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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第31話 本音を伝えてくれますか?

※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・医療機関・地名・制度・報道内容・感染症等はすべて架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

また、作中に描かれる医療対応・行政措置・報道表現等は物語上の演出を含み、実際の法令・運用・対応手順とは異なる場合があります。


「お疲れ様」

「お互いに…でも…時間かかったな」

紘一は腕時計で時間を確認する。

少しというよりも、そこそこ傷ついたクロノグラフ…それが志乃は気になった。

「思い出の品ですか?」

「ん? ああ…そうだな」

紘一は苦笑いをする。

思い出といえば思い出。

ずっとこれを愛用している。

当の相手はスマートウォッチに変えているというのに…


「編集長…これって鳴海さんが行ってる方面では?」

編集部員はニュース速報を見て葉月へ駆け寄った。

確認するまでもなく、葉月の顔から血の気が引いていった。

他のことをしていても緊急速報には目が向くのは職業病のようなものだ。

編集部内の壁掛けモニターに視線がいったままだった。

葉月は返事をするより先にスマホを掴む。

だが、呼び出し音は続くだけだった。

『臨時ニュースです』

ニュース速報として文字だけで流れていた通知は、報道局のフロアを移す画面に切り替わった。

第1報が出てから約半日、事態の解明に躍起になるのは消え切らない記憶があるからだ。

葉月は、ジッとモニターを見つめた。

『大阪市の「なにわ生協総合医療病院」において確認されている原因不明の高熱症状について、厚生労働省は先ほど、専門機関による調査が現在も継続中であることを発表しました』

次々と届けられるニュース原稿を手にアナウンサーは顔色を変えた。

数年前のパンデミックの速報では大丈夫だろうという希望的な空気があったが…

もうそれを期待している人はいない。

それが見ている方を不安にさせてしまう。

それでも彼は淡々と原稿を読み上げている。

『複数の患者に共通した発熱および急性呼吸器症状が確認されているものの、現時点で原因の特定には至っていません。これを受け厚生労働省は、安全確保を目的として、同病院の一部区域に対する隔離措置を正式に決定。大阪府および関係機関と連携し対応を進めるとしています』

編集部内にざわつきが起こった。

『現時点で一般市民への健康被害は確認されていないとのことです。併せて当該病院は、本症状の受入れ病院として指定、一般入院患者の転院を始めていることから、周辺道路では交通規制が行われる可能性があります。現地では警察および係員の指示に従うよう呼びかけています』

「……また」

小さく零した声は、誰にも届かない。

デスクの端へ視線が落ちる。

そこには、磨かれたクロノグラフが置かれていた。

女の腕には武骨なサイズのそれは取材中に何度も騒ぎを起こしてくれた。

そのせいで、ガラス面には小さな傷がある。

ベルトも付け替えた。

何度もパーツを取り換えながら使ってきた相棒。

それもいまではデスク時計として置いたまま。

同僚に気づかれて、照れくさくて、外した。

何度もここにきているのに、それに紘一が気付くことはなかった。

口にするのはスマートウォッチへの嫌味だけ。

でも、この時計が止まらない限り信じている。

無事だと。

「編集長?」

美里の声に、葉月は我に返る。

そして苦笑した。

「……あの人、こういう時だけ連絡返さないのよ」

周囲が一気にざわついた。

スマホを取り出す人。

電話を掛け始める人。

不安が、空気を揺らす。

安否を求めると同じように、危険なところから離れてほしいと思う。

離れたからといって事態が改善する保証はどこにもない。


車を大阪市内に向けて走らせ始めるとラジオから速報が流れた。

龍騎が嫌そうに耳を伏せた。

「…また増えるな」

穢れ。

不安。

恐怖。

それは負の感情を増幅させる。

さっきみたいなイレギュラーに遭遇する可能性が増えてしまう。

まだ話せてもいないが、PAで回収した神力よりも事故の現場で回収した神力の方が小さい。

被害の大きさはまるで違うというのに。

欠片程度の力であったとしても、媒介となる悪意に呑まれると…

「ねぇ…龍騎」

セカンドシートに凭れ掛かりながら天音は龍騎を見る。

「珠姫に言われたことがある…」

「えっ?」

「手の届かないところには手を伸ばさない人であっても…手が届くなら、手を伸ばす人がいる」

「?」

「俺は、さっきの二人とも見捨ててほしかった」

「龍騎」

「志乃も紘一も準備ができていない…器が壊れれば何が起きるかも知らない」

「うん」

「それでも手を出す…あのとき俺が言わなくても」

龍騎の体が震えている。

「ほんと莫迦」

天音はキュッと抱きしめた。


第二京阪に戻ることもなく下道を走ると、車内は妙に静かになった。

エンジン音だけが一定のリズムで響いている。

さっきまでの騒がしさが嘘みたいだった。

志乃は、そっと紘一の横顔を見る。

まだ少し顔色が悪い。

「無理してない?」

「してるよ」

即答だった。

それもニヤッと笑う態度の軽さが添えられている。

その返事に、志乃は思わず言葉を失う。

「でも止まる気もない」

紘一は前を見たまま続けた。

「ここで目を逸らしたら、たぶん一生後悔する」

夜の道路標識が、フロントガラスを流れていく。

「信じてるわけじゃない」

ぽつりと紘一が呟いた。

「正直、いまでも意味わからん」

「だよね」

「でも、実際に人が苦しんでる」

紘一は小さく息を吐いた。

「それを見て見ぬふりするほど器用じゃないのが悪い」

車内が少しだけ静かになる。


その空気の中で、天音がぽつりと漏らした。

「…優しいね」

龍騎が腕を組みながら頷く。

「違う」

紘一は苦笑した。

「…気持ち悪いだけだ」

「え?」

「こういうの、放置すると寝覚めが悪い」

龍騎が、ふっと笑う。

「そういうのを優しいって言うんだぞ」

「うるさいぞ、後ろでイチャイチャしているぬいぐるみども」

「うらやましいだろう」

龍騎は言い返してから、ハッと口を押えた。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

未完投稿となっているので、最終話まで急ぎ掲載していきます


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