脚に蹴りを入れられてしまってな……
三日後の朝、無事進化することのできたエルヴィスとロードは逞しい顔をしてノアが起きてくるのを待っていた。
しかし、ノアは昼に起きてきた。
その頃にはエルヴィスとロードもいつもの顔に戻っていた。
「ん?どした?」
「ギャウッ」
「ウォンッ」
「なに?起きてくるのが遅い?あー、悪い。起きてたんだが今日のために準備してたら時間がかかってしまってな」
ノアもノアで準備しているものはあったと謝罪した。
これにはエルヴィスもロードも怒られないとシュンとした。
「旅の中で戦うことがあるはずだ。そのときに見せてくれよ」
「ギャウッ!」
「ウォンッ!」
「いい返事だ」
二人のやる気を肌で感じたノアは、二人を連れて会議場に向かった。
そこにはヒルデとフラン、ルルド、他数名のエルフがいた。
「あれ?他の執事たちは?」
「先行して行かれましたよ。安全確保のためでもあります」
「そうか」
人数が減ってしまったが、やることは変わりない。
この三日間で戦力は整えておいた。
行商人が訪れることはなかったが、ユウトが採掘してきた鉱石が鉄よりも上の素材だった。
それは魔物たちの血によって強化された魔血鉄と呼ばれるものだった。
この鉱石は希少なもので自然界でお目にかかることはほぼないそうだ。
ユウトも心なしか誇らしげだったので、ノアはリラのいないところで頭を撫でてやった。
この鉱石は悪魔の中でもたまに鍛冶をやっていた者が剣や槍に加工してくれるそうだ。
三日あった一日はそのための鍛冶場づくりに没頭していた。
残りの一日は畑の拡張、もう一日はのんびりしていた。
旅のために休むことも大切だ。
「よし、出発だ」
「ギャウッ!」
「ウォンッ!」
やる気満々なエルヴィスとロードはノアたちの先頭を歩き、警戒にあたった。
あの領主がいる街は徒歩で三日かかるらしいが、ノアが面倒という理由で空間を繋げて3時間に短縮した。
せっかくやる気だったエルヴィスとロードは不貞腐れてしまった。
「ごめんって」と謝るノアに二人は罰だと言わんばかりに、ノアの頭と肩にのしかかった。
「重っ……」
エルヴィスの大きさはすでにノアの半分くらいの大きさがあり、ロードはノアと同じくらいの大きさがある。
重くない訳がない。
短縮したはずの時間は二人によって二時間増え、着いた頃には昼間になっていた。
そこへ先行していた執事達が合流したのだが、やはり彼らも不貞腐れていた。
不貞腐れた彼らにノアは後程お詫びをすると約束をした。
街への道にはたくさんの馬車や人が並んでいた。
入場するのにも制限があるのかもしれない。
そこへ並んで待つことになった。
列の進みは遅く、その頃には夕方になっていた。
順番が来ると門番にマジマジと見られた。
「ふむ、どこから来たのだね?」
「あっちの森」
「……村名はあるか?」
「はっ!?そういえばなかったな」
「あー、この街には何しに?」
「冒険者になりに」
「そうか。それでそのウルフとリザードはなにかね?」
「あ?見てわからないか?配下だよ」
「……詰め所に来てもらう」
「なんでだよ!?」
ノアは門番たちに連れられ、詰め所に向かうことになった。
ヒルデやフラン、ルルドたちはそのまま素通りで入ることができた。
止められたのはノアだけだった。
ノアは両脇を抱えられた状態でヒルデたちに指示を出した。
ヒルデたちが笑いをこらえながら頷くとそそくさと街の中へ消えていった。
「なんで俺だけ……」
エルヴィスとロードとノアはその日、詰め所で一泊した。
エルヴィスとロードが暴れることがないことが証明され、次の日に釈放された。
「二匹にはこのバンダナを着けてくれ。無害であることの証になる」
疲れ切った声で門番はバンダナを二つ渡した。
門番はノアにつきっきりだったため、疲れているのだ。
「わかった」
解放されたノアを待っていたのはルルドとヒルデだ。
「なんだよ」
「い、いえ」
今度はノアが不貞腐れていた。
笑いをこらえるルルドに蹴りを一発入れた。
足を抱えて倒れるルルドを置いて、ノアとヒルデは冒険者ギルドがある場所へと向かった。




