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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第29話 不思議力発現! 祓ってみました!!

「とりあえず前のステーションワゴンだ、追ってくれ」

龍騎の声に、紘一は前方へ視線を戻した。

数台先。

黒いステーションワゴンが、不安定な軌道で走っている。

一定速度を保てていない。

加速したかと思えば急に失速し、ふらりと白線へ寄っていく。

「危ないな」

紘一は小さく呟き、アクセルを踏み込んだ。

ディーゼルエンジンが低く唸る。

第二京阪道路の高架を、車の流れが滑るように走っていく。

道路脇には物流倉庫や工場群の灯り。

コンテナヤードの白い照明が夜空をぼんやり照らしていた。

遠くには大阪市街の光が滲んでいる。

竹生島の闇とは違う。

人の営みが途切れず続いている都会の夜だった。

それなのに…前を走るワゴンの周囲だけ、妙に空気が重く感じる。

「見える?」

志乃が小さく尋ねた。

「いや……でも嫌な感じはする」

コンソールボックスの上で仁王立ちになりながら龍騎が前方を睨んでいる。

ぬいぐるみの顔なのに、空気だけが鋭かった。

「さっきのノイズ元だ」

「? それと暴走との関係は?」

「あ~わからん。ただ、あの中で何かが暴れてる」

「どこか締まらないところがあるよね」

天音がポツリと呟く。

その瞬間。

前のワゴンが大きく蛇行した。

「っ!」

紘一は反射的にハンドルを切る。

横を走っていたトラックがクラクションを鳴らした。

重い警笛が黄昏と夜の狭間みたいな高架へ響く。

ワゴンは中央車線へ戻ると、そのまま速度を落とした。

ブレーキランプが赤く滲む。

「限界が近いな」

龍騎が低く呟いた。

そのとき、前方に京田辺PAの案内表示が浮かび上がる。

白と緑の標識。

ワゴンはふらつきながら左へ寄っていった。

ウインカーが不規則に点滅している。

「賢明な判断というやつかな?」

紘一も速度を落とし、ウインカーをだして進入路へと滑り込ませる。

大型トラック用の広い駐車スペースを抜けた先、トイレの前で車は止まっていた。

車から飛び出してきた数人がオロオロとしているのが目に入った。

その横の空きスペースへと吸い込まれるように車を滑り込ませる。

タイヤがカーブで低く鳴る。

その後を追うように、紘一もウインカーを出した。

減速した車体がゆっくり傾く。

エンジン音が落ちた瞬間……龍騎が、ぽつりと呟いた。

「間に合いそうだ…どうする?」

「どうする?」

紘一は聞き返した。

「いまなら…」

「ふざけんな…やりかたは?」

龍騎は一瞬言葉を失った。

気迫に、たかだか一般人の気迫に飲み込まれている。

「指輪を黒い影にかざす…というよりは突っ込む」

「適当だな。後でしっかりと聞くからな」

紘一は車を降りた。

「志乃、緊張すると思うが…」

「私がいるから大丈夫」

天音が龍騎の言葉を遮った。


突然、駆け寄ってきた壮年に周りの人は緊張を走らせた。

「あのぅ」

「すみません…事情は後で」

紘一は、車の後部席に座り肩で息をしている高齢女性へと近づいた。

「だ、だめです。ニュースで…」

紘一はその声に止まることもなく、女性の方へと手を突き出した。

(車から引っ張り出すべきか? 影が見えない)

うす暗い車内の中で影に触れているかもわからない。

そう思っていた。

そのはずだったのに、急に、右手の人差し指の付け根が熱くなった。

黒龍の指輪が…赤い目が輝きを零した。

次の瞬間、指輪は外れ、女性の体の周りを撫でるように動きながら飛んだ。

車内にあった黒い影が消えていく。

合わせるように女性の顔に赤みが戻ってきた。

そして、元の位置に戻るように小さな龍は人差し指の付け根をくるくると回った。

「熱っ…」

紘一は車内から手を引きぬいた。

クルクルと回る龍が指輪へと戻った。

「あの…」

心配そうに女性の身内だろう人たちが声をかけてくる。

「体温計など…もっていたりは?」

「あり…ますけ…ど」

普通の反応だよな。と思いながら紘一は名刺を一枚差し出す。

「たぶん、熱は引いていると思いますよ…あとで検査は受ける方がいいと思いますが」

「えっ」

娘さんらしい女性が紘一を押しのけるようにして駆け寄った。

「お母さん!」

「んっ、何だい、煩いね…」

「え、よかった」

娘さんは、その場に崩れ落ちるようにして膝をついた。

「あのぅ」

当然説明を求められるよな。

それはわかっている。

でも、それに返す言葉は持っていない。

「あ、これから…」

「入院していた病院に戻る処だったんです」

「『なにわ生協総合医療病院』?」

「あ、はい」

「そうですか。最初の発熱のことを教えてもらっても?」

男性はジッと紘一を見た。

この時ほどフリージャーナリストの肩書が胡散臭いものに感じることはなかった。

「詳しくは、ただ僕は検診の後に急に発熱したように思えました」

「検診…ありがとうございます」

「あのぅ。これって院内感染とかですか?」

「残念ながら、私は医者じゃないので断言はできませんが」

「それでも…」

「きっと院内感染でしょうね。あとはニュース程度のことしか僕も」

紘一はそういうと立ち去ろうと背を向けた。

少し熱ぽさを感じる。

風邪をひくにしても急すぎる。

それに熱いのは右手からだった。

「あのぅ…」

「ん?」

娘さんの声に足を止めた。

振り返るのが億劫になり始めていた。

「ありがとうございました。あんなに苦しがっていたのに…」

涙が頬をつたい落ちていく。

顔をくしゃくしゃにして、無事を喜んでくれていることが伝わってくる。

「よかったですね。でも体力が落ちているかもしれないの精力のつくものを食べて下さいね」

それだけを伝えるので紘一も精一杯だった。

熱を放っている部分が右腕に広がっている。

呼吸も、息も、しんどい。

ただ、いまは、ふらつくことも倒れることも許されない。

それだけは解っている。


「大丈夫?」

志乃が駆け寄ろうとするのを紘一は手で制した。

車の陰に入り、地面に座り込んだ。

「志乃!」

天音がポテポテと紘一に駆け寄った。

志乃の方に腕を伸ばした。

志乃はその手を取るようにしゃがみ込み手を伸ばした。

天音がその手を紘一に手に持っていく。

もう一方の手も要求された。

それに従い志乃は紘一の手を上下で挟み込むようにして包む感じになる。

「深呼吸して」

「う、うん」

天音の指示に従って天音の指示に従って呼吸を整える。

でも、紘一の呼吸が荒れていくのに集中できない。

「目を閉じて」

「うん」

「暗闇の中に光が見えるはず…感じ取って、そこに飛び込むの意識して」

「えっ、うん」


目を閉じると闇が広がっていた。

気が付けば、闇の世界の中心でひとり浮かんでいるような感覚に囚われていた。

天音の声だけがどこからともなく届く。

「あなたのいる世界は光に満ちている…信じて…目をゆっくりと開けて」

志乃は頷いた。

ゆっくりと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

静かに目を開けると、そこは見覚えのある世界だった。

天音と出会った空間…そこが自分の内側の世界だとは気付いていなかった。

「紘一を感じ取れる?」

「紘一…」

うっすらと黒い靄が見えた。

「それに触れるだけ…気持ちを載せてあげて」

「気持ちって…」

「珠姫の神力に人の負の感情が触れたもの…黒は異界との接点になりやすいの」

志乃は恐々とそこに近付いていく。

そこにいるのは自分だけ…

誰かが助けてくれるわけではない。

怖い。

「大丈夫、怖くて当たり前だから」

その声とともに天音は姿を現した。

愛らしい少女の姿で。

「魄が繋がっているからね…長時間の干渉はできないけど」

心なしか空間の煌めきが増しているような気がした。

黒い靄に近付くと徐々に輪郭を露わにしていく。

それは紘一を幼くしたようにも見えた。

「子供たちの思念か…」

「でも、紘一だよ多分」

「リングは具現化させる力を宿主の記憶に頼るから…」

「きっと、子供たちの物欲に神力が反応して、あの女性の中で負の方向に動き出しただけ」

「邪念じゃなくても?」

「純粋で無垢なものほど神力は反応するから」

「どうすれば?」

「手を握ってあげて…負の思い…きっとお菓子を買ってもらえなかったのね」

「…そんなことで…命まで危険になるの?」

「みたいだね」

天音はふっと笑みを浮かべた。

すっと靄の向こうに行き、ゆっくりと舞を始めた。

軽やかに、楽しそうに、飛び、回転をくわえる。

その舞に志乃の心も楽しくなっていく。

志乃は少年紘一の手を握った。

「お疲れ様…次は願いが叶うといいね」

そう優しく語り掛ける。

少年はふっと笑みを浮かべた。

次の瞬間、光の粒子になり空へと浮かんでいった。

光の中に溶け込むように…


がはっ…

紘一はむせるように咳き込んだ。

「大丈夫か?」

「ママ、タヌキが喋った!」

「神だ!」

「子供に絡むな」

紘一は、汗で額にべったりと付く髪をかき上げながら苦笑した。

右手は志乃が包みこんでくれていた。

目をゆっくりと開ける。

「ホントびっくりしたんだからね」

「…さて、騒がれる前に大阪に行こうか」

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います


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