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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第45話 ファンタジーな世界に飛び込みます!

※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・医療機関・地名・制度・報道内容・感染症等はすべて架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

また、作中に描かれる医療対応・行政措置・報道表現等は物語上の演出を含み、実際の法令・運用・対応手順とは異なる場合があります。

視界が白く弾けた。

バランスを崩すというよりも、ただ床に膝をついた感覚があった。

痛みらしいものは感じなかった。

というよりはポチャッとウォーターベッドの上に落とされたような感覚があった。

そこが何処なのか、一瞬、考えてしまう。

ここは、知らない場所だった。

何もない殺風景な景色…とはいえ、なんとなく分かるようになってくる。

匂いというか、空気というか、そんな形のない感覚だが…

たぶん間違えていない。

とりあえず光の溢れている世界でよかった。

素直にそう思ってしまう。

辺りを見渡すと、見知らぬ人が二人いる。

一人はいま顔を見たからわかる。

志乃の叔母、奏音だ。

と、すれば…

紘一の視線は、その隣に立つ少女へと向かった。

思わず見惚れる可愛さがある。

そんな言葉が似合う容姿だった。

よく芸能人を指す言葉で使われる『奇跡の』『千年に~』とかが似合いそうだ。

俗っぽいことを考えても緊張が解けるわけでもないが…

黒く艶やかな髪は、静かに腰の辺りまで流れている。

白い肌は陽の光を柔らかく溶かしたみたいだった。

整った顔立ちは驚くほど美しいのに、不思議と作り物めいた印象はない。

近寄りがたい空気感の人もいるのに、むしろ安心してしまう。

初対面のはずなのに、どこか懐かしさすら感じてしまう。

数時間とはいえ、タヌキとして一緒に過ごしていたせいだろう。

頭でわかっていても…見えているものが一変すれば緊張してしまう。

そこに、フッと笑みを浮かべられるとドキッとしてしまう。

胸が妙にざわついた。

それなのに空気そのものが澄んでいくようだった。

少女は、そんな紘一を見つめたまま、小さく首を傾げる。

そんな仕草に小悪魔的な要素を見てしまう。

穏やかな眼差し。

誰かを安心させるような微笑み。

そして、何よりもその場の空気が少女を中心に静かに澄んでいる。

可愛い。

その一言に集約できそうな容姿に苦笑が漏らしそうになった。

率直にそう感じてしまった。

だが、それだけでは説明がつかない。

まるで神社の本殿に足を踏み入れたときのような。

騒がしい心が勝手に静まっていくような感覚。

それを、遅い!と言わんばかりに冷たい風が吹く。

紘一は、空を見上げるように視線を上に向けて短く息を吐く。


(紘一?)

天音は息を呑んだ。

予定外のことが起きている。

でも、予測できる範疇か…と思考を巡らせた。

もともと紘一は黒龍の神力を使って黒い靄を飲んでいる。

紘一自身は、そのこと自体解っていない可能性がある。

説明を受ける時間も無かったようだし…

有ったとしても玄李が忘れずに癒えているかは怪しいものだ。

珠姫が何処までサポートしてくれているかにもよるのだろう。

で…何を離れてこちらを見ているのだろう。


見上げる。

そこは、やっぱり…見知らぬ場所だった。

黒い霧が漂う世界。

二体の龍が気ままに泳ぐように飛んでいる。

白銀の龍が時々紘一を見て笑っているようにも見える。

それに気付いたかのように黒金の龍が視界を横切っていく。

ああ…あの二柱か…

ふとその言葉が浮かんでしまう。

視線を下ろすと天音と奏音の姿が見える。

見間違えではなかったらしい。

そして…その向こう。

靄が綺麗に晴れ渡ると黒い影がみえる。

まるで自分の家にいるような顔をした黒い人影が。

黒い人影がゆらりと首を傾げた。

「誰だ」

声が漏れる。

足が自然いそちらへと向かっていく。

ただ不快な笑みだけを広げている。

人の心の醜さ、それを感じさせるかのようだ。

その瞬間。

右手首のバングルが熱を帯びた。

視線を向けるとバングルが手首から離れた。

眩い光を放ちながら形を変える。

握った右手の内側に強引に光の線が入り込んでくる。

ゆっくりと光が消えると一本の剣になった。

その剣を撫でるように、白銀と黒金の龍が触れてから地に降りた。

少年は、まだ五つほどだというのに、不思議なくらい整った顔立ちをしている。

パッと見、少女に見間違うほどの中性的な空気が漂う。

大きな瞳は涼しげで、少し伏せるだけで妙に絵になる。

柔らかな髪が額へ掛かるたび、どこか人懐っこい雰囲気。

それなのに、ふとした瞬間だけ年齢に似合わない静かな眼差しを見せた。

黙って立っているだけで、周囲の空気が少し整ってしまう。

その面影は幼くても、しっかりとあの男のものだ。

その隣では、少女が花が綻ぶみたいに笑っている。

白い肌に、透き通るような大きな瞳。

艶やかな黒髪が肩から背中へさらりと流れている。

幼いのに妙に完成された可愛さがあった。

ころころと表情が変わるたびに空気まで明るくなる。

けれど、ふと真顔になった瞬間だけ…

神社の奥で静かに微笑む小さな神様みたいな空気を纏っていた。

その二人が、とととっと紘一の背後に回り、背を押すようにお尻を押した。


「…マジか」

思わず漏れる。

半強制的に握らされた剣も、小さくなった二人も…手の込んだ悪戯だと思える。

でも、そう言うことなのだろう。

巫女とは違う祓いをする必要があるのだけは何となく理解する。

本当に面倒くさい。

剣なんて握ったことはない。

それにしても不思議と重さを感じない。

そして違和感もない。

まるで最初から持っていたようだった。

「ここは俺の場所だ」

そんな声が響いた。

奏音のものでも、天音のものでもない。

長い時間をかけて澱みに潜み、居座り続けた何か。

紘一は剣をギュッと握りしめた。

意識を持つものは、生き物なのか?だとしたら…

一瞬の迷いが生まれる。

それを晴らすように白銀と黒金の龍が駆けだした紘一の周りを飛ぶ。

光が交差する。

『助けてあげて』

その声が頭に響いた。

紘一は、剣を振り上げ、一気に切り下した。

黒い影は悲鳴のような音を上げた。

それは声ではなかった。

獣のようでもなく。

風のようでもなく。

ただ不快な音だった。

何の抵抗もなく影は裂ける。

そして霧となって弾け飛んだ。

紘一は床にあたって止まった切っ先を見詰めていた。

何の手応えもなかったとはいえ、気分のいいものではなかった。

ポンポンと誰かがお尻を叩く。

視線だけをそちらに向けるとさっき現れた二人がいる。

「心配しないで」

少女は笑った。

「殺せるわけないだろう?」

少年が言う。

「えっ?」

「意識は断ち切れるだけ…本体にいなければ消えもしない」

「逃げたんだよ」

少女が少年の頭を小突きながら言う。

つまり、消えたわけではなく、ただ、逃げただけ。

小物悪党にあるパターン…というものか。

紘一は何処か安心したように溜息を洩らした。

その瞬間、剣は光に戻り、バングルとして右腕に収まった。


「意外にビビり?」

天音が背をトントンと叩きながら声を掛けてくれる。

「普通は、誰かを殺すという覚悟も機会もないぞ…口にする奴はいるけど」

「…そういうものか。仇討の成就とかも最近聞かないよね。あ、彼女は」

「志乃の伯母さんだよね。鳴海紘一です」

紘一はぺこりと頭を下げた。

「はいはい、他人の世界にいつまでもいない。影響出ると困るからね」

少女は、紘一の手を引いた。

次の瞬間、紘一は光に包まれた。

「あ、切った影は?」

「ああ~あるべき持ち主のもとへ戻ったはず」

天音は苦笑しながら答えた。

消えていく光りを見詰めながら「良かったの?」と奏音が尋ねた。

「うん…大丈夫」

「本体も生きているしね…私、コイツ知っているわ」

「え?」

「さっきも下で騒いでいた金の亡者的な狒々爺」

「…何となく心当たりあるかも」

「えっ?」

「補助金申請の協力を頼まれた…」

「したの?」

「まさか。でも、しなくて正解だった」

「どうして?」

「その話、無くなったみたいだから。結構落胆している入院患者多かっ…た?」

「どうかしたの?」

「このゾーニングエリアで入退院になっている人たちが多いと思うけど」


紘一は医師たちに場所を空けるように病室の端に寄った。

その動きを医師も看護師も視線で追いかける。

「なにか?」

視線と沈黙に耐え切れずに紘一がつぶやく。

「いや、1分も経ってないので」

傍にいた看護師がポツリと呟いた。

患者を見詰める医師は唖然としている。

奏音の身体につけられたバイタル関連の機器は正常値を示している。

志乃はソッと紘一に寄り「指輪…消えちゃった」と。

「あ、そうな…」

紘一は言いかけて自分の右手人差し指に戻っている指輪に苦笑した。

あとで玄李に文句を言おうと心に誓う。


お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います


☆作品テンポの関係で30分後に次の話をUPします

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