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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第28話 事件は突然に… 世界はご都合主義ですすみます?

湖北を抜ける頃には、空は群青へと変わり始めていた。

賑やかな時間が過ぎるのはあっという間だった。

澪と尊と騒ぎつつ、よくできたタヌキのぬいぐるみで盛り上がり別れたのは港だった。

律儀に志乃の荷物を運んでくれた。

係員の人に珈琲を差し入れして車を走らせると志乃は物珍しそうに後ろばかりを見ていた。

車窓の向こうを流れていく琵琶湖は、昼間よりも静かに見える。

尊の車も名神へ向かってゆっくりと走っていた。

しばらく追走する形で走っていく。

助手席では、志乃が小さく欠伸を噛み殺した。

その膝の上では、鉢巻きタヌキが窓へ張り付いている。

「速いな…外界」

「高速だからな」

「こうそく?」

「お前……そこからかよ」

紘一は苦笑した。

「時間の概念がないからな…感じ取れたところには瞬時で行ける」

「いまも?」

「依り代を使うとそれができなくなるのが…困り事だ」

「そうか…ある意味不便にいなった?」

「なった」

鉢巻タヌキが腕を組みながら、ウンウンと頷いた。。

そのときだった。

カーオーディオから流れたニュースに耳を傾けた。

『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』

軽快な洋楽を流していたDJの声に緊張が混ざっていた。

『現在、大阪市の「なにわ生協総合医療病院」において』

その瞬間に志乃の顔色が変わった。

『発熱を伴う原因不明の院内症状拡大が確認されております』

「どうかした? 志乃さん」

「叔母さんが入院している病院」

『関係機関による調査が継続されておりますが、安全確保のため病院施設の一部区域について立入制限措置を実施すると発表されました。これに伴い、近隣での発熱等の症状が疑われる場合には「なにわ病院」の方へと受診をお願いします』

「少し慌てた方がいいな」

「…うん」

『現在、一般市民への健康被害は確認されていません。院内の一部病棟を閉鎖。大阪府は原因を調査中です。渋滞の恐れもあります。付近を通行される方は、現地係員および警察の指示に従ってください』

紘一は、静かにアクセルを踏み込んだ。

ディーゼル車特有のエンジン音が唸り声をあげる。

『なお、症状には高熱や急性呼吸不全などが含まれ…え…』

DJは言葉を区切った。

その先は聴くまでもないだろう。

まだ誰の記憶にも新しいパンデミックの情報がフラッシュバックしている。

「嫌な感じだな」

紘一がぽつりと呟いた。

志乃は何となく窓の外へ視線を向けた。

ぎゅっと握りしめた手を狸のぬいぐるみがそっと抱きしめた。

暗くなり始めた高速道路の景色が、やけに遠く感じてしまう。

急ぐほどに、逃げていくような、いやな感じだ。


龍騎は、カメラバッグの上で寝転がったまま黙っていた。

いつもの軽口がない。

それが逆に不気味だった。

「何か知っている?」

志乃が小さく尋ねる。

龍騎は少しだけ間を置いた。

「知らない」

「でも」

志乃の神妙な面持ちに天音がパスっと龍騎のお尻を蹴った。

「痛っ! 話の途中だぞ! …すまん…嫌な気配はする」

天音の空気に龍騎は起き上がり頭を下げた。

車内に沈黙が落ちる。


第二阪奈道路へ入った。

途中で休憩を挟もうと思ったが、うまくいけば面会時間には間に合う。

きっと、病院は、一般病棟にいる患者を転院させるだろう。

その関係で、患者の家族は向かってきているはずだ。

その対応が終わってからいけば、中に入れてもらえなくなるだろう。

紘一には、この病院で苦い思い出があった。

知人の入院見舞いに行ったのは、おりしもパンデミックが終結へと向かっているときだった。

そうでなければ、知人が病院に入れるわけもない。

彼は、変な噂話としてゴシックネタをくれた。

それほど真新しいものでもない情報だった。

ただ、その発言内容に憤ったのを覚えている。

ジャーナリズムが紘一をつき動かしたわけではない。

ただの怒り…冷静さに欠いた取材。

そこに生まれる落とし穴。

落とすための罠に引っかかってしまった。

公表には至らなかったために、お咎めなしだった。

でも、葉月に助けられた事実が、そのことで葉月を窮地に追いやったことが…

「大丈夫?」

志乃がコンソールボックスの上に置かれた紘一の手に手を重ねた。

「え?」

「顔色が…」

「…ありがとう」

トンネルの照明が、一定間隔で車内を白く照らした。

明るくなって。

暗くなって。

また明るくなる。

その繰り返しの中で、志乃はスマホを握り締めていた。

何度か母親に連絡を取っていた。

叔母さんの容態を聞きたくて。

すでに病院の回線はパンク状態だった。

「大丈夫かな…」

志乃の声が震えている。

天音は、その横顔を静かに見上げた。

「病院そのものに結界が張られ始めているかもしれない」

「結界?」

志乃は天音を見た。

「人を閉じ込めるためじゃない。外へ出さないためのもの」

「どうして?」

「わからない、でも、言えるのは…お母さまは行かせない方がいい」

「…天音ちゃん」

天音はそれ以上答えなかった。

いや、答えられないみたいだった。

その代わり、窓の外を見つめる。

「ねぇ、龍騎」

「……ああ」

龍騎も珍しく真面目な声だった。

紘一はバックミラー越しに二匹を見る。

「説明してくれない?」

「まだ断定できん」

「その言い方、ほぼ黒だろ」

「神域が穢される時と似てる」

空気が少しだけ重くなった。

志乃の顔色がさらに青ざめる。

「叔母さん……」

紘一はアクセルを踏み込んだ。

ディーゼルエンジンが低く唸る。

速度表示がゆっくり上がっていく。

だが、その時だった。


――ザッ。

カーオーディオへノイズが走る。

『……返して』

「っ?」

志乃が顔を上げた。

ラジオのノイズに混ざって、女の声が聞こえた気がした。

『寒い』

ブツッ。

急に音が切れる。

そして何事もなかったみたいに交通情報へ戻った。

『第二阪奈道路、東大阪線付近で現在…』

「いまの……」

志乃の声が掠れる。

紘一も無言だった。

聞こえた。

確かに。

バックミラーの中で、龍騎がゆっくり身体を起こす。

タヌキのぬいぐるみなのに、空気だけが鋭く変わった。

「始まったか」

「何が」

龍騎は、静かに窓の外を見た。

遠く。

大阪の街明かりが広がっている。

まるで地上に星が落ちたみたいだった。

その光景を見つめながら、龍騎はぽつりと呟く。

「暴走だ」

「…ほかに話していないことあるか?」

「自慢ではないが、龍のように人とシンクロする力はない」

「………」

「玄李とお前が話した内容は知らんのに答えられないだろう」

「それは、そうだな」

「でも、一つ言えることは、暴走が始まったということだ」

龍騎はコンソールボックスへよじ登ると、どや顔を見せた。

その横に、トンと天音が来た。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

未完投稿となっているので、最終話まで急ぎ掲載していきます


☆作品テンポの関係で30分後に次の話をUPします

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