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赤飯がない世界ではなんて連想する?

 まさか廃墟の街を把握しているとは思わなかった。

 このまま放置すれば、この人数が街に来てしまう。

 嫌でも戦闘になるのは目に見えている。

 ここで止められるなら、止めるべきだ。

 ノアは姿を現し、会話に混ざることにした。


「よくないな。やめてもらえるかな?」


 ノアが後ろから声をかけると、ガタッと立ち上がった男たちは一人を除いて武器を構えてノアがいる方を向いた。


「やあ、話は聞かせてもらったよ。でも君たちが考えた魔物はもういない。だから安心して家に帰るといいよ」


 ノアが新たな提案をすると、男たちは威圧的に問うた。


「誰だ!貴様!」

「どこから侵入した!」


 あまりのうるささに耳を塞ぐノア。


「どこって普通に入り口からだけど?そんなことより話は聞いたよな?例の街には近づいてほしくないんだよ、言葉わかる?」


 ノアはマイペースにそう言うと、武器を構えた男たちに歩み寄った。


「誰だか知らぬが、成敗してくれる!」


 一人が槍をノアに突き刺した。

 それはノアを突き抜けて地面に突き刺さった。


「ふん、身の程知らずめ!」

「いま、俺を殺そうとしたの?まだ事情も知らない誰ともわからない、俺を?」


 ノアは槍が突き刺さったまま会話を試みた。


「なっ!?」

「人を殺そうとしたんだ。殺される覚悟はあるんだよな?」


 ノアは槍で刺してきた男に対し、殺気を向けた。


「うぐぅっ!?」


 周りを見て、話が通じそうな者を探す。

 武器を持った時点でその者達は敵意を持ったことになる。

 信用は勝ち取れない。

 残っているのはひとり。

 その男はこの状況下で顔色一つ変えることがなかった。


「ねぇ、あんたなら、話が通じそうだな」

「要件はなんだ?」


 男はノアを見た。


「さっきも言った通り、あの場所には行ってほしくないんだ。それだけじゃ、だめか?」

「だめだ。それでは、私の街に被害が出ないか判断できん」


 男はあくまでも脅威の有無を知りたいようだ。


「あんたの街がどこにあるかも知らんから、俺は手を出さないよ」

「ふむ、では一つだけ聞かせてくれ」

「なんだ?」

「エルフの集落を襲った魔物はもういないのか?」

「俺が言っても信用できるのか?」

「そなたが言うことだ。信用に値する」

「そうか、あんた面白いな。そうだな、襲った魔物はもういないな」

「ふむ……協力感謝する」

「気にするな。俺も無用な争いはしたくないのでね」


 いつまでも真顔のままの男にノアは笑った。


「それだけ分かれば十分だ。んー、そうだ。また聞きたいことがあったら……」


 ノアはあることを思いつき、テントの外出た。

 そこには騒ぎを聞きつけた兵士たちがいた。

 槍が刺さっているにも関わらず、動いていることに恐怖して誰も近づくことはなかった。


「?……まぁいいか。ホーク、来てくれ」


 ノアは空を飛ぶ1羽の鳥を呼び出した。

 急降下してきたホークはノアの前でホバリングすると、差し出した腕に優しく掴まった。


「よしよし、いい子だ。お前には仕事を頼むことになる。しばらく会わないことになるかもしれないが、寂しくなったらいつでも帰ってきていいからな?」

「ピィーッ」


 いい返事をするホークを少し愛でる。

 ノアはホークを腕に乗せたまま、再びテントの中へと入っていった。


「あんたは面白い人だから通信手段を与えておくよ」

「その魔物は?」

「俺の配下だ。世話は必要ないが、あんたの質問を俺に届けてくれる役割がある。仲良くしてやってくれよ」

「待て。それなら伝令ハトが……」

「たぶん、うちに来たら間違いなく食べるぞ」

「……ありがたく頂こう」


 ノアはホークを男の机の前に下ろした。


「よし、今日からお前はペトだ」

「ピィーッ!!」

「よしよし」


 ノアは気軽に名前をつけると、歓喜の鳴き声をするペト。

 ノアは用事が済んだとばかりに踵を返した。


「じゃ、慰謝料にこの槍はもらっとくから、またな」


 ノアは手をひらひらさせてその場から去っていった。

 ノアに詰寄ろうと兵士たちが集まったが、ノアが作り出した空間の壁により髪の毛一本すら触れることができなかった。

 ノアが森に入る手前でワイドが迎えに来た。


「ノア様、どうでしたか?」

「うーん、まずまずと言ったところかな?」

「そうですか。では皆と一緒に帰りましょう」

「帰ったら赤飯でも食べるか」

「なんですか、それ?血を塗り込んだパンですか?」

「誰がそんなもの食べるか!?」


 終始楽しそうにするノアとワイドは、緊張感漂う人々を振り返ることなく、去っていった。


 残された兵士たちはワイドを見て肌で感じ、すぐに勝てないことを確信していた。

 あれは一種の化け物だと。


「……っ!?なんだ、あれは……?」


 一人、また一人と恐怖に打ちひしがれた。

 大量の汗をかきながら、相手取らなくてよかったことに安堵した。

 会議をしていた者もまた、ノアを相手をしていた男以外は震えていた。


「な、なんだったんだ、あの男は!?」

「りょ、領主様、あれは……?」

「ふむ、あの子供は人だろう。付き添いの男は間違いなく魔人だな」

「魔人!?」

「あの一人で国をも滅ぼすと言われるあの魔人ですか!?」


 驚きのあまり叫びたくなる気持ちもわかる。

 ノアの相手をしていた、男はそう思った。

 その男は言われたとおり、ある街の領主だ。


「ふむ、そうだ」

「いいのでしょうか?あのまま放っておいて?」

「死にに行きたいなら止めぬが、その場合は私の街が無関係であることを示す必要がある。一族処刑で良いか?」

「よくありません!」

「それくらいの覚悟で言ってくれ。私は敵対したくない」


 領主は一人、ペトと名付けられたホークを見た。

 よくいる魔物の一種だが、あの男は言ったのだ。

 このホークが配下だと。

 つまり、あの子供こそ、あの魔人の主であり、このあたり一帯の支配者なのだと。


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