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壁が崩れると白く眩しい光が一気に差し込んできた。
視界が光に慣れると、複雑そうな銅色の装置が沢山置かれていた。
翼を折り畳んだルーデンが先へと進んでいき、僕もルーデンの後に続く。
「すぐに……建物から……退避……して下ぁぁ……」
女性? 誰かの声はぷっつりと消えた。
「誰かいるのかな?」
「いいや、種族とは思えん」
ルーデンが首を回し、周囲の様子を伺っている。
好奇心に駆られ、ルーデンより先に向かう。
「気をつけろよ」
色々な物に囲まれた中央へ行くと、部屋を全体を白い光で照らしている球体が回っていた。
ルーデンが僕の隣へ来た。
「これ、何だと思う」
「さあな。だがここにある物は全て、ブラッカス達の機械だろう」
「さっきの声もそうなの?」
「ああ、機械の声だろう。オートマトンといい、まだ動いているとはな」
機械と機械の隙間に何か別の物があるのが目に入った。
近くまで行くと、蜘蛛の巣が張られ、動かなくなっていたオートマトンだった。
オートマトンは休むように手すりにもたれかかり、両足を伸ばして座り込んでいた。
細くて長い足。腕も。そんな事を考えていた時、オートマトンの頭部が突然動き、僕を赤く光る四つの目で見てきた。
オートマトンと目が合った後、少しの間、お互いに無言のままだった。
「まだ動いてる」
「ええ!」
「うわっ!? 喋った!?」
「ベル離れろ!」
ルーデンが片手を上げ、喋ったオートマトン踏み潰そうとする。
「待って下さい! どうか殺さないで!」
ルーデンが少し躊躇った後、手を地面に降ろした。
「その中に閉じ込めらえたのか?」
「い、いいえ。私は私です」
「魂を他の物に閉じ込めるのはよくある事だ」
「ええ、知っています! でも私はそれに該当しません」
「何だと?」
「つまり君は生きてるオートマトンって事?」
「まあ簡単に述べると、そうですね!」
「馬鹿な」
「いいえ、このアクノス帝国では至って普通の出来事ですよ。ユピテルの使者を知らない辺境の領域で喋るドラゴンに初めて会った時を想像なさって下さい」
「言いたい事は分かった」
「良かったです!」
「なんで君は他のオートマトンみたいに、僕達を襲ってこないの?」
「ベル、それは我々を油断させているだけかもしれないぞ」
「その警戒心はとても素晴らしいですが、今はまったくの的外れですね」
「気に障る喋り方だ」
「私のコアはポジティブ思考として形成されているので、変えようがないんですよ」
「生きていくのは大変そうだな」
「私の生を認めて下さったうえに心配までして貰えるとは、お互いの関係が一歩前進ですね」
「んー…………」
ルーデンの鼻息が凄かった。
「君はここで何があったか覚えてる?」
「勿論です! お恥ずかしい話、オートマトンが創造主に対して反乱を起こしたのです」
「君もオートマトンでしょ?」
「勿論! 幸い、私は問題の発端と思われる伝達コアに接続される前でしたので、難を逃れたのです」
「都合の良い話だ」
「あなたのように種工知能に対して偏見を持つのは至って普通の事ですので理解できます」
「さっき我はお前の命を救ってやったばかりだぞ」
「申し訳ありません。余計な事だと分かっていても声として出してしまうのです」
「それで話の続きは?」
「そうでした! ここにいた創造主達は、事前に計画されていた通り、領域ゲートを」潜り避難したと思われます」
「他の人達は?」
「ここでの出来事以外は分かりません。
ですが、ここでの惨状はとても酷い物でしたので、影響は帝国中で起きた物と思われます」
「ベル」
「何かあったのルーデン?」
ルーデンの視線の先に、四角く薄い、半透明の石板があった。
石板に手を触れると、目の前の景色が一変した。
「アノ様! 既に中央コアからの制御は不可能です」
耳が大きい四つ目の種族。あなたは誰?
「一体どうなっているんだ? ここにあるはずだろ!」
僕が喋ってる? それに視線も勝手に動く。さっきいた場所と同じ……だけど荒れ果ててない。凄く綺麗だ。
「プロトコル11を実行中。既存のオートマトン兵を全て稼働へ移行します。エラー、安全プロトコル破損。異常を検知、対処不可。直ちに施設から避難して下さい」
「アノ様、避難致しましょう」
「データを全て持って行くんだ」
「はい、直ちに」




