敵陣特攻するなら会議室に限る
気持ちのいい日差しがベッドをより気持ちのいいものにし、風は優しく頬を撫でた。
目が覚めるとマルマとメルメの姿はなく、ヒルデがすやすやと眠っていた。
「んっ………んーん!」
腕を上げて伸びをすると、身だしなみを整え、ベッドから離れた。
昼間はご飯を食べるために狩りに出た魔物も帰って来ている。
嬉しそうにドッグフードを食べるウルフの姿や飯の支度をするメイドの姿があった。
軽く挨拶をして、畑に向かうとまた拡張工事をしていた。
「よっ、やってるか?」
ノアは小休憩中のエルフに遠くから話しかけると、その女性はにこっと笑って手招きした。
「もう、怖くないから大丈夫ですよ?」
「ほんとうか?近づいた瞬間、ギャン泣きしない?」
「し、しませんよ!」
少し前までギャン泣きしていたと言われて動揺する。
「あ〜、いま言葉に詰まったな。泣くんだろ?泣くんやろ?」
「泣きません!」
「本当に?」
「ほんとうです!」
「そこまで言うなら……」とノアは呟いて、近くにあった切り株の椅子に腰を下ろした。
「それで、いまどんな感じ?」
「そうですね……」
おっとりしたエルフの女性は畑であったこと、ドライアドから教わったこと、この短時間でよく学べたなって思えるくらい色々ノアに教えた。
ときおり、頷きながら質問を挟むノア。
女性もまたそれに答えた。
「助かったよ、色々聞けてよかった」
「ノア様のおかげで安全に住めて職も与えられたんですから。これくらいのこといつでも構いませんよ」
「そうか、なら安心だ。畑や食料管理については任せるから好きにしてくれ。こうやってたまに話を聞きに来るから、またよろしくな」
「ええ、待ってます」
「あぁ。そうだ、名前はなんて言うんだ?」
「フランです」
ノアは名前を聞き、何度かくり返し言うと、名前を覚えた。
フランに早速、畑に関するリーダーに任命する。
エルフの姫、アルフェはいるが、彼女はどちらかといえば、他種族との交渉とかそのあたりを担当すべきだ。
「じゃあ、あとは任せたよ」
「わかりました」
フランに仕事を任せ、またひとり散歩に向かった。
仕事をするゴブリンやオークを見つけては励まし、悪魔メイドがいれば調子を聞いた。
散歩を続けていると、ハイゴブリンたちと物々しい雰囲気を纏ったユウトを見つけた。
「どうした?」
「フモゥフモゥ」
「なに?それはほんとうか?」
「グギャッギャッ」
ハイオークとハイゴブリンの話を聞いたノアもまた、その雰囲気を纏った。
「交渉は俺とワイドがやる。お前たちは俺が呼んだら来い。いいな?」
ノアはワイドを連れ、森の中を進んだ。
話を少しだけ聞いていたワイドもその雰囲気には納得した。
森にある集団が現れたのだ。
それは、この世界でもっとも群れて生活する種族。
ノアの配下にはいないその種族は、まるですべてが自身の領域であるかのように踏み歩き、絶対的支配者のように振る舞う。
嫌悪感を示さないわけがない。
森の中を進み、その集団を見つけた。
その場所は人工的に森を切り拓いたのか、円上に草木がなくなっていた。
テントが張られ、テントを守るように武装した男たちがいた。
ただのピクニックではなさそうだ。
そこには檻もあり、なにかを捕獲しようとしていることがわかる。
ノアはそこにひとりで侵入した。
誰にも気づかれることもなく、のんびりと一番立派なテントへと近づいた。
「邪魔するよ」
「あ、はーい?」
ノアの声に生返事を返す見張りだったが、そこには誰もおらず、幻聴だったのだろうか?と困惑するのだった。
ノアはテントに入る。
そこには五人の精悍な中年の男たちが会議を開いていた。
「どうやら、エルフの集落は壊滅しているらしい」
「やはりそうか。ゴブリンキングかオークキングが出現した可能性が高い」
「調査に来てよかった。エルフ達のことは残念だったが、私達の街は守れそうだ」
「ふむ、それにしてもおかしいのは遭遇する魔物の種類だ。今のところ雑多なゴブリンしか見ておらん。それに獣の類も以前に比べて少なすぎる」
「確かに。ゴブリンキングではなく、もっと大型の魔物はどうだ?」
「それなら、エルフ達は食われたと考えるなら妥当じゃな」
調査に来ているとわかったノアは安心した。
自身の家のことが気づかれてはいなかった。
略奪に来たのではないことは把握できた。
このまま何事もないのなら放置してもいいだろう、と背中を向けたところで話の流れが変わった。
「この辺りにそんな魔物が潜める場所といえば、廃墟の街くらいしかないのでは?」
「そうじゃな。あの辺りなら餌にも困らんじゃろ。なによりあそこは強い魔物が多いからの」
「大人数で来たんじゃ。一度偵察に向かってもいいのでは?」
「それは名案だ」
「いいや、それは感化できない」
ノアは彼らに対し警告を下した。




