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すみません。僕は無関係のはずですが…強制参加はハラスメントです!  作者: 麒麟


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第21話 神様って…いろいろと盛りすぎじゃないですか?

静寂…そう呼ぶにふさわしいほどに静かな時間が流れた。

紘一も玄李もまっすぐに相手の瞳を見据えている。

どちらかが動き出すまで、何もしないという空気が流れていた。

つまらないマウントの取り合いだと珠姫は苦笑した。

ただ、玄李が悪いと思っている。

でも、ここは自分が口を出すところではない。

玄李と二柱揃って竹生島を離れたのは事実だ。

その結果がこれだ。

樹の根元に収まっていた二つの秘石は長い時間をかけて宝玉へと変化した。

黒龍の名に相応しい、漆黒の水晶へと成長した。

それを壊して持っていかれるとは考えたこともなかった。

何よりも宝玉は自分の元を離れても問題はなくても壊れれば影響を受ける。

その影響は人が考えるよりも深刻だ。

だから玄李は言葉を選んでいる。

少々抜けた対応になっているが、出さない方がいい情報を飲み込んでいる。

過去に、こういう事例がないわけでもない。

ただそれは小さな龍が起こした事故。

その流の宝玉は飴玉程度の大きさだった。

それを飲み込んだ人もいた。

結果は爆死するということになった。

龍の蓄えた神力を人の体が受け入れるはずもなかった。

もちろん歴史の中に成功した事例もあるだろう。

そう思うだけで気が気でないのは…

砕けた宝玉は元に戻ろうとする。

欠けたままでは終わらない。

足りないものを、周囲から奪ってでも。

それが人の血肉であっても…利用するだろう。

ここに新たな問題が浮上する。

玄李が気付いているかは知らない。

ただ珠姫には伝わってくる嫌な感覚が…

不安定になった神力はその落ち着け方を探している。

残っている砕けた宝玉の片割れは、玄李の宝玉に守られている。

安定もしている。

だから、自分は自分を保っていられる。

でも、連れ去られた宝玉の欠片は…

だから原因不明の病魔として存在していることになる。

誰かの強欲が、小さな欲求を食らいながら暴走しようとしている。

残された時間は、9日。

宝玉が持ち去られてから40日過ぎている。


「どうしたらいいの?」

志乃が沈黙に耐え切れずに口を開いた。

解熱剤は効かなかった。

玄李の話を聞いている限り効かなくて不思議はない。

だからこそ余計に不安になる。

叔母さんは入院後、完治したと退院した。

叔母さんだけじゃない。

他の原因不明の高熱患者も何人か退院した。

再入院まで個人差はあったが多くの人が病院に隔離病棟に戻っていた。

再入院にいたらなかった人もいる。

高熱の中で、苦しみ命を落としていったと聞いている。

再入院後の治療も、効果があるのかどうかもわからない。

「それが頼みになる」

そこで玄李は言葉を切った。

玄李は志乃ではなく紘一を見た。

「これは…」

握った拳が差し出された。

「壊された宝玉の元の質に似ている。うまくいけば再融合の…」

そこで言葉を飲み込んでしまう。

玄李にも自信がない。

誰も試したことはない。

試したことがあるのは、宝玉の修復だけだ。

でも…

それまで珠姫の体がもつ保証はどこにもない。

このまま、探しに行って天罰を下すのも…それが許されないことは知っている。

そのあとどんな罰が自分に下るのかもわからない。

でも、それはどうでもいい。

護るべきは…珠姫の命だけ。

それで充分だ。

「不安な顔で口にするそれの成功率はどこまで低い?」

紘一の声が、研ぎ澄まされたナイフのように玄李の胸をえぐった。

「未知数だ」

その言葉に紘一は苦笑だけを残して立ち上がった。

障子を開ける。

龍木と称される樹を見上げた。

さっきまで見ていたものと同じものだとは思えない。

多くのエネルギーが集まり、金色に輝いている。

その樹をしばらく見詰める。

助けてくれる人はいるだろうか。

どこまでいっても、ここにあるのは純粋な願いが零していた光り輝く粒子。

時々、赤や青、黒の粒子も混ざりに来るが光に飲み込まれて消滅していく。


「どう見ます?」

「えっ」

振り返った紘一に対して口元に人差し指をそっと立ててその女性は微笑んだ。

小柄なのに、不思議と人の視線を奪う女だった。

雪を思わせる白い肌。

作り物めいたほど整った顔立ち。

ぱっちりとした大きな瞳は幼さを残している。

それなのに、ふとした瞬間だけ年齢の読めない静けさを宿す。

黒髪は艶やかで、灯りを受けるたびに柔らかく色を変えた。

きっと笑えば空気が明るくなる。

けれど真顔になると、近寄りがたいほど冷たい。

それでも彼女には笑顔が似合うと思う。

愛らしい。

それなのに、どこか人ではない感じを与えてくれる。

華奢な肩。

細い指。

触れれば折れてしまいそうなほど繊細なのに、その奥には簡単には揺らがない芯がある。

それが誰かは、自己紹介されなくても解る。

この空間には2柱と2人しかいない。

御簾の奥で横になっていたはずなのに。

いつのときも、場所も、男は女に護られているのかもしれない。

そんなことを思ってしまう。

黒い衣装に身を包んでいなければ、玄李の連れ合いにはもったいないというだろう。

いや、似ている。

空気感も雰囲気も。

華奢な体は詐欺だろう。

「『どう?』とは?」

「離れてみると見えない光の粒子たち、身体が小さくなると見えるのに…」

「綺麗だね。でも」

「でも?」

「上がっていく光が乱れている。貴女はもう長くないのか?」

くすっと珠姫は肩を竦めながら笑った。

「言葉を選ばないのですね?」

「…優先するものが見えなくなるのは困る」

「?」

「志乃さんの叔母さんとやらを助ければ…」

「救われるかもしれません」

「いまの問題は?」

「宝玉が砕け、そこにあるエネルギーが消えれば…」

「貴女の死?」

「それだけですめばいいけど」

珠姫はため息をついた。

それだけで、周囲の空気が静まり返る気がした。

まるで、昔話の中から抜け出してきた姫君のように可憐だと感じてしまう。

「エネルギーが一手に収束して、外に爆発するかのような反応があるとか?」

冗談だった。

そのつもりが珠姫は力なく笑みをこぼした。

「避けるためには?」

「宝玉を」

「修復するにしても」

「どうしてですか?」

「……美人を死なせるのは損失だから」

「莫迦ですね」

珠姫はクスッと笑った。

「乗せられた船だし」

「乗りかかってくれたのでは?」

「それ…無理あるでしょう?」

「そうですね。手を」

珠姫に言われて、紘一は右手を差し出した。

珠姫は、その手をそっと自分の手に乗せ、外へと伸ばさせた。

それまで、下から上へと上がっていた光の粒が紘一の手の周りをぐるぐると回りだす。

珠姫が何かを口にした。

それに合わせて光の粒が人差し指の周りをぐるぐると回りだす。


「黒龍さんって何をするの?」

志乃はどこか現実逃避するように視線を泳がせながら訪ねた。

「色々とあるが、この島の封を守る者だ…」

「封?」

「ああ…様々な厄災から護る」

黒龍の表情から笑みが消えた。

「大変そう」

「そうだな」

玄李は苦笑した。

「弁才天の姫が封じた石がある…俺たちのものとは違う種の宝玉だ」

その声音だけで、空気が少し冷えた気がした。

「人の願いが、神の力に触れすぎぬよう…そんな願いが込められている」

「えっ」

「人が持つには過ぎたものを封じた碑石…でも神力はそれほど危険なんだ」

玄李は続ける。

「だからこそ人を惑わす魔力がある。魔力が、悪意に起こされることも…」

「………」

「弁財天様が俺たちに与えてくれた力のひとつが宝玉を生み出すものなら…」

「なら?」

「君が力を貸してくれないか?」

「えっ?」

「この後、俺のような存在に会いに行ってほしい」

玄李は深々と頭を下げた。

その真摯な眼差しに志乃は恐縮してしまう。

「何を言っているの?」

「まだ、伝わらないか」

玄李は苦笑を浮かべた。

もう目を覚ましてもおかしくないのに…

「そろそろここに君たちを押しとどめるのも限界のようだ…すまん」

「玄李さん?」

「欠片を持った者は、最初に熱を出すはずだ…ただ宝玉が認めなければ」

「それに限らない?」

「ああ…宝玉の欠片が宿りを探すかぎり被害は広がるだろう」

志乃の肩がぴくりと震えた。

「身体が変わろうとするから…熱がでる。ことを急ぐためにそれに耐えられなくて…」

「まって、そんな事で死んでいるの?」

「それを超えたものには『不老の力』が与えられるとも言われているがな」

冗談みたいだった。

でも黒龍の目は一切笑っていない。

「人には過ぎる力とはそういうことだ」

低く、はっきりと言う。

「肉は老いを前提にできている。それは人も神も変わらない」

玄李は目を閉じて間をとった。

知っていた。

過去にもそれを求めた人はいる。

だから、人はそれをする種であることを。

際限のない欲の中で、自分だけの利己を追及するものは紛れ込む。

どの時代にも表れる変えられない現実だ。

「そこへ老いぬ力を無理に流し込めば、身体は自分を作り替えようとする」

「でも…どうして叔母さんが」

「近くにいることで気に神力に充てられたのだろう」

「そんな」

玄李は目を閉じた。

きっと無関係なのだろう。

ただ巻き込まれただけだ。

だからそれを伝えるのは気が引ける。

でも、もう理解できるだろう。

「熱が出る。体力が削られる。内側から壊れていく…残された時間は、それほどない」

「でも」

「すまん、急げとしか言えない」

志乃の唇が小さく震えた。

「病ではない発熱者を探せ…俺に分かるのはお前の叔母がその一人ということだけだ」

玄李の声は、静かだった。

それなのに残酷なほどよく届いた。

変化に耐えきれなければ、死に近づいていくだけ…

耐えた先は?

不老という孤独に耐えられる人はどれだけいるの?


「弁財天様に授けられた宝玉を生みだす力、その宝玉が砕かれ、持ち去られた」

珠姫の声にざわ、と神木が揺れる。

湖の方から吹き上げる風が急に強くなった。

「でも、その力を、私の龍の神力を集めることができれば」

「これチートアイテムだよね?」

紘一は珠姫にニヤッと笑ってみる。

人差し指に巻き付いた光が指輪になっていた。

龍の装飾のある銀色の指輪に。

龍が黒くなっていく。

漆黒のその色は、珠姫の髪の色にも感じられた。

「それを相手に触れさせることができれば…助けてくれる」

「…透明とかになる?」

珠姫は苦笑しながら首を振った。

お読みいただきありがとうございます。


基本的に 不定期更新の のんびり進んでいきます。

ご意見、ご要望あればうれしいです。

アイデアは随時…物語に加えていければと考えています。


今回、チャレンジ企画に挑戦!です

よろしければお付き合い願えればと思います

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