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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第23話 神さまってイベント好きですか? それとも…

少し鳥居に凭れかかって時間をやり過ごした。

汽笛が鳴り、船がどちらかの港に向かって動き出す。

ここ竹生島に渡ってくる航路はふたつ。

長浜と今津。

長浜は、人の熱があるとでもいうのが良いのかもしれない。

観光地独特の浮ついた空気が町の景観にマッチしている。

観光ゾーンから少し離れた港だけに、島に渡るつもりが無ければ足を向けないだろう。

中には、地元に帰る前にと土産袋を提げたまま乗り込んでくる人もいる。

それ以上に目立つのが、朱印目当ての人かもしれない。

残念ながら…

土地に興味を抱くとか…

仏閣にロマンを求めてとか…

歴史に翻弄された時代に惹かれてとか…

そう言う人は意外に少ないのかもしれない。

辨財天もその役目に惹かれる前に金運のパワースポットとして追いかけられている節も感じる。

何にせよ、琵琶湖へ来た…という高揚感を、そのまま船へ持ち込んでくる感じだ。

それに比べると今津は静かだった。

生活の延長みたいな空気がある。

湖を見慣れた人間たちが、当たり前みたいに船へ乗る。

風の匂いも少し違う気がした。

湿った湖の匂い。

鉄と水が混じる港の空気。

静かな波音。

どちらも同じ竹生島へ向かうはずなのに、流れてくる人の色だけが違う。

ただ港の駅舎風はいい感じだと思う。

問題は、今津の方は食事をするところが一軒しか見つけられていない。

竹生島をモデルにしたラーメンの盛り方はなかなかいいものだとは思うが…

「なにそれ…食べてみたい」

志乃はそう言って笑った。

「そうだな…機会があれば」

「…それって連れて行かない人が言う台詞ですよ。一人置いて帰ったくせに」

その言葉がチクリと胸に刺さってしまう。


玄李は、障子を開けた。

その横におぼつかない脚で寄り添う珠姫がいた。

その場に玄李が座ると珠姫はその胡坐の上に頭を乗せた。

玄李の頬がほんのりと赤くなる。

それを珠姫は気付かないふりをして外へと視線を向けた。

何処かぎこちない恋愛経験ゼロ?と思わせる男女が笑顔で言葉を交わしている。

もどかしい…でも…信じると決めた。

「あ」

「なに?」

「小僧の右手に…」

予備にと考えていた珠姫の『龍のリング』が輝いていた。

その輝きの中に白金の独特な色合いが混ざっていた。

無事に届いてほしい…そう願った形で紘一の指に填っていた。

玄李がホッと胸を撫で下ろしていた。

今回のことで力を貸してくれるだろう秘石は受け取ってくれなかった。

でも、その代わりになるものは届いているが、使い方は…

最後の刻まで足掻いてみよう。

小僧に託したのだから…それを信じて。

そう思ってしまう。

そっと珠姫が手を伸ばして、手を握ってくれた。

かわす言葉はいらない。

ただ…そのリングの使い方も原因不明の病気もしっかりと説明できていない。

敵についても…どうやって見分けるかも…伝えられていない。

それだけだ。

玄李は小さく息を吐いた。

これ以上考えると、たぶん駄目だ。

「ねぇ」

「ん?」

「魔石については…?」

「え? いる?」

「龍だったら信用してしまいそうな二人だけど…玄李のおかげで」

「それ悪い意味にしか聞こえない」

玄李はポツリと呟いた。

紘一の知識に期待しよう。

悪龍や魔龍が誕生する理由について、きっと気付いてくれるだろう。

神龍が生まれるのと似たようなものだから…きっと…

「絶対に都合のいいことを考えているでしょう? 玄李」

「…そんなことは」

「あったみたいね」

珠姫はクスッと苦笑を漏らしながら視線を鳥居で言葉を交わす二人に向けた。


「行こうか」

「…どこに?」

「取り敢えずは…まだ参拝していない都久夫須麻神社から?」

紘一はクスッと笑った。

いま竹生島で押さえることがあるとすればひとつ。

白い影の正体だ。

黒い影が黒龍なら…白い影は…

珠姫に会うまでは、珠姫のことだと考えていた。

玄李の言い方からは…敵ではないことしかわからない。

そして、繋がっていても志乃が解からないということが分かる。


「さて…少し休もうか」

玄李は、スッと珠姫を抱き上げて微笑んだ。

心配したところで、いまは何もしてやることはできない。

とりあえず、巫女には会いに行ってくれるようだ。

それだけで充分だった。


順路を逆に巡っていく。

それを是とする人もいれば、否とする人もいる。

すれ違う人の視線がそれを感じさせる。

竹生島は、島自体が御神体とされている。

だからなのか、歩き方にも妙な空気があった。

真面目に手を合わせる者。

写真を優先する者。

御朱印帳を抱え、小走りに順路を抜ける者。

それぞれが別の目的で同じ道を歩いている。

だから逆に歩くだけで、少し異物になる。

流れが決まっていれば、ぶつかるトラブルが減るのは確かだが…もっと自由でいい。

だからすれ違う視線の中にある露骨に嫌そうな顔に苦笑が出てしまう。

たぶん『逆走禁止』みたいな感覚なのだろう。

本当はどう巡っても問題はないというのに混乱を避けたい人の思惑が流れを作る。

それを先導するように順路が存在するのかもしれない。

とはいえ、横を歩く志乃は気が気でないのだろう。

真面目な性格がいつの間にか握りあっている手から伝わってくる。

順路を逆に巡る。

神仏的に正しいのかは知らない。

ただ、人間社会的には少し怒る人もいるだけだ。

特に狭い階段。

あれはもう、お互いに『なんで逆から来るんだ』という顔になる。

ただそれを気にするほど紘一は押し付けられたルールに縛られる気は無い。

もちろん、島に渡るときに一歩通行になっていると定められていたのならそれに従う。

もう一度、順路通り進み宝厳寺を通過する方法もある。

ただ…それをすると玄李がそわそわすることになるだろう。

それはそれで面白いのだが…

この際だから、逆に巡る道をたどる。

お遍路にも『逆打ち』なんて言葉があった気がする。

確か、順に巡るより功徳が深いとか、修行になるとか。

タイミングもあったはずだが…そこまでは記憶には無い。

それに弘法大師と出会える…なんて話もあったはずだ。

もっとも、こちらは修行というより完全に私的事情だ。

突然…拉致されて、突然…強制退場させられたのだから…神仏の都合ともいえる。


「俺の後を追いかけて…と、影が見えたのはこの辺かな?」

紘一は都久夫須麻神社に戻ると志乃に確認するように振り返った。

ちょうど人が入れ替わるタイミングなのだろう。

志乃は八大龍王拝所の方を少し眺めてから一点を指差した。

少し不安そうな表情で紘一を見る。

玄李の話を総合的に考えればここで何かがあったはずだ。

「あの辺というか…こう、もっとあっちから」

志乃は、龍神拝所の辺りから指先をかわらけ投げをする場所へと流れた。

そして、白巳大伸社へと指先が動いた。

紘一は龍神らしいと苦笑を漏らした。

「どうしたの?」

「玄さんらしいな…と」

「お茶目だよね」

志乃も乗るように笑みを浮かべた。

「拝所には入っていないのかな?」

「あっ…うん」

とすれば、観音堂の方ということになる。

そう思った瞬間だった。

都久夫須麻神社へ続く石段の脇に蜃気楼のような揺らぎがたった。

それが風に溶けるみたいに揺れ白い影を見せる。

志乃は小さく息を呑み、紘一の手を後ろからキュッと握ってしまった。

紘一は頭を掻きながら苦笑した。

「……呼ばれてるってヤツかな」

そう呟いて、石段へと視線を向けた。

白い影は、道案内をするように、階段に沿って上がっていく。


志乃は小さく喉を鳴らした。

膝が震えている。

もう逃げ出したいくらい色々なことが起きていた。

変わったことを感じるのは理解している。

でも、その人の気分や体調で何となく処理できることが…

向こうからこう触れられ続けると戸惑ってしまう。

紘一が一緒じゃなかったら、ここで港の方へと急いだ自信がある。

紘一が足を進めるから、それに連れられるように足が進んでしまう。

本堂へと向かう石段の途中で急に足を止める。

紘一の手にキュッと力が入った。

空を見上げて長く息を吐いた。

振り返るように志乃の顔を見詰めて、握ってくれている手の甲をトントンと叩いた。

きっと…ここは自分で向合う場所のなのだろう。

何度か深呼吸をしてから、紘一の手を握る手を開いていく。

喉がカラカラになっていた。

紘一は、志乃を置いていくように本宮へと上がっていった。

その背を見送ってから、志乃は、意を決したように白い影の前へと、1段上がった。


お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

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