優しいからこそ人の感情には怒りが存在するのだ、なら罵倒されて喜ばれることに優しさはあるのだろうか
ノアの問いかけに最初に答えたのはユノンだった。
「でしたら、まず装備を整えるのはどうでしょうか?」
「あぁ、そういえば鉄で揃えていたな。他にいいものはあるのか?」
「ノア様が奪ってきた槍の……」
「奪ってないからな。慰謝料だから。勘違いしないでよねっ」
「そういうことにしておきます」
にこにこしながら軽くスルーしたユノンは、槍を持ち出して先端部分を指差した。
「この部分はミスリルと呼ばれる大変希少な素材が使われてます。こちらで武具を一式揃えるのはどうでしょうか?」
「いい素材なのか?」
「はい。この世界にある鉱物の中では上位に属してます」
「なるほど……」
ユノンの意見を聞き入れ、ミスリルを用意するにはどれだけのポイントを割く必要があるか思考する。
「あー、ミスリルはやめとこう」
「どうしてですか?」
「高すぎる」
「そうですか……」
ミスリルは1キロ10万を超えるポイントが必要なようで、今の資金では到底買え揃えることは難しい。
「他にはないか?」
「それだったら、鉱脈から掘るのはどう?」
「あるのか?ユウト」
「ある」
「さすがユウトちゃん、やるわね」
ユウトの答えにリラが即座に褒め称える。
居心地が悪そうにするユウト。
「あー、ユウト。オークたちを連れてその鉱脈に行ってくれないか?」
「わかった」
「あと、このツルハシを持っていけ。10本あれば足りるか?」
「うん」
ユウトは外で待機していたオークたちを連れて鉱脈に向かった。
リラは「ユウトちゃん成分が足りない」と呟いていた。
ユウトは子供の見た目をしているが悪魔の中では大人の部類だ。
甘やかすのにも限度がある。
「素材は目処がついた。あとは俺が変換したらいいだけだが、それも問題がある」
「品質……ですか?」
問題に対してワイドがすぐに思いついた。
「その通りだ。俺が作るとどうしても普通程度の品質にしかならない。この槍を見ればわかる。俺のとはだいぶ違う」
ミスリルの槍と量産で出た鉄槍は装飾から鋭さまでなにもかも違う。
「そこで武具職人を勧誘してくる必要がある。俺の召喚で引くのにも確率が厳しすぎる。そういう種族がいるか知らないか?」
「心当たりがあります」
「なんだ?アルフェ」
エルフの姫、今では畑の管理人となっているアルフェか手を上げて発言した。
「私たちが住んでいた集落にも度々武具を売りに来ていた行商人の方がいました。その方でしたら、もしかしたら武器を作れる方を知っているかもしれません」
「なるほど。今は集落には誰も住んでないな。行商人が来る時期は決まってるのか?」
「そうですね……時期的に一週間以内に来るかと思います」
「そうか。よし、アルフェはワイドと一緒に行商人をここに連れてきてくれ」
「はい!」
「わかりました」
交渉の支度があるとワイドはそそくさと会議場から退出した。
アルフェは農作業をしているエルフたちを連れ、集落へと向かった。
護衛には清潔なオークとゴブリンも連れて行った。
この辺りでは彼らに適うものは未だ遭遇していない。
「よし、あとは俺と街に行くメンバーだけだな」
「では、私が……」
「ユノンはだめだ。ここのトップ代理として残ってもらう必要がある。なによりここで俺の次に強いのはユノンだ」
「わかりました……」
「残念そうにするな。お土産は持ってくるからな。リラと仲良くしてくれ」
「まぁ、ノア様ったら優しいのね」
「まぁな、俺は優しいからな」
リラがゆるりという言葉に反論することなくいい返事をするノア。
街に行くメンバーに選ばれるとしたら、残っている者は少ない。
四方から期待の眼差しを受けるノアは、それぞれに目線を向けて告げた。
「マルマとメルメ、ラウラとリノンもだめだ。子供だからな」
「ひどいよ、ノア様」
「信じてたのに……」
「残念です……」
「えぇ!?私も!?」
それぞれの悲しそうな反応に心を打たれるノアだったが、だめなものはだめ、批判的な態度は変わらなかった。




