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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第52話 何をするにしても 実は準備が大事です!

※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・医療機関・地名・制度・報道内容・感染症等はすべて架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

また、作中に描かれる医療対応・行政措置・報道表現等は物語上の演出を含み、実際の法令・運用・対応手順とは異なる場合があります。

紘一は大きく息を吸い込んだ。

振り返るように体を反転させた。

そのまま、紘一は黒い靄へ向かって駆け出した。

「え、おい、待て!」

胸ポケットから龍騎の声が飛ぶ。

「なに?

「右手…見てみろ」

「右手?」

言われて紘一は視線を落とした。

そこで初めて気付いた。

バングルはキーチェンのように3巻きほどした黒銀色のブレスレットになっている。

よく見れば、その姿は龍を模した装飾だとわかる。

「…あれ?」

思わず足が止まる。

「小さくなってるよな」

龍騎がポケットから顔を出しながら言う

「だな…これって」

紘一はブレスレットを見る。

たぶんお洒落なんだと思う。

キラキラと光っているし…剣にもなってくれる。

でも、太さが剣の幅に比例していた気がする。

これって…

「さっき無茶をしただろう?」

不機嫌そうな龍騎の声に紘一はハッとする。


紘一の視線に龍騎は視線を逸らして溜息をこぼした。

「無茶?」

「あの大量の瘴気を抱え込んで…」

龍騎は言葉を切った。

正直なところ、何が起きたのかは分からない。

ただ一つだけ確かなことがある。

病棟に広がっていた瘴気は人の身で抱えていい量ではない。

普通なら壊れていてもおかしくない。

そのことを解っていた。

だから龍騎は行こうとした。

でも天音に止められた。

その時の判断が間違っていたとは思わない。

思わないのだが……

それが澱のように残っている。

干渉しなかったことが胸に引っ掛かっている。

だから、いまここにいる。

天音の傍ではなく、紘一の傍に。

結果が、龍騎を必要としなくても…行くべきだった。

そう思ってしまう。

天音や龍騎(じぶん)に対する態度が無茶をしたことを暗に伝えてくれている。

いや、そうでなくても考えればわかる。

増大する負の感情の固まり。

悪意はそれだけで人を蝕む。

一度憑りつかれれば、祓ったところで瘴気はまた集まる。

心の弱さが招いた結果とはいえ、人の心はそれほど強くない。

一度受け入れた者の下へと悪意は戻る。

追い払っても。

祓っても。

心の隙がある限り、何度でもその隙間を埋める。

まるでそこに脱げこむように。

他人の悪意までもが…集まってくる。

だから瘴気は消えない。

だから悪意は消えない。

龍騎は何度もそれを見てきた。

醜い心が神々に及ぼした悲しい結果も含めて…

それだけに…呼び水になる言葉を口にするのが怖い。

龍騎は言葉を飲み込んだ。

「なぁ…大丈夫だぞ」

口を噤んだ龍騎を察して紘一が零した。

嘘だ。直感がそう告げてくる。

びりびりと嫌な予感しかしない。

人のくせに、仏に気を使いやがって…

その優しさが仇にならなければいいのに、とさえ思ってしまう。

「これは推測でしかない…」

正直に話すことが力になるかもしれない。


「志乃…」

囁くように天音は志乃を見上げた。

母親を意識して身動きを止めている天音に気づいて奏音が苦笑を漏らす。

「義姉さん、お水、買ってきてもらっても」

「うん。ちょっと行ってくるね。志乃お願いね」

母親はパタパタよ病室を後にした。

「で、どうしたの?」

奏音が天音の背に声をかけた。

「エレベーターで1階におろして」

「えっ?」

「莫迦二人が…」

「…まさか」

「斬ることも祓い。でも」

天音は言葉を区切った。

奏音がそれをみかねて口を開いた。

「祓うは切り離すこと…そのあと滅殺することになる」

「うん」

「それはその人の持った感情を殺すこと」

奏音は冷たく言う。

「どんなことにも元凶はある。だから、全てを救うべきだとは思わない」

「えっ」

志乃の喉が鳴った。

志乃の知っている叔母なら口にしない単語が零れてくる。

「救うべき魂は確かにある。でも…ね」

奏音は志乃の瞳をまっすぐに見つめた。

緊張が生まれる。

たぶん…その先の言葉はきくべきではないと思う。

「でも、救えるなら救ってあげたい」

奏音は苦笑した。

巫女の誰もがそこを一度は通る。

でも、救えないこともあると知っておくことが必要だった。

天音は、クスッと笑みをこぼした。

「救わないんじゃない…救えないこともある」

「うん」

「その救えない魂が、無関係だったらどうする?」

「………」

考えたことはなかった。

元凶が救えないわけじゃない。

救えるかもしれない。

その代わり全く関係ない人が命を落とすかもしれない。

いや巻き込まれているのだから関係はあるかもしれない。

それでも…

「その可能性もある。だから、浄化して昇華まで導く」

「それが巫女の役割だよ」

天音はそういうと立ち上がり、パンパンと膝の辺りを叩いた。

「エレベーターに連れて行ってくれるだけでいい」

「でも」

「足手まといに…」

志乃の目に涙がいっぱいたまる。

天音は苦笑し、奏音はハンカチを差し出す。

「お願い。で、ここもお願い」

そう言って志乃の胸を指先で軽くつつく。

「ここ?」

「魔が入り込むのは…心の隙間」

天音は優しく笑った。

「その隙間は、基本的には埋まらない」

「埋まらない?」

「隙間はできたら勝手に消えない。他の何かで埋めて強化するしかないかな」

奏音が補足するように言う。

「奏音は宝珠の欠片を無理に埋め込まれていた…」

「いた?」

「紘一が小龍に食べさせてね」

天音は少しだけ肩を竦めた。

「そのとき、一緒に巣食っていた悪意の欠片は逃げた」

天音が残念そうに言うと、奏音は苦笑した。

巫女には、昇華意外にも消滅させる力もある。

2度目の悪意の本体を見つけたとき、天音がそれを使おうとしたのを見た。

でも、知ってから知らずか紘一がそれを邪魔をした。

ただ、その舞の代償は、自らの魂だ。

「話逸れたね…さっき紘一が助けた人たちは隙間を持っていた」

「………」

志乃の喉が鳴る。

「紘一の中に入り込んだ瘴気は昇華されたけど、まだ病棟に逃げたモノは隙を狙っている」

天音が誤魔化すように早口になっていた。

「3人いたから負けたと思っているんでしょうね」

奏音がニヤッと口角をあげた。

「あるよね」

天音は、そう言うとトンと志乃の肩に乗った。

そのまま志乃の肩に腰を下ろした。

「どういうこと?」

「私が離れたら、向こうもまた動く」

天音は軽く病室の外を見た。

「消えたくないだろうしね」


解らないことばかりが一気に動いている。

この先は確認するゆとりもないんだろうな…

紘一は、隆起をポケットから取り出し、通路の端に寄った。

相変わらず増えている黒い靄に苦笑しかでない。

人の頭から湯気のように上がるのも黒い…つまり負の感情なのだろう。

先導されて、その色に染まっている。

慌てたところで…そんなことを思ってしまう。

いまは小龍の方が気に掛かってしまう。

「小龍は、靄を食らって大きさを変えた…と考えるのが妥当だろう」

龍騎はベンチシート指さしながら言った。

紘一は苦笑で答えてベンチシートに座る。

龍騎もその横に座った。

視線は事務室に向けられている。

「そもそも、指輪だったのに…って、おい指輪」

「ん?」

「何である?」

「いつの間にか…っていま?」

紘一がきょとんとする。

「まぁいいか」

(いいのかよ!)

「それが力の集積だけなら…小さくはならない」

口にしてから龍騎は後悔していた。

どう考えても考え方が破綻している。

エネルギーを吸って大きくなる。

エネルギーを吐き出して小さくなる。

物理的にはそうだろう。

でも…変化の理屈が通っていない。

そもそも変化のたびに形が違う。

龍の形状?文様も。

事態説明がつかない。

格好つけて話し始めただけに無事にどこかに着地するのが心配になってくる。

愚痴りたくなるのが本音だ。

「そうだな」

「長さが伸び、身が細くなっている処から考えれば…」

「…この長さでバングルぐらい太くなったら動けなくなるぞ」

「…だよな」

龍騎は苦笑する。

「簡単に言えば?」

「栄養失調的な…激やせ?みたいな」

「…弱っているという意味?」

「ありていに言えば」

「武器としては絶望的?」

「帰る?」

「帰れるか…莫迦」

即答だった。

「なら行くしかないよな」

龍騎は、紘一の横でストレッチを始めた。

ポケットでマスコットをしている場合ではない。

紘一は苦笑いをこぼす。

頼もしい相棒だ。

ゆっくりと立ちあがり龍騎の方をみる。

「もうない?」

「ん?」

「心配事」

龍騎は呆れたように息を吐いた。

「行くか?」

龍騎がため息交じりに言葉を吐いたその時だった。

事務室の方から怒声が響く。

「俺が儲けさせてるんだろうが!」

黒い靄が、ふっと膨らんだ。

紘一と龍騎は同時に視線を向ける。

一気に瘴気が廊下に溢れ出た

歓声も怒声も、その黒に呑まれるように濁っていく。

「…始まったか」

龍騎はファイティングポーズをとった。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

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