表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/67

第64話 龍の誕生って… 諸説のひとつです!

「龍の誕生の話を聞いたことは?」

珠姫はフッと笑みを零した。

「ない」

紘一は首を振った。

念のため志乃にも視線を向ける。

「私も」

志乃も小さく首を振った。

すると玄李が盛大な溜息を吐いた。

「まぁ諸説あるからな」

「諸説?」

「誕生の方法はひとつじゃない…ということだ」

何処か得意げに玄李が胸を張る。

珠姫が呆れたように首を傾げた。

「なんで、貴方が自慢顔なの?」

珠姫が首を傾げる。

「する機会が…なかった」

「何処か抜けているんだから」

「……否定できん」

玄李が肩を落とす。

その様子に珠姫はクスッと笑った。

「少し貴方の聞きたいことから脱線するけど…」

珠姫はそう前置きをするように言葉を区切った。

「つがいの龍から誕生する龍の話をしましょう」


龍の誕生。

ライターをしていると旅先でその手の話を見聞きすることがないわけではない。

ただ、それが龍の誕生を示しているという確証は持てない。

その中でふと思い浮かんだものがある。

蛇は長く生きると龍になる。

ただそれは蛇に限ったことではないようだ。

狐も、猫も、長く生きれば変化する。

進化というべきかもしれないが、その一部が神化するようだ。

各地にある伝承のような御伽噺、そこに紛れる神化。

そういう御伽噺は嫌いじゃない。

紘一は珠姫を見つめた。

珠姫は小さく笑った。

「その話は有名ですね」


話を掻い摘むと、諸説ある伝承のひとつだ。

口伝で語り継がれるうちに形を変え、ときには他の伝承とも混ざり合った。

だからこそ地域ごとに少しずつ姿が違う。

その中で多く語られるのが、千年を生きた大蛇が龍へ変じるという話。

各地に残っているということは、それを見た者がいたのだろう。

あるいは、そう見えただけなのかもしれない。

そのきっかけになるのが何かはわからない。

あくまでも伝承だ。

ただその存在を見た者は少ない。

山に棲み、川を守り、やがて雲を呼び雨を降らせる。

そんな人智を超えた存在…

人はそれを畏れ、いつしか龍神として祀った。

長いときを生き、多くの願いや祈りを受けながら人の傍にいた存在。

ここに至るまで千年というときが必要だとされている。

この地に生を受けた蛇が、大蛇になり、龍になっていくまでには…

ときを経て龍はその存在をしめす。

稀有にして、雄大なる存在。

珠姫はそこで言葉を区切った。

スクッと立ち上がり、琵琶湖の方へと足を運ぶ。

途中、足を止めて、手招きしてくれる。

珠姫が何かを言おうとした、その時だった。

「そうやって、自然に龍になる存在もいる」

玄李が横から口を挟み、ニヤッと笑う。

困った人だと珠姫は静かに首を振った。

「他にも方法があると?」

紘一は珠姫の後をついて行きながら尋ねた。

湖から吹く風がやさしい身体を撫でていく。

珠姫は外へと出て琵琶湖を一望し始めた。

紘一は、その少し後ろ、柱に背を預けてみた。

志乃も珠姫の横へと…欄干に手をついた。

また風が吹き抜けた。

龍騎が転がらないように柱を背にした。

振り返ると、玄李だけは動いていなかった。

堂の中央に座したまま、こちらを眺めている。

どうやら出てくる気はないらしい。


珠姫は玄李が来ないのを察していたかのように口角をフッと上げた。

照れくさい話だ。

それに、珠姫(わたし)の推察が間違っていないとしたら…たぶん9分9厘正解だけど。

琵琶湖の水平線を見つめながら息を吐くように言葉をこぼし始めた。

「私たちがつがいだとわかる?」

「ええ…そうじゃなかったら玄李(アイツ)はシスコンだね」

「……なるほど」

珠姫が肩を震わせながら玄李を見つめた。

堂々としていて、畏怖される存在でもあるのに、どこか気軽な存在。

誰にでも、そうではないのに…とそのことは紘一に伏せておくことにする。

「龍はつがいになると、姫神側の宝玉に魂を宿すようになります」

「宿す…妊娠するみたいなもの?」

志乃がポツリと口にする。

珠姫もクスッと笑い「そうですね…似ているかもしれません」と言葉を加えた。

人も同じ。

母体に身体が生まれ、その後に魂が宿る。

ただ違うのは、宿うべきものを見つけるまで宝玉に魂は存在する。

龍の器量により受け入れられる魂の数は違う。

珠姫はその神力からも多く受け入れる。

受け入れた魂が成熟し、意思を持つ頃、宝玉から小さな宝玉が分離する。

それを得た命が神化する。

それがプロセスであり、直接的な子供のような存在は稀にしか生まれることはない。

「つがいの龍から生まれる子…命は少し違うのです」

珠姫は母のような暖かく包み込むような笑みをこぼした。

その命の宝珠とは別に、玄李と珠姫の神力に影響を受けて誕生する魂が存在する。

これは通常、卵型の宝珠となって分離する。

それは母体となる姫神の中に納まる。

産みおとしても良い時まで…

それをどう説明するのが伝わるのだろうか。

そんなことをふと思ってしまう。

「違う?」

「ええ。まだ龍の姿を持てないほど幼い魂です」

「……じゃあ気付くことができない?」

「そうですね…宝玉の中を表現するのなら…いくつかの火の玉が浮かんでいるような状態」

「いくつか…」

志乃は自分のお腹を擦った。

そういえば、あの夜避妊はしていない。

何となく…その流れのままに肌を重ねた。

軽率だと思いながらも後悔のような気持ちはなかった。

「その玉が球になると分離することができます」

火の玉のような存在は自我を持つと周りの神力を自分の殻にする。

球体となった時点で、気配は遮断される。

それを異物として宝玉は外に排出する。

「生むみたいに?」

「そうですね」

言いながら珠姫は苦笑を添えた。

きっと伝わっていない。

混乱しているような気がした。

「宝珠になった魂が相応しい蛇と巡り合う」

「すると?」

「蛇が器となり、宝玉の魂を迎え入れるのです」

「…それで龍に?」

「最初は蛇のままです」

珠姫は微笑む。

「二つの魂…魂と魄が一つになる時間はその個体によって様々です…ただその瞬間に」

「龍に成れないんですね」

「そうですね。長い年月をかけ、その身を龍へ近付けていくのです」

「ふわぁ~なんか凄いですね」

珠姫は小さく笑った。

「でも、それは普通の龍の話です」

その一言で空気が変わった。


少し間を置くように珠姫は琵琶湖を見つめていた。

その視線に追うように志乃も琵琶湖を見つめる。

「昔から蛇が龍になるという話はあります」

珠姫は静かに語り始めた。

「それは半分だけ正しいのです」

「半分?」

紘一が首を傾げる。

「蛇はどれほど長く生きても蛇のままです」

珠姫は欄干に背を預けて紘一の方を見た。

「蛇としての肉体の寿命を終えて、魂は空へ、魄は地に帰ります」

「命の(ことわり)というやつ?」

「そうね。その理の中で例外になるのが宝珠に宿る魂。神力で創り上げ器も…かな」

「…話の腰を折ってあれだけど…龍騎が宝珠から抜けられないのは?」

「水晶を基にした宝珠…人がファッションにしていますね」

珠姫はふっと笑みをこぼした。

「その宝珠…質の良い水晶が使われています。偶然ですが」

「え?」

「意図したわけではなく…きっと大きな物の細工をしたときの端切れだったのでしょう」

紘一は龍騎を見た。

「複数の水晶に魂が流れ込んでいます。いまの時点では取り出すと魂が裂けます」

「…それは」

「命の終わりです…蛇が龍になるのと同じですね…時間をかけて魂も身体も馴染ませるのは」

「…しばらくしたら、出れるということ?」

「そうなりますね」

くすっと珠姫は笑った。

「おそらく天音に張り合ったのだと」

「え」

龍騎は慌てて顔を背けた。


「そして…貴方が気にしているのは」

珠姫が少し照れ臭そうに言葉を区切った。

すっと伸ばした手が右手のブレスレットに触れる。

チャリッ…

応えるようにブレスレットが音を鳴らす。

そして人差し指のリングにも触れる。

「珠姫?」

「貴方に持たせた宝玉の欠片は…まだ形になっていない魂が入ったもの」

「?」

「本来は私の中に納めるべき魂ですね」

「…えっと、つまり…」

紘一は、玄李を見て、珠姫を見た。

珠姫のお腹を見つめて「ちょっと」と志乃に突っ込みを入れられる。

「原理はわかりません。ただ、私たちの子が持ち去られた宝玉と触れたことで…」

紘一は喉を鳴らした。

「最後に感じた悪意を、そのときを記録として残したのでしょう」

「…でも、え、子供」

「たぶん…な」

玄李はようやく珠姫のもとへと近付きながらポツリと呟いた。

「持ち去られた欠片の中に魂の器の一部があったのだろう」

玄李はそういって珠姫を後ろから抱きしめた。

「二つに分けられた器が…一つになるために…引き合わせた記録…それは宝玉には不要だから」

「浄化されるときに見せた?」

「みえた…が正しいだろうな」

玄李はニヤッと笑った。

「わかっているのは…」

珠姫が玄李の耳をつまみながらため息交じりに言う。

「その三つに別れた魂…は貴方と行くみたい」

「はぁ? いやまて、三つに分かれるって…魂は分かれたら死ぬって」

「あ、気付くんだ」

珠姫が悪戯に舌をペロッと出した。

「私たちの子が宿っているのはブレスレット」

紘一はブレスレットを見た。

珠姫の綺麗な指先が愛おしそうにチェーンを撫でている。

リングへと指が動き撫でた。

「器を形成しようとしていた私たちの神力にも魂が生まれている」

「え…どういう…」

「吸収するときに頑張ったんだろうよ…それか誰かが無茶したか」

玄李はニヤリと笑った。

リングになって指に戻ったときには白銀と黒金の龍は魂を目覚めさせたのだろうか。

多くの負の感情を飲み込み、浄化する過程で、その神力を上澄みさせて。

説明が足りないだろう?と紘一が突っ込みを考えていると珠姫は笑った。

「3人をお願いね養父さん」

「あ、はいはい…ってまて」

「ん?」

玉姫の後ろで玄李も悪い顔で笑う。

「そういうことみたいなので…お願いね」

珠姫はにっこりと笑う。

「いや待てえええ!」

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ