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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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3/6

第2話 ディナーの後は大人な時間ですか?

朝の光が、ブラインドの隙間から細く差し込んでいた。

人が生活をすると言うことを考えて作られていない建物は痒い所だらけだ。

元々住む予定ではなく事務所として設計されている。

そもそも空き地活用の提案もガレージ付き事務所。

トイレはあってもバスルームはない。

後付けでシャワーは汗を流す程度…風呂は近くの24時間ジムで済ませるつもり…

ここで棲むということすら考えていなかったことを実感してしまう。

身体を静かに起こそうとして腕の中にあった温もりに気付く。

静かに首の下から腕を抜き、部屋の中を眺める。

2階はそれなりの広さがある。

簡単でいいからキッチンくらいつけていてもよかったかと後悔するのは…

昨夜のことが明らかな原因だ。

そこに添えられたいまは幸せそうに吐息を立てている美里の溜息も…

せめてもの救いはベッドがセミダブルということだけかもしれない。


静かだった。

外を走るトラックの低い音だけが、遠くで響いている。

紘一は欠伸をしながら、新しいパンツを履く。

なるべく音を立てないように着替えをセッティングしていく。

キャリーバッグにパッキングしていき、機材と一緒に階段脇に置いていく。

「……あー」

掠れた声が漏れる。

声の方へと視線を向ける。

そこに美里が眠っている。

黒髪が肩にかかり、薄い毛布の隙間から白い肩が覗いていた。

昨夜、散々怒っていたくせに、眠る頃には昔みたいに腕の中へ収まっていた。

女って、わからない。

いや、わからないのは自分の方か。

紘一は苦笑しながら天井を見上げた。

少しだけ…まだ酒が残っているようだ。

このまま運転手たら、飲酒運転にされてしまうだろうか。

そんな事でも考えていないと、またムラッとしてしまいそうだった。

美里から視線を逸らすと冷蔵庫が視界に入った。


昨夜、美里は冷蔵庫を開けたまま固まっていた。

「…何これは?」

「ん?」

「ウイスキーしかない」

「ハイボール作れるよ」

「炭酸ないよ」

「外の自販機に百円で売ってる」

「そうなんだ…って、そういう問題じゃない!」

紘一は工具箱を漁るみたいな顔で棚を開ける。

「ほら、ある」

取り出したのは袋麺だった。

さらに、乾燥わかめ。

青さ。

冷凍野菜。

「終わってる……」

「料理はできる方」

「基準値が低い」

結局、美里が鍋を使うことになった。

カセットコンロの前に立ちながら、美里は慣れた手つきで湯を沸かす。

ここにあるのは、浄水器の水と保存食と簡単な調理機材、そして道具。

どれもがキャンプで使う道具だ。

「何か飲む?」

「ハイボール」

「………」

「なにか?」

「いえ…炭酸買ってきます」

紘一はぺこりと頭を下げる。

トントントンと階段を降りる音が響く。

それが心地好い。

普通の時間。

それが幸せに思える。

最近、些細なことに幸せを見つけるようになった気がする。

不思議な時間だ。

赤の他人が縁あってひとつ屋根の下で暮らす。

それは、きっと当たり前のことじゃない。

口で言う程、好きは好きになっていないのかもしれない。

好きと口にした瞬間から好きになっていく…そんな気がする。

そして、きっと思いは絡み合って好きから次のものに変わっていく。


ガコッン!

ウイルキンソンを2本。

ミックスジュースという名前に惹かれてそれも…ガコッン。


ホント…心配になっちゃう。

美里ははぁ~と息を吐きだした。

同時になんでついてきたのか後悔したくもなっていた。

昼のまま別れていれば…こんなにやきもきしないですんだのに…

でも、それはそれで…

美里は溜息を吐いてから乾麺をお湯の中に投入する。

二人なのに麺が一つ。

具材は冷凍キャベツだけ。

ざく切りか、千切りしてから冷凍すればもう少し使い勝手は…

このキャベツ、いつから冷凍されているのだろうか。

急に不安になってしまう。

でも、訊いたところできっというのだろう「大丈夫だろう?」と。

聞くだけ無駄な気がしてくる。

ホント、なぜこれを相手に選んだのだろう。

つくづく後悔しておきたくなる。


「どうぞ」

美里の、カセットコンロの横にグラスを置きながら声を掛ける。

「ありがとう」

そのやり取りに一緒に住んでいた時間が思い出される。

そう言えば、振られたんだった、と思い出してしまう。

上手くいかないものだ…と、少し熱いものが込み上げてくる気がした。

ソファーに腰を掛けて、美里を見詰めて溜息を零す。

その背中を見ながら、紘一はハイボールを口へと運んだ。

「……何か新婚みたい」

ぽつりと言葉が漏れた。

「いますぐ別れてやる」

即答だった。

でも、その声は少し笑っていた。

湯気が立つ。

狭い部屋に、インスタントスープの匂いが広がる。

「ラーメン、一個しかないけど」

「半分でいい」

「遠慮?」

「太る」

「変わってないなぁ」

「紘一が無頓着すぎるだけ」

出来上がったラーメンを二人で分ける。

小さなテーブル。

向かい合って座る距離が妙に近い。

昔も、こんな夜があった気がした。

外は曇り空だった。

窓ガラスに、ぽつり、と雨粒が当たる。

「……降ってきたね」

美里が小さく呟く。

紘一はグラスを傾けながら頷いた。


いつ以来だろう。

仕事の話を交えずに、相手のことだけを求めて会話したのは。

「私のことはあんまり興味が無いんだと思った」

ポツリと美里の口から洩れた言葉に紘一は血の気が引いていくのを感じた。

興味が無いわけがない。

ただそれを言葉にするのが怖かった。

臆病だから踏み込めない。

誤魔化すように言葉も動きも軽くなっていった。

いや、美里と出会ったときはそのスタイルになっていた。

いつの間にか昔の恋人話になっていた。

照れ臭い話。

笑って終わるはずだったのに…美里からのパンチが何度か飛んできた。

途中から、美里が泣きそうな顔で笑っていた気がする。

そのあと…どんな話をしたのかは覚えていない。

ただ…熱く求めあうままに、暗闇の中で相手を探し続けた気がする。

胸元へ額を擦り寄せるようにして、美里が小さく寝返りを打つ。

紘一は思わず動きを止めた。

寝息は静かだ。

睫毛が少し震える。

化粧の落ちた顔は、編集部で見せる強気な表情よりずっと幼く見えた。

昔からそうだった。

起きている時は気を張っているくせに、眠ると急に無防備になる。

紘一は美里の髪をそっと指で払う。

そのまま額へ触れかけて、手を止めた。

何をしてるんだろう。

静かだった部屋の中に外を走るトラックの低い音だけが、遠くで響いている。

紘一は欠伸をしながら、新しいパンツを履く。

なるべく音を立てないように着替えをセッティングしていく。

キャリーバッグにパッキングしていき、機材と一緒に階段脇に置いていく。

「……あー」

掠れた声が漏れる。

声の方へと視線を向ける。

そこに美里が眠っている。

黒髪が肩にかかり、薄い毛布の隙間から白い肩が覗いていた。

昨夜、散々怒っていたくせに、眠る頃には昔みたいに腕の中へ収まっていた。

女って、わからない。

いや、わからないのは自分の方か。

紘一は苦笑しながら天井を見上げた。

少しだけ…まだ酒が残っているようだ。

このまま運転手たら、飲酒運転にされてしまうだろうか。

そんな事でも考えていないと、またムラッとしてしまいそうだった。

美里から視線を逸らすと冷蔵庫が視界に入った。


昨夜、美里は冷蔵庫を開けたまま固まっていた。

「…何これは?」

「ん?」

「ウイスキーしかない」

「ハイボール作れるよ」

「炭酸ないよ」

「外の自販機に百円で売ってる」

「そうなんだ…って、そういう問題じゃない!」

紘一は工具箱を漁るみたいな顔で棚を開ける。

「ほら、ある」

取り出したのは袋麺だった。

さらに、乾燥わかめ。

青さ。

冷凍野菜。

「終わってる……」

「料理はできる方」

「基準値が低い」

結局、美里が鍋を使うことになった。

カセットコンロの前に立ちながら、美里は慣れた手つきで湯を沸かす。

ここにあるのは、浄水器の水と保存食と簡単な調理機材、そして道具。

どれもがキャンプで使う道具だ。

「何か飲む?」

「ハイボール」

「………」

「なにか?」

「いえ…炭酸買ってきます」

紘一はぺこりと頭を下げる。

トントントンと階段を降りる音が響く。

それが心地好い。

普通の時間。

それが幸せに思える。

最近、些細なことに幸せを見つけるようになった気がする。

不思議な時間だ。

赤の他人が縁あってひとつ屋根の下で暮らす。

それは、きっと当たり前のことじゃない。

口で言う程、好きは好きになっていないのかもしれない。

好きと口にした瞬間から好きになっていく…そんな気がする。

そして、きっと思いは絡み合って好きから次のものに変わっていく。


ガコッン!

ウイルキンソンを2本。

ミックスジュースという名前に惹かれてそれも…ガコッン。


ホント…心配になっちゃう。

美里ははぁ~と息を吐きだした。

同時になんでついてきたのか後悔したくもなっていた。

昼のまま別れていれば…こんなにやきもきしないですんだのに…

でも、それはそれで…

美里は溜息を吐いてから乾麺をお湯の中に投入する。

二人なのに麺が一つ。

具材は冷凍キャベツだけ。

ざく切りか、千切りしてから冷凍すればもう少し使い勝手は…

このキャベツ、いつから冷凍されているのだろうか。

急に不安になってしまう。

でも、訊いたところできっというのだろう「大丈夫だろう?」と。

聞くだけ無駄な気がしてくる。

ホント、なぜこれを相手に選んだのだろう。

つくづく後悔しておきたくなる。


「どうぞ」

美里の、カセットコンロの横にグラスを置きながら声を掛ける。

「ありがとう」

そのやり取りに一緒に住んでいた時間が思い出される。

そう言えば、振られたんだった、と思い出してしまう。

上手くいかないものだ…と、少し熱いものが込み上げてくる気がした。

ソファーに腰を掛けて、美里を見詰めて溜息を零す。

その背中を見ながら、紘一はハイボールを口へと運んだ。

「……何か新婚みたい」

ぽつりと言葉が漏れた。

「いますぐ別れてやる」

即答だった。

でも、その声は少し笑っていた。

その時間を続けたら?と雨が窓を叩き始めた。

紘一は視線を窓の外へと向けた。

温度差なのか、それとも外から見えないようにという気遣いなのか…

ガラスが曇り始めていた。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

第2話は長くなったので 30分後に後編を掲載します

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