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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第63話 そろそろ謎解きも…伏線は自分で回収しますか?

低い声が響いた。

その直後だった。

ぱしっぃ!

「痛っ!」

玄李は振り返った。

「何、莫迦しているの?」

珠姫が苦笑しながら床に座った。

「少しくらいは…」

頭を撫でながら玄李もその横に座った。

堂の中央。

胡坐をかいて座る玄李がゆっくりと顔を上げた。

ニヤリと口角を上げる。

何処か嬉しそうな雰囲気を感じる。

きっと珠姫の顔色が健康そうになっているのと関係がしているのだろう。

その二柱の空気感にホッとする。

相変わらず偉そうに振る舞おうとしているのは気になるが…

まぁ、偉そうというより、偉い存在のはずだが…

「待ちくたびれたぞ」

「…はは。ふざけんな昨日だぞ! 依頼を押し付けられたのは」

「そうだったか? 懐かしく感じる」

玄李は苦笑を零した。

トントンと龍騎が紘一の足を叩く。

紘一は龍騎の方へと視線を向けた。

「ここに限らず…神域はゆっくりと時間が流れている」

「じゃあ、もっと時間が短くならないのか?」

「珠姫のために、玄李がそうしていたんだ…」

「……そうして…影響は?」

「時間の感覚が狂う…お前たちのひとつきがここでは1日くらいだよ」

「それって…俺たちも?」

「体感上は何も変わらないから…うっかりされがちだけど」

龍騎は、志乃の膝の上に飛び乗りながら続けた。

「たぶん、前回とか…元の世界に戻ったら一瞬とか、時間の経過を感じなかったはずだぞ」

したり顔で龍騎は言った。

紘一は玄李を見た。

「まぁ、色々と説明は抜けたが…」

玄李は一度だけ珠姫へ視線を向けた。

珠姫も静かに頷く。

それから玄李は円座を降りるようにして板の間に膝を揃えてつく。

クスッと笑みを零して珠希もそれに倣った。

慌てて紘一も志乃も姿勢を直そうとして、玄李が手で制した。

「ありがとう。感謝している」

床に額がつくような深く頭を下げた。

ゆっくりとした仕草で頭を上げると玄李は円座に器用にお尻を戻した。

玄李がニヤリと笑う。

「よし。礼を果たした。此度の一件、よくぞ…」

ぱこっ。

乾いた音が響いた。

「痛っ!」

玄李が頭を押さえる。

明らかにさっきより力が入っている。

「何目線?」

「神様?」

珠姫はしばらく玄李を見つめた。

「そういうところです」

「どういうところ?」

ぱこっ。

「痛っ!」

「…ふふふふ」

珠姫は白い衣を纏い、呆れたような目で玄李を見下ろしている。

口元を隠していた扇子が上がっていく。

「まて…それはさすがに…」

「なに?」

「理不尽だろう…」

「反省していないからです」

珠姫は平然と言い放つ。

ぱこっ。

再び音が響いた。

紘一が呆れたように苦笑いをこぼし志乃と顔を見合わせる。

何のいちゃつきを見せられているのだろう、と。


感謝の言葉が軽くなっている。

いつの間にかイチャコラを見せられている。

二柱共に楽しそうだからいいのだが…このガチャガチャいいつまで続くのだろう。

困っているだろう紘一を見て、龍騎がニヤリと笑う。

「いつものことだぞ」

「マジか?」

「珠姫が元気になったから、玄李の理不尽も倍増だ」

その言葉に紘一は少しだけ表情を和らげた。

全てが元通りというわけにはいかないと思う。

珠姫の宝玉は確かに元通りになった。

形の上では…元を知らないが推測だが罅が無くなり球形になってた。

顔色もいい。

声にも力が戻っている。

少し酒焼けにも感じられるが…

よく解らないが…それだけで今回の旅に意味があったような気がする。

しばらくして、志乃が小さく咳払いをした。

二柱が紘一たちの方へと視線を向けた。

「話が進みませんね」

「誰のせいだ?」

玄李が食い気味に訪ねる。

「あなたですよね」

間髪入れずに志乃が返す。

「理不尽だ……」

玄李は珠姫のするような扱いに肩を落とす。

その様子に志乃が小さく笑った。

そして、ふと思い出したように珠姫へ視線を向ける。

「あの……ひとつ聞いてもいいですか?」

「ええ。答えらられる範囲に限りはありますが」

珠姫は柔らかく頷いた。

「巫女ってなんですか?」

志乃は言葉を選ぶように続けた。

堂内が少し静かになった。

龍騎も耳をぴくりと動かす。

紘一もその質問には興味があった。

確かに志乃は何度も『巫女』と呼ばれている。

けれど、その理由をきちんと聞いたことはなかった。

珠姫は一度だけ玄李へ視線を向ける。

玄李は苦笑しながら肩を竦めた。

「その話か」

「その話です」

珠姫は扇子を閉じると、どこか懐かしそうな目をした。


——ときは遡り、醍醐天皇の御代。

天皇の命を受けた臣下が、竹生島の弁才天へ参詣するため琵琶湖を渡る。

急な事であり、琵琶湖を渡るには準備だけではなく天候も良いものではなかった。

それでも、臣下は帝の民を思う心のままに宝巌寺へと向かいたかった。

その願いを聞き入れたのは、立ち寄った漁村の神主だった。

彼は村の者に声を掛けたが、誰もが悪天候の湖に船で出ることを躊躇った。

このままでは…期日が間に合わないと途方に暮れる臣下に神主の娘が声を掛ける。

竹生島に辿り着ける可能性は低い。

それでも命を賭していく価値はあるのかと訊ねた。

臣下は、民たちの苦しみのひとつでも解消できるのなら、捧物だけではなく命をも、と言う。

ときは、海は荒れ漁に出れない日々が続いていた。

農作物も不作の上、家畜にも原因不明の病気が蔓延していた。

願いが聞き遂げられるのなら…その思いで船に乗ったのは3名だけ。

臣下に同行したのは、船頭を務める老漁師と、神主の娘の若い女性。

臣下は漁師に問うた。

伝承とは何だろう…と。

二人は竹生島の由来や弁才天の霊験について説明を始めた。

諸説…そんな言葉が合うかのように、様々な伝承があった。

島に近いとされる村だけに、他の村から来た旅人たちも残していく伝承。

そのどれもに嘘はない。

少し着色されているのだろうと娘は笑った。

竹生島の島影が見え始めた頃、湖の荒れは最高潮に達した。

漁船に乗っていた三人は湖へと投げ出された。

誰もが終わりを感じたはずなのに…気が付いたときには港についていた。

お供え物の幾つかが無くなっていた以外、変化は何も無かった。

奇跡の上陸…臣下は湖に感謝をした。

帝の願いを届けるため、一行は島の社へ参拝した。

そして…参拝を終えると、崖に張り出した舞台へと足を向けた。

そこにある舞台。

臣下は何が起きたのかわからない。

すると若い女性は神前で美しい舞を奉納する。

参拝が終わると、老漁師と若い女性は自らの正体を明かす。

若い女性は弁才天の力を貸し与えられた巫女。

老漁師は龍神がその身を借りたものだった。

それは命を賭した二人だけへの報いではなかった。

湖へ感謝を忘れぬ者。

祈りを絶やさぬ者。

誰かのために願う者。

その心が続く限り、龍神も弁才天もまた人に応え続ける。

だからこそ竹生島は信仰の島として語り継がれている。

人は神に願い、神はその祈りに応える。

それは今も変わらぬ約束なのだと。

常に湖に感謝をし、捧物を絶やさない村人がその願いに賛同したのなら…と。

その夜。

再び竹生島の神域が現れる。

龍神が湖から姿を現し、宝珠や宝物を捧げながら舞う。

そして国の繁栄と平和を寿ぎ、神々しい世界の様子を見せる。

最後に龍神は再び湖へ帰っていく——

珠姫の語りが終わるまで玄李は目を閉じただ頷いていた。

一呼吸の間を置き玄李は志乃を見た。

志乃はしばらく黙っていた。

まるで昔話を聞き終えた子供のように。

その様子を見て玄李が口を開く。

「巫女というのは…」

玄李が腕を組んだ。

「神仏の言葉を聞く者ではない」

「え?」

「人の願いを神仏へ届ける者だ」

志乃は少し驚いた顔をした。

玄李は続ける。

「神は勝手に人を救わん。だが願いには応える」

「その懸け橋になるのが『巫女』という存在…最近は奉納舞をするものと思われていそうだけど」

珠姫は玄李の言葉に声を重ねた。

玄李がむくれたように頬を膨らませている。

それを確認したうえで珠姫は言葉を継いだ。

志乃は息を呑んだ。

「そのときに生まれたのが天音…魂を宿すまでの時間…最初の巫女の血を継ぐ者たちは…」

「人と神を繋ぐために…ここに来ていたと」

志乃の言葉に珠姫は静かに頷いた。


「俺も…ひとつ…」

紘一は玄李を見てから、珠姫を見た。

「えっ…」

玄李は肩透かしを食ったような顔で紘一を見た。

「宝玉には記憶も宿る?」

紘一はクスッと笑い問いかけてみる。

その問いかけに玄李は膝をパンと叩き、溜息を吐いた。

紘一は珠姫の宝玉から生み出した力を使った。

それは奪われた宝玉のを取り戻すために…

ただ思いのほか、欲にまみれた力を回収してきた。

その力は、玄李が補っていたモノよりも大きい。

珠姫の宝玉を元のサイズに、傷を癒し、力を増幅させるほどに。

何よりも、その上で余った力は、結んでいたことにより玄李の宝玉にも流れ込んでいた。

本来は見ることのない誰かの記憶の欠片…

何処までもねじ曲がった思い込みが幾つもの不幸を生み出していたのかもしれない。

ただ、それを知ることはできない。

くっきりと残っているのは、悪意を持って宝玉を傷付けた者との記憶だけ。

珠姫は静かに首を振った。

「宝玉に記憶は宿らない。ただ、その思い、欲が、誰かに植え付けられていたのなら…」

珠姫は自信なさげな表情を見せる。

宝玉を割ってでも持ち去られたのは初めてだった。

その過ぎたる力を取り戻すのも初めて…

知らないことが幾つも起きている。

万能の存在ではない。

全てを(ことわり)にのせて話しているわけでもない。

そこに確かにある現象と事実が噛み合ってこそ理になる。

珠姫は一度目を閉じた。

その美しさに紘一はドキリとする。

何処か大人びて、何処か幼い。

その姿は、神秘的でもあった。

そして目を開けると意識を持って行かれる気がした。

「宝玉に記憶は宿らない」

珠姫は静かにそう言った。

「ですが、願いは残ります」

堂内が静かになる。

「誰かを想う願いも…誰かを妬む願いも…質は違えど、どちらも人の心です」

珠姫はそっと視線を琵琶湖へと向けた。

「だからこそ、人は祈り続けるのでしょうね」

言葉を区切った。

「せも、貴方が知りたいのは…あの悪意の記憶の方ですよね」

「ああ」

「推測の域を出ませんが…持って行かれた宝玉の欠片に残ったものなのかもしれません」

「残ったもの?」

「例えば…恐怖…強い感情です」

珠姫は静かに答えた。

「砕かれた瞬間の恐怖?」

紘一の呟きに珠姫は頷いた。

「私に限らず、つがいの龍の宝玉には幾つもの魂が宿ります」

「………」

「まだ幼い魂が、その出来事を強く刻み込んだのかもしれません」

「宝玉の欠片の記憶…」

紘一が小さく呟く。

珠姫は静かに頷いた。

「恐怖は、ときに願いよりも深く残りますから」

フッと珠姫は笑みを零した。

「龍の誕生の話を聞いたことは?」

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

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