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交渉するなら追い剥ぎしてからに限る

 執事ルルドの帰りを待つ間に襲撃者たちの身ぐるみをはいでいた。

 気を失っている間に高値のものを回収していく。


「え?ノア様、いいのですか?」

「なにが?」

「交渉なさるのですよね?」

「そうだけど?」

「装備品をとっているのは?」

「迷惑料を前払いしてもらってるんだ。どうせごねるし反抗されても困るからな。まずは相手の戦力を奪っておくのが交渉の第一歩だ」


 ノアの暴論に青ざめる執事達だったが、それに感心するものがいた。


「その理論は正しい」

「旦那様!?」


 ユノンが賛同し、それに執事は驚いた。


「だろぉ?」

「こういう場合、必ず向こうがつけ上がってくる。先手をうまくうてていると言えるでしょう」

「ユノンはわかっているねぇ。とりあえずこれくらいかな」


 ノアは集め終わった装備品を一ヶ所にまとめた。

 襲撃者たちに残されたのはなにもなく、仕方なくノアが着せたボロ服しかない。それも着ているものにチクチクとダメージを与えるバフがつけられた特別製だ。


「ワイドが来たら起こしてやるか」


 しばらくすると、襲撃者の一人が目を覚ました。


「ここは……お前達!」


 周りに倒れている仲間達を見つけ襲撃者。

 縛られていて動くことはできなかった。


「起きたか、ゴミクズ」


 ノアは襲撃者の前にしゃがむと静かに話しかけた。


「貴様よくも……」

「どっちが先に襲ってきたの?」

「あっち」


 ノアが問いただすと、ユウトは襲撃者に指をさした。


「へぇ、それなのにこの言い様なの?負けたから俺たちの方が悪いって?やっぱゴミじゃん」

「……からだ」

「え?なに?」

「そいつらは悪魔だからだ!」


 ワナワナと震えながら絞り出した言葉は、ユウトたちが悪魔だという言い分。

 これには、ユウトもノアも「それがどうしたの?」という疑問しか浮かばなかった。


「そうだけど、なにか?」

「悪魔は忌諱される存在だぞ!討伐しようとして何が悪い!」

「それって誰が決めたの?」

「教会だ!」


 出た、教会。

 女神が言っていた通り、強い権力を持っているようだ。


「教会はどうして悪魔が悪いって?」

「悪魔は人を誘惑して魂を奪い取る化け物だ。それを擁護するお前もまた討伐すべき加担者だ」

「ふーん。それで、見ず知らずの悪魔に襲いかかって、命拾いした挙げ句、命乞いもせずに殺すなんて言ってるの?ユウトたちはなにもしてないぞ?それなのに襲いかかるってお前達の方がよっぽど野蛮だし、殺されても仕方がない存在だよな?」


 ノアは畳み掛けるように襲撃者の男に迫った。

 男も反論しようにも言葉が見つからず、項垂れるしかなかった。


「しかもこの程度で、もしかして女のエルフを助けにきたの?」

「どうしてそれを!?」

「俺達が助けたからな。それなのに恩人である俺達に襲いかかって言い訳ばかり。どうせ、女達を囮にして逃げたんだろ?」

「ち、違う!」

「ふーん、本当にそうかな?まぁでも、今は行ったところで邪魔者扱いだし、行く意味もないかな?」

「邪魔者?」

「ゴブリンに拐われた女達がどうなったかなんて、予想つくでしょ?そんなこともわからないの?」


 言われて理解した男は口をもごもごして、それ以上喋ることはなかった。

 黙ってつまらなくなった男から離れ、ノアはここいるメンバーに意見を聞くことにした。


「ラウラはどう思う?」

「女の敵は殺すべきかと?」


 ラウラは襲撃者を冷酷な目で見下げて言った。

 ラウラの怖い部分を目の当たりにしたノアは、若干ひきつった。


「おぉー、過激だねぇ。リノンは?」

「よわっちぃエルフなんて価値ないでしょ」


 リノンも概ねどう意見だった。


「こっちも過激だ。ユウトは?」

「まずは向こうの上役を連れてくる」

「ほう?それから?」

「交渉して価値あるものをすべて奪う」

「ユウトもまぁまぁ過激だったな。最後にユノンは?」

「そうですね。とりあえず女エルフの意見を聞いてから考えますね」

「それが最善かな?」


 ユノンの意見に同意するノアだったが、それにリノンは納得できていなかった。


「どうしてよ!」

「どうした?」

「男達を殺せば終わりじゃない?」

「一番の被害者は誰だ?」

「「ノア様」」


 なぜかノアを指差すラウラとリノン。

 それには困惑を隠せないノア。


「だってノア様が一番苦労してるじゃないですか」

「そうよ、ゴブリン襲撃もパパママ襲来も、このゴミもみんなみんな、迷惑かかってるのノア様じゃない」


 ユノンとリラも確かに面倒だったが、親をそこに含めるのはどうかと、ノアは思った。

 なぜか頷くユノン。

 それでいいのか、ユノン。


「あー、言われてみればそうだな。確かに。じゃあ次は?」

「「「ワイド」」」

「うん、言うと思った。だってさ、ワイド」


 木々の影から現れたワイドにノアは話を振った。

 すると、ワイドはため息をついた。


「私の休養が……」

「また今度とればいいだろ。とりあえず手伝え」

「なにをですか?あぁ、わかりました。殺戮ですね!」

「だめだ。こいつ、苦労をかけすぎて頭がおかしくなってる」


 ワイドの過激発言に頭を悩ませるノアだったが、それにワイドもご満悦。


「ノア様も苦労すればいい」

「ラウラとリノンからはワイドより苦労してるらしいぞ、俺」

「それは忖度です。信用してはいけません」

「お前もなかなか失礼だな。まぁいい。ルルドから話は聞いたか?」

「ええ、概ねは」

「そうか。なら、どうする?」


 ノアがワイドに尋ねると、ワイドは少しだけ悩むしぐさをした。


「そうですね、殺しましょう」

「おまえもかい!」

「それはさすがに冗談です。療養中のエルフの女性から話を聞きましょう。それからでも処刑は遅くありません」

「ワイドもユノンと同意見か。わかった。ゴミはゴブリンたちに見張らせておこう」

「承知しました」


 ワイドが胸に手を当てて礼をすると、ゴミ達を土の檻に閉じ込めた。


「え?え?なにそれ?」

「ただの土魔法ですが?」

「へぇー、魔法なんてあるんだ」

「ノア様のそれは空間魔法では?」

「違うよ。これは俺の……必殺技だ!」

「……ソウ、デスカ」


 ワイドの冷えきった目を見てしまったノアは、それ以上なにも言うことはなかった。

 土の檻に入れられた男エルフたちをワイドが浮かせて拠点近くに運んだ。

 揺れる檻の中で目を覚ました男エルフたちが騒ぎだした。

 あまりにもうるさかったので、ノアが一発殴ると大人しくなった。

 容赦のない一撃に怯えてしまったのだろう。


 拠点の近くには服を着て清潔なゴブリンとオークがいたが、やはり種族による差別はあるようだ。

 騒ぎ立てるエルフたちを残念そうに見るゴブリンとオーク。

 どちらが野蛮かは一目瞭然。


 檻はノアが新しくつくった。

 拠点にそれ用の施設がないことに気付いたノアは、生活圏内の壁の外に石材で家をたてた。

 窓はなく、檻スタイルの壁を一枚だけつくり、そこに扉も置いた。

 それを四つ作り、二つずつ向かい合うように並べた。

 檻の中には同居人のスライムくんがいる。

 用を足すときや風呂に入るための施設はないので、スライムに介護してもらうのだ。


 ストレス発散で殴れば、反撃するように許可を出している。

 快適そうな牢獄ができたので、エルフたちを収容した。

 ちょうど七人ずつ入れた。


 ちょっとした動物園ができたので、エルフを知らないゴブリン達はこぞって見学に訪れた。


 男エルフを見ても興奮するのがゴブリンらしいが、うちのゴブリンは興味をまるで示さなかった。

 エルフを見る目はどことなく、野蛮な動物を眺める人間に近く、どちらが野蛮か、改めてわかった瞬間だった。


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