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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第27話 旅立ち…であっていますか? 事件解決に向かいます!

黒龍堂の前で紘一は足を止めた。

ぺこりと頭を下げる。

特に何かを言うわけではない。

ただ挨拶だけを残す。

志乃もそれに倣うように頭を下げた。

天音も。

そして、龍騎の足を蹴る。

「痛っ」

「いいの?」

チッ! 龍騎も天音の横に立った。

ポンポンポンと手を叩く。

三度お辞儀をする。

そして…もう一度お辞儀をする。

「行ってきます」

「………」

「何だよ」

「ううん、そうだよね。帰ってくるんだから」

天音は社の方へと視線を向けた。

「行ってきます」

天音と龍騎はポンと手を叩いた。


「無事に繋がったみたいね」

珠姫はほっと胸を撫で下ろすようにして玄李に声をかけた。

「ああ。紘一に(さき)(おお)からんことを」

玄李は深く頭を下げた。


フェリーが岸を離れると、船体がゆっくりと揺れた。

白波が後ろへ長く伸びていく。

デッキに出ていた観光客たちから小さな歓声が上がった。

「おお……」

龍騎が手すりによじ登る。

でも、丸い腹が邪魔でうまく前が見えない。

「落ちるよ」

志乃が慌てて背中を押さえた。

「大丈夫だ。俺だって神だぞ」

「タヌキだけどね」

天音が静かに突っ込む。

その本人も、手すりの縁にちょこんと座りながら、じっと竹生島を見つめていた。

ゆっくりと港が離れていく。

少しずつ視界に竹生島が収まっていく。

湖の上を渡る風が、赤いリボンを揺らしていた。

遠ざかる島。

山肌に隠れるように建つ堂塔。

湖の青の中に浮かぶ神域。

それが少しずつ小さくなっていく。

「…本当に離れてる」

天音がぽつりと呟いた。

その声は、どこか不思議そうだった。

龍騎も珍しく静かに島を見ている。

「天音ちゃんは初めて島を離れるの?」

小さくタヌキが頷いた。

志乃が苦笑する。

「こうして見るのは初めてだからかな…寂しいね」

「帰れなくなるわけじゃないよ」

志乃が小さく言った。

龍騎は少し黙る。

それから、ふっと笑った。

「帰る場所がある。何て言うか…妙な感じだな」

紘一はそのやり取りを横目で見ながら、カメラを下ろした。

いまの空気を壊したくなかった。

その代わりに、小さく息を吐く。

「俺は少し休むわ」

「えっ?」

龍騎が勢いよく振り返った。

「何だその嫌そうな顔」

「置いていく気か?」

「客室だぞ?」

「だからだ」

「意味がわからん」

龍騎はカメラバッグの上で腕を組む。

何というか偉そうだ。

「初めてなんだぞ。外界」

「修学旅行生か」

「似たようなものだ」

「威厳は何処にいったのよ」

天音が呆れたように呟いた。

でも、その目は少しだけ柔らかい。

龍騎は気にせず続ける。

「甲板も見たい。売店はないのか? あとあの箱は何だ」

「箱…ああ、自販機な」

「?」

「飲み物専用の売店だ…って、島だろ? 気になっているの」

紘一は苦笑した。

タヌキのぬいぐるみをふたつ、カメラバッグに乗せた。

デッキに上がり、最後部へと足を向ける。

「し、仕方ないな…眺めてやるよ」

紘一は苦笑した。

すると龍騎は、ぴょん、とカメラバッグから飛び降りる。

着地に失敗して一回転した。

「うわっ」

「見たか?」

「? 何を?」

「今の華麗な着地を」

「転んだよね?」

志乃が即答した。

天音が肩を震わせている。

龍騎は咳払いをして誤魔化すと、紘一の靴へ前脚を乗せた。

「というわけで連れていけ」

「強引だな」

「大丈夫だ。騒がない」

「それが一番信用できない」

「失礼な」

そう言いながら、もうバッグへ戻る気満々でよじ登っている。

紘一は観念したように肩を竦めた。

「……15分だけだぞ」

「よし」

「即答」

龍騎は満足そうに鉢巻きを揺らした。

その横で、天音が小さく笑う。

「本当に楽しそうですね」

その言葉に、紘一は少しだけ視線を細めた。

遠ざかる竹生島を眺めながら一枚写真を撮っておく。


長浜港へ船が着くころには、陽が西へと傾いていた。

予定よりも遅い帰還となった。

フェリーを降りる人の波を眺めながら紘一はカメラバッグの上を眺めた。

心なしか寂しそうにしている。

普段から抜け出しているだろうに…何だろう。

「何となくだけど、考えていることは解かる気がするぞ」

「ん?」

「哀愁漂わせやがって、だろう?」

紘一はクスッと笑った。

笑って「正解」と鉢巻きタヌキを指差した。

「何しているんですか? 行きますよ」

人の流れが少し落ち着いたところで志乃は声を掛けてくれる。

この後、澪と合流する必要があった。

志乃の荷物は澪が預かってくれていた。

元々の予定では、澪の彼の車に乗って大阪に戻ることになっていた。

デートの邪魔になるのもあれだから、別行動で大丈夫と言ったのに、強引に決められた。

竹生島に行く用事もあったから、午前中は別行動の予定だった。

が、思ったよりも遅い戻りにになった。

「いまは、長浜城の近くいるみたいです」

「王道の観光だね」

「行ってきますね」

「大阪で合流でもいいよ」

「…泊る処、困るでしょ」

「まぁ、予定していなかったからな」

紘一は苦笑しながら、バックを担ぎ直した。

「お、おい、もう少し気を遣え」


港から湖沿いを歩くことにした。

夕方の長浜は、観光地でありながら静かだった。

平日ということもあるが、長浜港は意外なほど人が少ない。

メインの観光地となる黒壁スクエアの方は平日とはいえそれなりに賑わいはある。

比べるものではないが、長浜城跡も人は少ないめだ。

すれ違う人には、どこか帰る空気が混ざり始めているようにも見える。

幸いなことに、長浜城への行き方をきいたのは朝のスタッフ。

駐車場の閉鎖時間までならということなので言葉に甘えることにした。

旅先での出会いや貰う親切は、思い出のひとつとして記憶に宿る。

もちろん…良いことばかりではない。

黒い澱になり胸の奥へと沈むような記憶だってある。

それでも、誰かの何気ない優しさが、その輪郭を少しだけ柔らかくしてくれる。

触れれば何かを傷付けようとする角をおとして…

旅というのは、案外そういうものなのかもしれない。

「どうかしました?」

志乃の声がふと現実へと引き戻してくれた。

「いや、優しさに触れると自分も優しくなりたいと思うな」

「そうですね。でも意外です」

「ん?」

「長浜城跡って港から近いですね」

そんな話をしながら豊公園を抜けていく。

港から城跡までは徒歩7分程度。のんびりあるいても10分かからない距離だ。

長浜城の方へ近づくと、小さな子供の声が聞こえてきた。

「ひこにゃーん!」

「彦根じゃないのに強いな」

紘一が苦笑する。

「人気者なんだね」

志乃も少し笑った。

そのときだった。

「あ、いた」

澪がベンチから立ち上がる。

その勢いに手にしていカフェのラージサイズの紙コップが宙に投げ出された。

それを「あっ」という表情で隣にいた男が苦笑する。

ラフな服装の彼はどこにでもいそうな青年だった。

「お疲れ」

「助かる。マジで」

「いや、ついでだから」

返事をしながら澪は紘一をみてニヤッと笑う。

「へ~、そう言うことなんだ」

さて…どう説明するべきか…紘一はそんな事を考えてしまう。

「あ…竹生島で鉢合わせたんだよ」

「もう、いいって、みなまで言うなって」

そう言いながら、彼氏の腕を取った。

「これ…先輩で彼氏のタケル」

「え…おい、きちんと…崎山尊です」

紘一は苦笑しながら「鳴海です」と握手を交わす。

その横で鉢巻きタヌキがバッグの上で一歩踏み出し手を上げる。

「……ぬいぐるみ?」

「神だ」

「…高性能ですね」

驚きながらも尊は普通に返す。

だめだ…信じてもらえない…

龍騎が少し戸惑った顔をする。

「驚け…

サッと志乃が口を塞ぎながら手に取った。

口が動かないとはいえ音が漏れるのは問題だ。

何よりも話せることが嬉しいらしい。

「あれ…気のせいか?」

「やだ、疲れてんじゃない? 帰り大丈夫?」

澪が笑いながら尊を覗き込む。

その優しい眼差しに不思議とほっこりとした温もりを感じる。

「あ、そうだ、これ、キャリーバッグ」

「ありがとう」

澪は志乃の腕を取りながら、二人から距離を取った。

「で、これから遊びに行くの?」

「はは、そうなったらいいけど」

「…なって無いの?」

「そんなに軽い?」

「…まぁ、全然見えないけど」

「ありがとう。良かったよ、見えていたらどうしようって」

「あはは、未経験かもって思っていたから、ナンパしたから」

「ちょ、ちょっと、私じゃないでしょ」


「仲良しですね」

紘一が尊に語り掛けた。

「ですね…部署が違うのに研修とかはいっしょが多いみたいで」

「そうなんだ」

「あ、お仕事は? 聞いてもいいならですが」

紘一はクスッと笑みを零して名刺を一枚取り出す。

何気無い態度で、友人に絡んでいる男の素性を確かめる空気が伝わってくる。

澪の恋人というだけではなく、きっと3人が仲良いのだろう。

名刺を差し出しながら、紘一は石垣の上に建つ長浜城を見上げた。

復元天守ではありながら、不思議と作り物っぽさを感じない。

観光のために整えられた景色がこの町の生活に溶け込んでいるからなのだろう。

犬の散歩をする人。

部活帰りらしい学生。

湖畔のベンチでぼんやり琵琶湖を眺める人。

すぐ隣にある生活の時間が溶け合うように流れている。

城だけが特別なのではなく、この町そのものが長浜として息をしている。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います


☆作品テンポの関係で30分後に次の話をUPします

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