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ドワーフの女性は横たわっているエルフに包帯を巻いていた。
咳払いをする。
「だ、誰!?」
「大丈夫、助けに来たんだよ」
「あなたは……アークディラ!? う、嘘……私……幻覚を見るようになってしまったの?」
「落ち着いて、僕は本物だよ。ローランドに会って、これを貰った」
腕輪を見せる。
「大佐と? それは、ヴァンガードの腕輪」
「そうだよ。それより治癒魔法は出来ないの?」
「出来るわ。でも彼の体を見て、半端な治癒魔法じゃ無理よ。かといって動かすと危険」
〘⇄〙
「僕が見てみるよ」片方の腕が肩から切り落とされている。傷口はとても綺麗に切断されている「治療の為に切ったの?」
「いいえ、襲われた時に」
「剣で?」
「分からない。薄暗くてあまり見えなかったの」
「どうして君だけ助かったの?」
「襲われた時、一緒にいた他の仲間が助けてくれたの」
「そのもう一人のドワーフ?」
「いいえ、彼も襲われた時に負傷したの。彼らは襲った相手を追って奥に向かっていったわ。私は衛生兵だから、ここで負傷者の手当てをしていたの」
「腕はある?」
「ええ」
衛生兵のドワーフが布に丁寧に包んでいた腕を出す。
「それをここに」
「こう?」
「そう」
「なにか咥えられる者はある?」
「あぁん……ガーゼは?」
「それでいいよ。しっかり体を押さえていてね」
「分かったわ」
厚みのあるガーゼを腕が切り落とされた兵士の口に咥えさせる。
そしてリザレクションを放つ。
「うぅぅぅぅん゛!!!!」激しく暴れるのを二人で必死に押さえ、途切れないようにリザレクションを放ち続ける「うぅぅん゛!! うぅぅん゛!!」
上手く腕は結合した。
「凄いわ....」
「応急処置が良かったからだよ」
「はぁ〜」安堵したのか笑みが溢れる「ンフフ、良かった」
「もう大丈夫だね」
兵士が目を開ける「ああっ…….寒気も、痛みも、なくなった」
「彼が助けてくれたの……えっと……」
「ベルだよ」
「有難うベル。君は命の恩人だ」
「彼女もね」
「ありがとうソフィア」
「あなたが私を庇ってくれたから、感謝してる」
「モーは?」
「大丈夫、寝ているだけ」
「ここは危険だから早く出た方がいい」
「そうね。でもどの道が合っているのか……」
「来た時はずっと左に進んできたんじゃないの?」
「いいえ」
「ここからずっと右に行けば出られるよ」
「感謝する」
「ありがとう」
「じゃあ僕は行くね」
「一緒に出ないの?」
「僕はその襲撃者を探しているから」
「そう……気を付けてね。できれば追っていった私達の仲間も……」
「分かってる」
「万が一の時は……彼らのシグナキュラムを回収してきて欲しいの」
「覚えておく。じゃあね」
更に坑道の奥へ進む。
繋がっている道もあったのか。
これは迷うな〜。
先で何かが地面に落ちていた。
近付くと死体だった。
この鎧はさっきの兵士達と同じ物。
詳しく死体を調べる。
かなり鎧に損傷がある。剣というより爪痕に近い。
片目がくり抜かれ、後頭部まで穴が空いている。
恐らくこれが致命傷になり、突き刺されて死んだんだろう。
側に落ちている剣には変わった物は何も付着していない。
剣の攻撃は相手に当たっていないのだろう。
片方の手が焦げ臭い。
恐らく炎術を相当放ったのかも。
もう一体の死体を調べる。
頭部と右足のない死体、頭部が地面に転がっている。
首から切断され、切断面は処刑人の斧で切れられたように綺麗な断面になっていた。
武器じゃないとすると厄介な怪物かもしれない。
不思議と恐怖より興味が湧いてくる。
先の方からうめき声が聞こえてくる。
警戒しつつ先を急ぐ。
開けた空間へと出た。
道はどれもここへ続いていたのかもしれない。
通路が複数ここへ繋がっていた。
あれはザリアス?
ザリアスの元へ向かう。
ザリアスの部下達がこっちに気がつく。
「何か来るぞ!」
「後続部隊か?」
ザリアスがこっちに気が付く。
「あんたはさっきの」
「大丈夫?」
「大丈夫に見えるか? 部下の殆どをやられた」
ザリアスも軽傷を負っているみたい。
「ここで何をしているの?」
「生き残った部下とともに、負傷者の手当てと防御ラインの構築をしている。遅かれ早かれ誰かが防御ラインを築かねばならんからな」
「相手はどんなやつか分かった?」
「ああ、怪物だ。それも恐ろしく素早い。オートマトンじゃないのが唯一の救いだがな。奴らに街の場所を知られたらおしまいだ」
「この先は行き止まりなの?」
「ああ、地図ではな」
「他に生存者はいた?」
「残念だが誰もいなかった」
「死んでたの?」
「いいや、遺体は見つかっていない。おそらくこの先にいるのだろうが、奴と一緒で生存者がいるとは思えんからな」
「でも確認してみないと分からないよ」
「そんな事は分かっているさ。だが俺の任務は部下を出来るだけ多く生かし、この鉱山の安全を確保する事だ。鉱夫の救出は含まれていない」




