最強の農家を召喚するには犠牲はつきものだ。剥ぎ取ったものならすでに俺達のものってことでいいよな?
夕方、エルフたちを収容して探索部隊を待っていると、大きな猪をオークたちが運んできた。
それも丸々と太った猪で、それを五匹も運んできた。
他にもウサギやら鳥やらをたくさん狩ってきていた。
「やるじゃないか!」
「グギャッギャ」
「フモゥ!」
活躍の少なかったゴブリンたちが最後に一番の活躍を見せてくれた一日だった。
食料問題に解決の日差しが差し込んできた。
「これは、うん。この人数だと一日でなくなるな」
ウルフとホーク、蜥蜴にはドックフードでなんとかなるが、他の者達の食事が今のところ、フルーツしかない。
数も限られているし、このままでは餓死してしまう。
「どうすべきか」
「ノア様、ドライアドはどうでしょうか?」
「食えるのか?」
「違います。植物の成長を促進させる能力を持っているのです」
「なるほど、畑か。それはいい案だな、採用しよう。とりま夕飯を食べ終わってからにしようぜ」
料理はメイドと執事が率先して行ってくれた。
女エルフ達は家から出ることはなく、まだ閉じこもっている。
目覚めたという報告だけを聞いたノアは、女エルフたちの真意を聞くためにメイドたちに伝言を頼んだ。
夕飯は簡単な汁物で、調理器具は新たにノアが召喚した。
皿に関してはノアが事前につくっていたものがあったが、結局足りず、追加で作成した。
初めてのまともな食事に舌鼓をうった。
満腹になると風呂に入って眠りにつく者が増えていったところで、ノアはあることに気付いた。
「あ、ユノンとリラの家つくってなかったわ」
急遽、叩き起こしてオークたちに木材を運ばせ、石材も使って巨大な屋敷を建てた。
そこに絨毯やらベッドやらを執事に運ばせた。
30人を収容して、なおかつユノンとリラを住ませるだけの立派なものだ。
ノアの家よりも大きくなってしまったが、家の大きさに頓着のなかったノアには関係ないことだ。
ドライアドについて考えていたが、お腹いっぱいになったことでその日は忘れて眠りについた。
次の日、ゴブリンとウルフ達は再び狩りに向かった。
悪魔家族はエルフ達に事情を聞き、魔人組はノアと一緒に畑作りを始めた。
畑エリアはオークに作らせた。
伐採についてはオーク担当になった。
現場はオークのやり方があるので、終わるまで待つこととなった。
待っている間、マルマとメルメがワイドに見せつけるように蜥蜴達とじゃれあっていた。
「チロ、くすぐったい」
「ギャウッ」
チロはマルマの首の周りをキョロキョロ散歩をしていたが、マルマに怒られてしまった。
「ミューズ、おすわり!」
「ギャウッ!」
メルメはミューズに芸を覚えさせているようだ。
それを微笑ましく見守るワイドだったが、配下が一人だけいないことに寂しそうにしていた。
「ワイドも欲しいのか?」
ノアはからかうようにワイドに語りかけた。
すると、ワイドは大人の余裕をみせると思いきや、素直に「はい」と返事をした。
これには困ったノアは「なにがいい?」とここで褒美を与えることにした。
「そうですねぇ、ドラゴンなんてどうでしょうか?」
「はい、蜥蜴な」
ワイドの冗談に、ノアは条件反射で蜥蜴を召喚した。
それにはさすがのワイドもかたまってしまった。
「冗談を言うのにも、情報収集って大事って学べたな。今回はそいつで我慢してくれ」
ワイドの手をかけ登り、頭の上に登った蜥蜴は慰めるようにポンポンっと叩いた。
「ワイド、蜥蜴に慰められてる。かわいそう」
「ワイド、かわいそう。ノア様にいじめられてる」
「いいじゃねえか!みんな一緒で、おそろで!」
ノアもまた、肩にエルヴィスを乗せていた。
足元にはロードがいるが、それは気にしていない。
ワイドを慰めていると、一人のオークがやってきた。
「フモフモゥ」
「ありがとな」
「フモゥ!」
準備が終わったらしい。
畑となる現場に案内してくれると言ったオークについていく。
その間もワイドは悲しそうにしていたが、マルマとメルメがぎゅっと抱きついて慰めていた。
ロリコンのワイドには最高の癒しだろう。
「フモゥ」
「ここか、結構広くつくったな。大変だったろ?」
「フモフモゥ」
「そうか、ありがとな。あとは俺達に任せてくれ」
「フモゥ!」
オークは自慢げに披露した畑は広大で、十分に配下全員分の食料を確保できるだけの広さは確保できていた。
「んで、なんだっけ?ドライフルーツだっけ?」
「違います。ドライアドです」
ワイドのつっこみにノアは「そうだっけ?」と思い出す。
未知なる単語にマルマは色めき立つ。
「ノア様、どらいふるーつ?っておいしい?」
「うまいぞ、甘くて」
「甘いの!ほしい!」
マルマは甘いものに目がないようだ。
「苦手、甘いの」
メルメは逆に甘いものは苦手らしい。
「じゃあワイドは辛いのが好き?」
「甘いのも辛いのも好きですが、話がズレてます」
「そうだったな。ドライフラワーだっけな」
「ドライアドです。もう、わざとですよね?」
ため息をつくワイドに、ノアは「そうだよ」とにやついた。
「んじゃあ、ドライアドな……20万ポイントかよ。ま、いっか。エルフの装備売れば」
即決したノアはコアに遠隔で指示を出してエルフの装備を飲み込ませた。
後ろで聞いていた交渉役のワイドは青ざめていたが、マルマとメルメは楽しそうだった。
現れたのは葉っぱの衣に包まれた美女だった。
緑色の髪に陶器のような白い肌、これこそユノンが言っていた森の泉の精霊だ。
「こちらは?」
「ここは、うちの畑だ」
辺りの装いに気付いたドライアドは目の前に立つノアに話しかけた。
「はたけ、畑ですか?ワシにもしや農家の真似事をしろと?」
「そんなもんだな」
「これでもワシは大精霊と謳われた植物の申し子。単なる農業など片手間で行える」
「じゃあ、これ渡すんで頼んだ」
威厳を見せつけるドライアドにノアは前世で食べなれた野菜の種を入れた袋に渡した。
これにはドライアドもぽかんとするが、入っていた種を見て目の色を変えた。
「こ、これは!?神の種!?」
神の種とは、女神がこの世界を最初に築き上げた時に生み出した植物の種。
この世界にある植物の根源ともいえる種だが、時代の変化と魔力によって変質したことにより、今はそのときできた植物の原型をなくしている。
それをノアはなんにも考えずに出したのだ。
「はぁ?普通に野菜の種だろ?なに言ってるの?」
「き、貴様!これの価値もわからんのか?」
「意味わからん。こんなもの、いくらでも出せるだろ。ほれ」
「あわわわ、神の種がこんなにぃ!?」
大慌てで植物の種を拾い上げるドライアド。
「まぁ、どうでもいいとして」
「どうでもよくない!」
ノアの言葉に食い気味に反応するドライアド。
「この畑でこの種を食えるまで育ててほしい。あとできた種でまた育ててを繰り返して、うちの食料事情を改善してくれ」
「こ、これをワシが!?」
ノアのお願いに奮い立つドライアド。
「あ、できない?じゃあ……」
期待ができそうもない不安そうな声にすぐに次の提案をするノアだったが、言葉を遮るようにドライアドが暴言を吐く。
「で、できるわ、馬鹿者!」
「え、いま、馬鹿って言った?」
馬鹿に過剰な反応をみせるノアにドライアドは訂正する。
「い、いいいいまのは言葉の綾じゃ!」
「そう?じゃあやってくれる?」
「全身全霊を込めて」
期待以上の返事を聞けたノアは、後はドライアドに任せようと言って、ワイドたちを連れて帰るのであった。




