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拾った子犬が実は農家で二番目に強い隣人だった

「さて、君たちの処遇を決めようか」


 ノアは目の前で固唾を飲む女性たち、エルフ30名を見回す。

 彼女たちは今から下される待遇がどのようなものかと緊張していた。

 皆、顔がこわばっている。


 なにせ、ノアの背後には裏切ったとはいえ、つい数日前までともに暮らしてきたエルフの男達がいる。

 それも何処かしらの身体の一部を欠損、あるいは息絶えた者たちだ。

 これを見て、恐怖に震えないものはまずいない。


 その様子をノアの配下たちは見守っていた。

 口を出すことはせず、傍観者を気取る。

 ノアの雰囲気に飲み込まれ、この場はノアの支配下になっている。


「俺はさ、アルフェにも言った通り、隣人のような感覚で君たちには過ごしてもらいたい。そこで君たちには俺から仕事を与えようと思っている。それはなんだと思う?」


 ノアは、エルフの女性たちに歩み寄り、アルフェに目配せをした。


「は、はい。彼らの処刑でしょうか?」


 アルフェは少しだけ引きつった表情を見せたあと、キッと男達を睨みつけた。

 その視線にエルフの男達は「ひぇっ」と怯えた。

 それに対し、ノアの顔色は悪い。


「そんな物騒な隣人がいてたまるか!隣人だよ?ただのお隣さん!」


 ノアは焦ったように言うと、「コホンっ」とわざとらしい咳払いをした。


「そんなもんは任せるつもりはない。俺が任せたいのはずばり、農業だ!」


 ノアはビシッとアルフェたちを指差したが、予想をしていなかったエルフたちはキョトンとした顔を見せた。


「そんな顔もするだろうと思っていたさ。けどなうちには労働力が足りんのよ。確かにゴブリンたちはいるけど、あいつら不器用なんだよ。野菜の収穫なんて任せられると思う?無理だろ」

「グギャッギャ!」

「フモゥ!」

「悪い。悪口じゃないが、事実なんだ。受け止めてくれ」

「グギャァ……」

「フモフモゥ……」


 落ち込むゴブリンたちの肩をたたく。

 呆けるエルフたちには実際に職場を見せるのがはやいと思ったノアは、見張りを除いた全員を連れて畑に訪れた。


「ここだ」


 そこはオークが耕し、ドライアドが育てた畑だ。

 わずか数日で出来た畑には多種多様な野菜が実をつけ、それをドライアドがひとりで収穫作業を行っていた。

 真剣に作業してるのでいきなり話しかけるのは申し訳なく、ノアはアルフェたちに畑の説明をすることにした。


「ここが君たちに働いてもらいたい場所だ。見ての通り数多くの野菜がある。今は十分広いがこれからも広げていくつもりだから、人数がほしいんだ」

「あ、あの、ノア様、あちらの方は?」

「ドラ……ドライフラワー?」


 ノアはドライアドという単語を思い出せず、似ている単語を言った。

 遠くから見ていたマルマはノアに見えるように移動し、手でバッテンをつくった。


「あ、違うか。なんだっけ?」

「あの方はもしや、ドライアド様ではないでしょうか?」

「ドラヤ……それだ!」


 アルフェの言葉でやっと思い出したノアは指パッチンをして閃いた。


「ドライアド様にお仕えできるのですか?」

「なんだ、ドライアドのことを知ってるのか?」

「知っているも何も大精霊様ではないですか!」


 興奮気味のアルフェにノアはこともなげに喋りだした。


「あー、そういえばそうだったな。まぁ働くにしてもまずはあいつを混ぜて話すべきだな。ちょっと呼んでくるわ」


 ノアはアルフェたちを置いて、一人ドライアドがいる畑へと向かった。

 真剣に野菜の世話をするドライアドのことに気を遣って、畑に入らず、畑の前で声をかける。

 すると、こちらに気づいたドライアドがノアの方へ歩いていった。


「どうしたんじゃ?そんな大勢で」

「ちょっと頼みたいことがあってな?」


 頼みと聞いて嫌そうな顔をするドライアド。


「頼み?収穫で忙しいんじゃが」

「それに関わることだ。ちょっとだけだから」

「うーむ、少しだけじゃぞ?」

「おーけーおーけー」


 嫌々ながらノアに従うドライアド。


「それで頼みとは?」

「まぁ、そうかっかするなよ。頼みっていうかお願いだな。新しく住むことになったエルフたちと収穫、農業を一緒にやってもらえないか?」

「それがノアのお願いか?」


 ノアの頼みを聞いて少しだけ顔を険しくするドライアド。


「だめか?」


 少しだけ不安そうにするノアだったが、ドライアドはそんな不安など木っ端微塵にしてしまう勢いでまくしたてた。


「だめなわけあるか!むしろ大歓迎じゃ!エルフといえば我が子も同然。植物に関するスペシャリストじゃぞ。まぁ、ワシの次くらいになっ!」

「そうなのか?」


 不思議そうな顔をするノアに驚きの隠せないドライアド。


「知らずに連れてきたのか!?」

「いや、拾った」

「子犬じゃ、ありまいし……まぁそんなことはよい。教えることはたくさんある。早速仕事に取り掛かってもらおう!それでいいかのぅ?」

「いいぞ。俺もそろそろ昼寝したいし……」

「まだ朝じゃぞ……」


 ノアに呆れ半分笑い半分で流したドライアドはエルフたちをまとめ上げて、早速収穫へと入った。

 ひとりだけ置いていかれたノアは、後ろで傍観していた配下たちを連れて畑から離れていった。


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