復讐はなにも生まない、ならば戦争だ
シルフィは目的のために羊たちのいる柵の中に入っていった。
「じゃあ頑張ってくれ、俺たちも仕事に行ってくる」
「はーい。あ、そうでした。ペトちゃんが帰ってきてましたよ」
「なに?どこにいる?」
「ドライアド様のところです」
「わかった。すぐいく」
ノアはワイドを連れて畑の方に向かった。
畑には野菜を収穫するエルフたちの姿があった。
「なんじゃ、ノア」
「ここにペトがいるって聞いたんだけど?」
「あぁ、あっちじゃ。今手当をしておる」
「なに?」
「詳しくはペトに聞いとくれ。ワシには言葉がわからぬ」
「あぁ」
ノアは怒りを募らせ、ペトのいる小屋に入っていった。
そこには片羽根を血だらけにしたペトの姿があった。
「ペトッ!」
「ピィ……」
弱々しいペトの鳴き声にノアはそっと頭をなでた。
「なにがあったんだ?」
「ピィーピィー」
「なに?」
「ピィーピィー」
「よく飛んで帰って来れたな」
「ピィー」
「わかった。ゆっくり休んでくれ」
ノアはペトの脚につけられた紙をとって小屋から出た。
ノアが歩いていると後ろからワイドが近づいてきた。
「ペトは大丈夫でしたか?」
「命に別状はない。翼が矢に貫かれただけだ」
「そうですか……」
「ペトの話ではあの街の領主の家にいたが、俺に用があり、この手紙をお願いされたそうだ。そこまではいい。帰ってくる最中に何処かから矢が撃たれてあの様だそうだ」
「相手は誰かわかってるのですか?」
「おそらく冒険者と呼ばれる者だ。野生のホークと間違えたんだろ」
「それはそれは……」
「復讐できるような相手じゃない。奴らも生きるためにやってんだ。仕方ねぇ。だが、このままじゃやられっぱなしになる。それはなんとか避けたい」
ノアは領主の手紙を読みながら策を練る。
ワイドもまた思考を揺らしていいものはないかと考える。
「この件は他のやつにも相談したほうが良さそうだ」
「そうですね」
その夜、有権者を集めて会議を行った。
ボークと仲の良かったゴブリンたちはかなりご乱心だった。
けれどもノアは冷静になるように仕向ける。
なぜならノアたちのやってることも大差ないからだ。
不潔ゴブリンだって家族がいて、生きるためにエルフを殺している。
それだってノアたちのやってることと変わりないと。
「それでどうされるのですか?」
ワイドは冷静なノアに問いただす。
「そうだな……まずは領主のところに行ってくる」
「それは手紙の件ですか?」
「あぁ。どうやらあちらは食糧事情が悪いらしい。今年は不作でなんとか隣の領地から食糧を買っているが、このままではまずい状態になるらしい。藁にもすがる思いでこの手紙を寄越したんだろうよ」
「ノア様の信頼が厚いというのはさすがに早すぎる」
ユノンはもっともらしい事を言う。
それにはノアも同意する。
「確かにな。俺を呼んだ間に俺たちの家に襲撃を仕掛けるってのも視野に入れとくべきだな」
「グギャッ!」
「フモゥ!」
「落ち着け、俺たちはまだ奴らのことをわかっていない。気を張るのには敵だとわかってからでいい。だが可能性は視野に入れて準備をしておく必要がある。なにかいいものはないか?」
ノアは戦闘もあり得ることも考え、全員に意見を聞くことにした。




