19
暫く歩いた後、巨大な門が見えてきた。
門には左右それぞれに何かが象られている。
「あそこ?」
「ああ、ようやくだ」
「あれは、何なの?」
「ウルカヌスだ。ここを造ったドワーフが象ったんだ」
「よくエルフ達を匿ったな」
「最初は揉めたらしい。だが俺の曽祖父が入れたんだとか。今じゃ英雄になってる」
「セタンって凄かったんだ」
「まあな。だが俺じゃない。曽祖父の功績だ」
「なあルーデン、あんたの言う多くの世界でもエルフとドワーフってのは仲が悪いのか?」
「大抵はそうだ」
「そうか。その点に関してはオートマトンに感謝だな。俺達は今を大切にしなきゃな」
「頑張れよ」
セタンが前へ進み、巨大なドアの中心部分を4回ノックする。そしてダイヤルを回していく。
すると門中央の小窓が開き、一人のドワーフがこっちを見てくる。
「誰だ?」
「ヴァンガード、チャーリー小隊。セタンとイセリア」
「知らねーなー」
「おい、ルジェ。俺を入れないからって、貸しはチャラにはならないぞ」
「ハッハッハッ、いま開ける」
歯車の動く音が聞こえてくると、巨大な門の片側が少しだけ開いた。
「行くぞ」
セタンが先に入り、降ろしていた荷物を中から引っ張り入れた。
僕とルーデン、そしてタリとイセリアが入ると門がすぐさま閉じた。
中は広く開けた空間で、多くの武装した種族達が沢山いた。
テーブルに向かって話し合っていたり、椅子に座ってジョッキ片手に談笑している種族達などがこっちを一斉に伺ってくる。
するとどうも表情が険しくなってきた。
ルジェと数人の種族が近付いて来る。ルジェ以外は剣を抜いている。
「ガラクタ以外にも何か拾ってきたみたいだな」
「生存者だ」
ルジェが不思議そうに僕の目の前まで来る。
「こいつは驚いた。あんた本物のアークディラか?」
「まあ、そうかな」
後ろで剣を構える種族達もお互いに顔を合わせ、動揺しているみたい。
隣にいるルーデンが静かに目を細めている。
「おい、荷物の検査を」
「了解」
種族達がセタンとイセリアの荷物を預かり、テーブルの方へと持っていく。
「さあこっちだ」
「ああ待て、ローランドを呼んでくれ」
「大丈夫、本物のアークディラを連れて来たなんて喜ぶさ」
「いいから頼む」
「分かった」
ルジェがローランドを呼びに行った。
「ローランドというのがここの責任者なのか?」
「いいや、ここの軍の司令官だ」
聞き耳を立て、端にいる純血ドワーフの兵士二人の話を聞く。
「本当にアークディラだと思うか?」
「間違いないだろう」
「お前、会った事あるのか?」
「本物か分かんないな」
「そうだろう」
リザードマンとエルフの兵士の話に聞き耳を立てる。
「あれオートマトンじゃないか?」
「そんなわけないでしょ」
「そうか」
「肌、渇き過ぎてるんじゃない?」
「平気だ」
少ししてルジェとローランドらしき人物が来た。
ローランドもセタンと同じハーフドワーフのようだ。体格がゴツい。
でもセタンより歳が行っていて、立派な髭を生やしている。
「よお、セタン、無事だったか」
「ああ」
ローランドとハグを交わすセタン。
「イセリアも」
「どうも!」イセリアが両方の肘を持ち腕を組んでいる。
「それで君がアークディラだな」
「まあね」
「私はローランド。ここの指揮官を務めている。会えて光栄だ」
握手を求めてくるローランド。
「僕はベル。宜しく」
ローランドと握手を交わす。
「シタデルへようこそ。それでセタン、私を態々ここへ呼んだ理由は?」
セタンがローランドに近付き、小声で話す。
「そうか……」ローランドが近付いてきて、奥にいて顔を下げているタリを見る「勿論、大丈夫なんだろうな?」
「ああ、俺が責任を持って見ておく」
「分かった。ここにいる間は絶対に目を離すなよ」
「ああ」
「ローブを羽織らせて、まずは私の部屋へ。詳しい話はそこで聞く」
「分かった。イセリア」
「りょーかい」
イセリアがタリへローブを羽織らせ、さっき同様、タリの側で立ち塞がり他の種族からの視界を遮っていく。
「さあ、こんな所で長話はなんだ。行こう」
先導するローランドについていく。
目の前にはさっきの石の門とは違い木の門が塞がっていた。
大きさはさっきの門と同じだ。
横の壁にあるローランドが入ってきた金属の堅牢そうな小さいドアを閉じられており、二人の兵士が塞いでいた。
木の門の片側が少し開く。
ローランドが先に入り、後に続く。
開いた門の隙間からは、入る前から凄まじい種族達の話し声が無数に聞こえてくる。




