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ドアを抜けると、床や壁一面が真っ白の大理石で覆われた広いフロアへと出た。
ここにも多くの種族達がいて、何かの作業をしているようだ。
ただ鎧を着た兵士や軍服を身に着けた情報部の種族達とは違い、かなりラフな格好をしていた。
記憶通り、背の低い本来のドワーフが一人こっちへ歩いてくる。
「これは司令官、今日は……」
ドワーフが丸い溶接眼鏡を上げ、僕を凝視してくる。
「アークディラ!? 本物!?」
「そうだ。ベル。彼はミナシゴハー。工学機関の責任者だ」
「おお! これは驚いたー! まさか本物とはな」
汚れた分厚い革の手袋を取り握手を求めてくる。
「宜しく」
ミナシゴハーと握手を交わす。
「ハー、早速だが、あの起動できなかった装置を見せてくれ」
「はいはいはい、こ、こっちです」
中央の大きな大理石のテーブルへと向かう。
「彼が連れていた古代のオートマトンの話では、オートマトン達はアークディラに作られ、敵対的ではなかったそうなんだ」
「では私の仮説が証明されたということですね」
「ああ、そうだ」
「待ってください! 古代のオートマトン!? その者は今どこに?」
「私の部屋でセタンが見張っている。あまり大事にしたくはないのでな」
「是非とも会ってみたい」
「タリを分解したりしないよね?」
「勿論、会話をした方が有力ですからね」
「話を続けるぞ。首謀者というか、オートマトン達を操っている者がいる可能性がある事が分かった」
「予想通りですが、当たって欲しくはなかったですね」
「ああ。最悪、皆の古傷を抉って仕舞いかねない。だがいずれにしろ真実を突き止めるのは先だ。この装置はアークディラが持たなければ、起動しないという話だ」
「僕の出番って訳」
「じゃあベル、早速頼む」
「うん」
テーブルに三つあるうちの一つ目を手に取る。
手に取ると同時に装置が光りだし、視界がで靄覆われていき音が聞こえてくる。
そして靄が晴れると遺跡の時と同様に別の場所へと立っていた。
赤く染まった空に巨大な黒い飛行船が無数に飛んでいる。
「アントのドロップシップだ。一体どうやって」
「こちらビキューナ1、1。アントが領域オムニシールドを通過。繰り返す…あっ!?」
「どうした?」
「通信妨害です。ブルーバード通信が遮断されました」
「奴らのドロップシップは直下でなければ目視出来ない。すぐに通信が出来る場所を探せ」
「了解。お前達行くぞ」
「「シーラセライ!」」
「中佐、敵の通信を傍受」
「聞かせろ」
「スペクターを展開」
「了解。スペクター掃射開始」
「スペクターが来るぞ!! 迎撃部隊は直ちに…」
頭上から降ってきた海月型のポッドが障壁を突き破り、直撃した後視界は真っ暗になってしまった。
「ベル、ベル!」
ローランドが心配そうに僕を見ている。
「大丈夫…ですか?」
「うん、記憶を見てた」
「これは記憶装置なので?」
「詳しくは分からないけど、触れると誰かの記憶を見れるみたい」
「それで、何か分かったのか?」
「アークディラ達の国は、アントの襲撃を受けたみたい」
「アントの話はただの逸話ではなく、真実だったのか」
「でもおかしいですね。アントの痕跡は今まで、まったく見つかっていませんでした」
「私達が見落としていた可能性もある。それに奴らが今の状況に関係しているのかもしれない。ベル、次の装置を頼む」
「うん」
真ん中の装置を手に取る。
でも何も反応がない。
「何も起きない」
「どういう事だ?」
「壊れている可能性があります。何せ、保存状態が良い物ではありませんでしたから」
「仕方ないな。最後のを頼む」
3つ目の装置を手に取る。
だけどこれも反応がなく、何も起きない。
「これも駄目みたい」
「まったく」
「合うパーツを探し、修復していけば何とか直せるかもしれません」
「どれくらい掛かる」
「分かりません。何せ始めてですから」
「ベルは工学に詳しいか?」
「残念だけど」
「そうか。ハー、すぐに始めてくれ」
「分かった」
ハーが作業台へと装置を持って向かって行く。
「ベル、装置の記憶を見る事が出来るのはアークディラである君だけだ。どうか今後も力を貸して欲しい」
「タリとルーデンと一緒にここにいていいなら」
「感謝する。街を直接案内してやりたい所だが、色々とやらねばならない事があってな」
「見て回る時、何か不自由がないといいんだけど」
「ではこれを持っていってくれ」
ローランドから精巧な銀の腕輪を受け取る。
「これは?」
「それはヴァンガードの腕輪だ。ヴァンガードは軍内での特別な存在なんだ。私から貰ったと言えば要所での不自由は減るだろう。それと何かと入り用になるだろう」ローランドから金貨5枚を受け取る「我々の通貨だ。先ほどの礼と思ってくれ」
「ありがとう」
「大佐、緊急の要件が入っています」
「分かった。ではベル、シタデルで体を休めてくれ」
「ありがとう」
「こちらこそ感謝している」
ローランドが更に奥にあるドアへと呼びに来た兵士と共に入っていった。




