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「俺達のもう一人の救世主だ」
仲間が横になっているベッドの側の椅子に座っている。衛生兵 の女性へと近づく。
「無事で良かった。それで……」
「……回収してきたよ」
「…………」
「……ありがとう」
「怪物を倒したから、回収した意味はなかったけど」
「いいや。あそこの連中は信用ならないからな。あいつらに回収される前で良かった」
「ええ、本当にありがとう。これはせめてものお礼よ」
銀貨を3枚受け取った。
「ありがとう。それじゃあ、お大事に」
「ああ、気を付けてな」
「また会いましょう」
建物を出る。
「なあ、あんた」
ドワーフの兵士が声を掛けてくる。
「僕に用?」
「いや、一言礼を言いたかったんだ。仲間を助けてくれてありがとう」
〘⇄〙
「どう致しまして」
「忙しいのに引き止めて悪かったな。フェアウェール」
「フェアウェール」
ドワーフ式の古い挨拶をするドワーフもいるんだ。
でも僕以外にも言っても伝わるのかな?
まあいいや。気になる街を見に行こう。
多くの種族達が行き交っていたり、談笑を楽しんでいる。
結構賑わってるんだね〜。
地下だって事を忘れちゃいそうだ。
木や花だって沢山植えられているし、擬似恒星だって天井にある。
あれもご先祖のアークディラが作ったのかな?
だとしたら凄いな〜。
あんなのを作った人達と一緒にされるのは、何だか申し訳ないかな。
◦探し物
「もし、そこの方」
な、なに!? この魂に響く声は。
左、右と確認する。
けどそれらしい人物は見当たらない。
でも右側に視線を感じ……見ると。
種族が行き交う合間に、路地裏に立つ一人の種族と視線が合う。
黒いローブに身を包み、笑顔が刻印された白いマスクを被っている。
引き寄せられるように黒く光る目を見つめてしまう。
こ、これは魅了魔法。
意識を集中させ、魔法を振り払う。
振り払う間に、いつの間にか裏路地の方に歩いていってしまっていた。
「戦うつもりなら、殺る」
「そんな事しません。今のは軽い挨拶どす」
「どす」
「あぁん、違います〜。今のは吸血鬼の挨拶じゃありません故」
「僕に何の用?」
「私はベラリュネと申します。よしなに」
「…………」
「うぅん! フェネックはんなら何か知ってるかと思いまして。実は妹の姿が見当たらなくて探していますのん。見ておりません?」
「この街の人達を襲いに来たんでしょ?」
「何か勘違いを。私達はそんな下品な事しません」
「信用できない。吸血鬼病に感染した種族に会ったばかりでね」
「ドラゴンはんと同じです。領域を追放された愚かな者たちの仕業でしょう」
「あなたの妹は見てないよ。どうしてここにいると?」
「妹は愚かな恋に熱を上げていますのん。その相手がこの領域にいるかもと耳にして、私達にはやるべき重大な任が待っているというのに……まあ、あんたはんにこんな話してもしゃーないですわね〜。フッフッフッ」
「それでどうする気?」
「そんな心配無用です。私はこんなオイル臭い領域なんて興味ありません。いないのなら諦めてテネブラエへ帰ります。それではお手間お掛けしました。ああ! それとフェネックはん。中々愛らしい容姿ですこと。ホッホッホッ」
瞬きした瞬間、目の前のベラリュネは消えていた。
「…………」
こんな奥まで来てたっけ?
表通りへ向かう。
・刺客
黒い革の鎧を身につけたドワーフが立ち塞がる。
「あんたアークディラだな?」
「そうだけど、僕に何か用?」
「手ほどきしに来た」
装備していた2本の短剣を両手で構えるとドワーフは突然襲ってきた。
身構えながら戦技を放ち、迫ってくる。
念動をドワーフへ放つが効かない。
二刀流のドワーフの攻撃を避ける。
頬をかすめそうな程、間一髪。
腕、腹、顔。どの攻撃も避ける事ができたが、かなり際どい。
後退しながら避け、反撃の機会を伺う。
鋼のベールを放ち、小規模の火球を複数放つ。
ドワーフは盾形の障壁を前面に出すと全ての火球を受け止め、剣撃を浴びせてきた。
「うっ!?」
着ていたローブに刃先が当たり、刃先は肌を少し掠めた。
斬られた箇所はヒリヒリ痛む。
毒!?
「んん!!」
痛みからくる憤怒の力を思いっきり両手で放ち、念動でドワーフを地面に叩きつける。
「グハッ!!」
舗装の砕けた破片が飛び散る。
「おい! 何をしている!!」
後方から兵士達が走ってくる。




