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〘⇄〙 説得するべきか。先を急ぐべきか。
「分かった。僕が帰って来るときに間違って攻撃しないでね」
「一人でいくつもりなのか!? まったく自殺行為だ」
「じゃあ一緒に来る?」
「俺は英雄じゃない。名誉よりも生きていたいんでな」
「じゃあね」
「気を付けろよ」
奥へ向かう。
ザリアスの部下の話し声が聞こえてくる。
「一人で行くみたいだな」
「流石アークディラだ」
「だからって不死身って訳じゃないだろう」
「でも俺達よりは手練れかもな」
「そうだな。敵を知っているのかも。勝つようウルカヌスに祈っておこう」
「ああ」
他の話し声が聞こえてくる。
「さっさとこんな陰険な場所から出たい」
「まったくだ。でも皮肉だよな。ここにいた方が今は一番安全ときたもんだ」
「そうだな。二人じゃあ生きて出られないだろうからな」
「まあ大丈夫さ。奴が戻ってきたら、全員でボルトの雨を降らせてやればいい」
大きな奥の通路へ入る。
壁に掛けられていた照明装置が所々地面に落ち割れている。
落ちていない照明装置も壊れているのか、 点滅を繰り返している。
奥へ奥へと進むうちに、死臭が漂ってくる。
残念だけどザリアスは正しかったのかもしれない。
鉱夫たちの生存の見込みは薄いだろう。それでも生存者がいるのなら助ける。
何者かの話し声が聞こえてくる。
「ダメだ、ダメだ。一体どうしてこんなことに。俺は何も悪くないんだ。何も悪くない。お願いだ許してくれ」
鉱夫の生存者かもしれない。
そっと近づき、声をかける。
ただし一定の距離をあけて。
「大丈夫?」
「あっ!? だ、誰だ!? く、来るな!!」
みすぼらしい格好をした人間の男性が、慌てふためき後ずさる。
周囲には死臭が漂い。
見回すと、ザリアスの部下と同じ鎧を着た者たちがズタズタにされ殺されていた。
あちこちに腕や足、首が飛び散っている。
原型をとどめていない肉片も数多くあるが、どれも鎧を身につけていないようだ。
「僕は助けに来たんだよ」
「助けに!? 本当か!? でも……君じゃあ俺を助けられない……」
「怪我が酷いの?」
人間の男
「いいや、抑えられないんだ。抑えられないんだ! 体の中から湧き出てくる……空腹が。もうダメだ……また腹が減ってきた。頼む、もう誰も食べたくないんだ。助けてくれ」
「もしかしたら治癒できるかもしれない」
「いいやもう無理だ。時間がない。これ以上……抑えられないんだ。早く、早く …頼む。殺してくれ……お願いだ」
人間の男性の体が黒いオーラに包まれていき、体が変化し始めた。
〘⇄〙
「……苦しまないようにする」
「ありがとう。済んだらこの指輪を妻に……」
肌が青白く変わっていき、爪や歯が槍先のように鋭く伸び始めていた。
念動で首を折った後、そのまま心臓を引き抜き、潰す。
男性が地面に崩れ落ちた。
男性の遺体から指輪を取る。
「も、もう死んだのか?」
死体かと思っていたら、2人だけ動き立ち上がった。
みすぼらしい格好をした人間の男性二人。
1人は片方の肘を抑え、もう一人片足を引きずりながら側まで来る。
「もう大丈夫だよ」
「あぁ、助かった」
「まさか、ネッドがこんなことをするなんて」
「知り合いだったの?」
「ああ、だがそんなに仲がいいわけじゃない。ただの仕事仲間だ。でも助かったよ。ありがとう」
「本当に感謝する」
「ずっと死んだふりをしていたの?」
「ああ、言いたいことはわかるが、それしかできなかったんだ」
「実は他にも3人ほどいたんだ。それで俺たちは逃げる機会を伺ってたんだが、耐えきれなくなった3人が先に逃げようとして殺された。もうそれから恐怖で動けなくなったよ」
「なあ、俺達と一緒に戻ってくれないか?」
「でももう安全だよ」
「そうだが、不安なんだ」
〘⇄〙
「いいや。まだやる事が残っているから」
「あぁ……じゃあ待ってるよ」
死体を漁りシグナキュラムを探す。
話し声が聞こえてくる。
「死体を漁っているのか?」
「当然だろ。衛兵じゃなく傭兵なんだから」
「でもヴァンガードの腕輪をつけてたぞ」
「お前の見間違いだろ」
3つのシグナキュラムを回収し終えた。
「よし行こう」
「良かった。さっさと出よう」
生存者の二人と共にザリアスの所まで戻る。
「ザリアース! もう安全だよ!」
バリケードからこっちにクロスボウ身構えていたザリアスの部下達が武器を降ろすザリアスが近づいてくる。
「本当か?」
「うん。生存者もいたしね」
「良かった。後は俺たちの仕事だな」
「じゃあね」
「感謝してる」
ザリアスに頷き、その場を離れる。
鉱山の出口へ向かう。




