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第一章第六部 薄い膜に隔たれた世界に絶望がある

エロ描写があります。


苦手な方はお読みにならないようご注意くださいませ。

「進んでみよう」


俺たちは互いに顔を見合わせながら慎重に壁伝いに侵入していく。

鴬張りの音を最小限に抑えながらすり足で進む。

障子張りの部屋の中を覗く。

階段を10数段ほど下りたところに木の床に簾を敷いただけの広間があって何十人も裸の人間がうろついていた。


そして中心部では女が二人、男たちに犯されていた。

うめき声は犯されている女二人のものだった。

それをおこなっているのは村の男たち。

顔を知っている程度の者だったが間違いなくこの村の人間たちだ。

女は手足を縄で縛られて身動きは取れず、猿ぐつわのような物を噛まされて口が開きっぱなしになっている。

髪はぐちゃぐちゃで呆然とただ犯されている。

汗と体液の臭いがこちらまで漂ってきていた。


女二人を囲むように男たちが10人近く集り、力任せに蹂躙していた。

周囲には休憩している男たちや寝ている男たちまでいる。

入口にもどこにも見張りがいないのは警戒することすら面倒になって怠惰に色欲に溺れているからに違いなかった。

そして滅茶苦茶にされている二人は俺たちの会社の同僚だった。


村人たちの悪行を目の当たりにして背中と頭が冷たくなった。

指先も脚も緊張と怒りで震える。



彼女たちが入社してきたのは俺たちの一年後で、大学院を卒業して入社した我々の3つ年下の後輩だった。

それぞれに営業のいろはを教え、時には泣き言を聞くための飲み会もやったりした。

気が弱い一人は悪い客先で色目を使われたことで落ち込んでいることもあった。

もう一人は入社当初から生意気で人の言うことを全然聞かなかった。

しかしハルキが教育担当になってからは生意気なところは変わらないでも、いい仕事をたくさんしてくれた。

そうやって手塩にかけた後輩がぐちゃぐちゃにされていくのを見て血が沸騰した。

目の前が赤くなる。

頭の毛細血管までが全てドクドクと脈を打つ。


俺は憤怒に身を任せて障子を力いっぱい殴りつけた。

それとほぼ同時にハルキも障子を蹴破った。


だが、障子はびくともしなかった。

それどころか音すらしなかった。


目の前の障子の奥には薄く膜が張られていてその膜より奥へ侵入するものを拒んでいたのだった。

その膜は部屋全体を覆い、全方位からの侵入を拒絶していた。

蹴っても殴ってもなんの変化もしない。

魔法を当てても障子すらなんの変化もしなかった。

物理法則ごと捻じ曲げているとしか考えられない。


万策尽きたかと思われた頃、中にいた男たちが数名出入口に繋がる階段を上り始めた。

こちらに向かってくる。


諦めるしかない状況だった。


歯茎から鉄の味がする。

エナメル質がぎりりと削れる。

ハルキが肩にそっと手を置いて首を横に振った。

怒髪天を衝くような怒りを顕わにして。

俺は憤怒に任せて自分たちの小屋まで走った。


これまで一度も村への猜疑心など持たなかった。

だが、これがリアルだった。


小屋へ戻るとハルキが


「許さねえ」


目を血走らせながら言った。


「当たり前だろう」


これからどうしていくか俺たちは話し合ってからその日は床に就いた。

眠気はいつまでたっても襲ってこなかった。


それからは二人とも日中、それなりに村人と関わりながら情報を集め、晩になると村中を偵察に行った。


そんなことが幾日も続いた。

打開策すら思いつかずに。


日中すらも仕事で村中を回りながら情報収集をした。

夜になれば村中を巡り、例の小屋にも何度も足を運んだ。


あの膜はピクリともしない。


村の中の探索を諦めて村の外の森へ足を伸ばしてもただ自然が広がるのみで何も得るものがなかった。


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