「え?」

「「ええ!?」」


 受付嬢の問いにさらっと答えるノアだったが、見た目にそぐわない年齢に受付嬢だけでなく、ルルドとヒルデさえ驚いていた。


「なんだよ、人は見た目に関係なく歳はとるものなんだよ。ちょっと自分の常識と違うからって驚くなよ」


 ノアの言い分に対して受付嬢はある質問を投げかけた。


「もしかしてハーフエルフの方でしょうか?」

「ちがうよ?」

「では竜人でしょうか?」

「ちがう。普通に人族」

「うそだぁ!?」

「嘘じゃねぇよ。まったくなんだこいつ。失礼なやつだな」


 プンスカするノアに対して、「お前が何なんだよ」と言いたげな三人。

 そこへ騒ぎを聞きつけてきた男がいた。


「なんだなんだ、騒々しいなぁ」

「あ、ギルドマスター」


 その男はこのギルドのトップ、ギルドマスターだった。


「聞いてください、ギルドマスター。この方が自分のことを24歳とおっしゃるんです。どう考えても半分の12歳そこらですよね?」

「人族といっていたな……そいつはどこにいる?年齢詐称で詰め所で反省してもらうぞ」

「こちらの方です」

「あ?……!?」

「あ、槍ブンブン丸じゃん。チッスチッス」


 ギルドマスターと呼ばれる男こそ、領主との遭遇時にいの一番にノアに攻撃を仕掛けた男だった。


「なぜお前がここに!」

「ギルドマスター?知り合いなんですか?」

「知り合いもなにもこいつはっがっ!?」


 ギルドマスターがなにかを言う前に間髪を入れず、ノアはスネに蹴りを加えた。

 足を抱えて倒れるギルドマスター。

 ノアは近づいて耳元でこう言った。


「余計なことをすると領主に訴えますよ」


 その一言にギルドマスターは頷くしかなかった。

 手出し無用とされていたノアにまで言われてしまったらギルドマスターの立場も危ういものになる。


「俺は登録をしに来ただけ、それ以上でもそれ以下でもない。わかったか?」


 頷いたギルドマスターはすぐに行動に出た。

 通常試験を受けなければならない冒険者登録だが、ノアたちに関しては免除され雑用などから行う最低ランクではなく、魔物討伐も可能な二つ上のランクに登録された。


 反論するものはいたが、油断していたとはいえ、ギルドマスターのスネに一撃を入れて鎮めることができる実力は生半可なものではない。

 よってノアたちがこのランクで登録できるのは正当なものだとギルドマスターは言った。


 これには反論することができなかった。

 無事登録のできたノアはギルドマスターを伝書ハトのように使い、領主に連絡を取ることに成功した。


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