お義父さんと呼ぶには早過ぎた
軍隊が森からいなくなって数日が経過した。
その間にノアの街は発展した。
食料が安定してからは主に倉庫の作成と道の整備、新たな土地の開拓を行った。
ゴブリンがハイゴブリンになり、そしてホブゴブリンに進化する者が増えてきた。
大量の経験値を得て進化する、というのが、この世界の理だ。
つまり、経験を積めば積むほど、種族は進化していく。
労働者の彼らはそうだが、まさかあいつらが進化するとはノアも想定していなかった。
「メェーメェー」
「羊さんや、どうしてそんなに大きいのかな?」
「メェーメェー」
「進化?」
「メェーメェー」
そう、進化したものというのは、羊さんのことだ。
羊さんだけではない。
牛さんも、蜘蛛さんも、スライムくんも進化した。
それだけ時間が経ったってことだ。
羊さんは他の羊さんと戯れに行った。
一人になったノアは柵によりかかる。
そこへ足取りのおぼつかないワイドがやって来た。
「時間が過ぎるというのは恐ろしいものよ」
「そうですね。まさか、マルマとメルメに一緒にお風呂に入ることを拒まれるとは思いませんでした」
ノアに同意するワイドだ。
しかし、その内容があまりにも驚異的な内容だった。
「……今まで一緒に入ってたのが驚きだよ」
「私の生き甲斐が……」
「やっぱロリコンじゃねぇか!」
「違うのですよ。性的なものではなく、保護者のですね……」
「わかったわかった。ロリコンを隠したいのはわかるよ。でもな、ロリには触れてはいけない。わかるな?」
ノアは真剣にワイドにイエスロリータノータッチを説き始めた。
「わかりません」
「そうか……それほど重症なんだな」
ワイドに哀れみの目を向けるノアだったが、ワイドからしたらその概念こそわからないものだ。
ワイドの文化とノアの文化、価値観は違うのだ。
「まぁ、でもノア様ほど私はおかしくありませんがね」
「言ってくれるねぇ?」
「まだ婚約もしていない未婚の娘……しかも同時に3人と同衾するなど……」
「ん?」
話の流れが変わったことを察知するノア。
「ノア様、二人はまだノア様よりも幼いのですよ。それにメイドとはいえ、元々は他家の使用人。まさかそのような関係にあるとは露知らず……ノア様もやりますね!」
「ごめん、ちょっと意味わからん。同衾?昼寝してただけだろ?」
「昼だろうと夜だろうと時間は関係ありません。同じ寝床で寝れば、それは婚約したも同然ですよ」
「ふむ、なるほど。今日からよろしくな、お義父さん」
瞬時に何かを悟ったノアは、にこっと笑ってワイドにそう言った。
「いまなんて言った?」とばかりに見つめ返すワイドにノアはほくそ笑む。
「マルマとメルメの保護者なんだから。俺の保護者にもなるってことだろ?な、お義父さん」
「……ノア様、切り替え早すぎません?」
「なんだい、お義父さん!」
ノアはわざとらしく言うと、ワイドは渋い顔をした。
「元気なさそうだね!そうか、言い方が違うのか。なんだい、パパ!」
「ううっ……」
「ほら、これでも食べて元気だしなよ」
ノアはワイドに緑色のまんまるとしたものを渡した。
渡されたワイドはそれを見て戸惑った。
「……?なんですか、これ」
「あ?お前、あれだよ。な、羊さん」
ノアもまた、それが何なのかわからなかった。
通りすがりの羊さんにノアが尋ねると、羊さんはワイドの手元を覗き込んだあと、一言だけ鳴いて去っていった。
「羊さんはなんて?」
「ん?あぁ……羊さんのうんちだそうだ」
「なんてもの渡すんですか!」
ワイドはノアに羊さんのうんちを投げつけた。
寸でのところで避けるノア。
「うわっ!?危なッ!」
「……っ!?」
「まったく……ノア様は油断もすきもない」
呆れ顔をするワイド。
「あの……」
二人が言い合いをしていると、一人のエルフの女性が現れた。
彼女の服にはワイドが投げたと思われる羊さんのうんちが付着していた。
それに気づいた二人は居心地の悪そうに視線をそらした。
「「あっ……ごめん」」
「い、いえ、いいんです。この服は土で汚れているので」
「えーっと」
「シルフィです」
「シルフィはどうしてここに?」
シルティは服についた緑の塊を持った。
「羊さんたちからこれを貰いに来たんです」
「食べるのか?」
「食べません!これは畑の肥料に使えるんです。草食魔物のものは特に肥料として優秀でして、毎日出るこちらをもらうついでに小屋の掃除もしていきます」
「なるほど、ご苦労であった!」
なんとなく褒めないといけない場面だと勘付いたノアは、シルフィの肩を叩いて褒めた。
「なんで偉そうなんですか」
「うるさいよ、そこ」
ワイドが懐疑的な目線をノアに送った。
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