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第一章第七部 村のグロテスク

若干グロ注意です。


今日のうちに第一章を完結させたいです。


そのうち感想を参考に書き直しも入れていかないとですね。

とある日の夜。


「今日も二人でお散歩かな?」


探索のために身支度をしていたところで小屋の入口にカインが顔を出していた。

俺たちが夜中に出かけていることは看破されている。

焦りを気取られぬよう


「そうだ。カインも行くか?」


と短くハルキが答えた。


「いやあ俺はいっかなあ。でも近所の住民から夜な夜な二人がどこかへ出かけている。怪しいことをしているのではないかって苦情が入っちゃっててさ~」


カインはニコッと微笑んだ。

ゲームセットのようだった。


「怪しいのはどっちだ」


怒りと諦めで口をついて出てしまった。


「いや~。俺は二人を心配しているだけだぞ」


カインの明るさが俺をイラつかせた。


「散歩のどこが心配なんだよ」


カインが憐憫を湛えた微笑みで言った。


「ほどほどにな」


そう言って小屋から出て行った。

足元には手紙が落ちていた。


拾い上げて読んでみる。


『この村は転移者を混血し続けている。

二人以外の転移者は逃げられない


1時間後村の外れの洞窟にて待つ』


「どういうことだ?」


「混血…?分からんが罠かもしれない。慎重に動こうぜ」


疑いたくはなかった。

それでもこの村に対する猜疑心は俺を臆病な獣にした。

カインは日本から来たんだ、そう語っていた。

俺たちよりも10年くらい早い時代にこちらの世界に転移してきて故郷に置いてきた妹が心配だと語っていた。

俺と同郷で高校が近くでよく故郷の話をした。

共通の知人はいなかったが、高校生がよく行く店なんてたかが知れているからきっとどこかで会っていたんじゃないかなんて話に花を咲かせたこともあった。


明るい性格は母親譲りで父親は鬼のように厳しかったらしい。

突然いなくなって、また突然家に帰ったら親父になんて言われるかななんて笑っていた。


「カインはいいやつだよな」


ハルキが呟いた。


「うん」


「お前はここにいろよ。俺が行ってくるから」


「待てよ。おかしいだろ」


「そんな顔して来るんじゃねえよ」


低く凄まれてハッとした。

鏡がないから分からないがきっと酷い顔をしているのだろう。

ハルキは俺より俺のことを知っているのだから。


「悪かった。俺も…ちゃんと行くから」


俺たちは無言で身支度を整え始めた。


約束の時間。

洞窟の入口にて。

カインが草むらから顔を出した。

顎で洞窟とは違う方角を指す。

その合図に従ってカインの後を追う。

カインはものすごい速さで森の中へ駆けていく。


振り切られないように俺たちもついていった。


10分程走っただろうか。

息も絶え絶えになった俺たちと息一つ切れていないカイン。


三人で向かい合って立った。


「ありがとう。信じてくれて」


カインが真面目な顔をして言った。


「当たり前だろう」


ハルキがそう言った。


「悪い。俺は疑った」


「ハハ!思慮深いのに正直だね」


「俺がこの村に来た日はさ、この村の辺りは土砂降りでさ。

森を抜けてきた俺たちは泥まみれだったんだよね。

妹と一緒に森を抜けてきたんだ」


「妹は日本にいるんじゃなかったのか?」


俺が尋ねた。


「去年くらいになるのかな。死んだんだこの村で」


「どういうことだよ」


「転移者は二人セットで転移してくる。

その方が生存確率が高いからって理由なのかもな。

俺の場合は妹と一緒だった。

俺と妹は森を抜けて泥まみれでこの村についてすぐに保護された。

それから俺が村の生活に慣れる頃に妹はこの村の男と恋に落ちてその男の子を身ごもった。

毎年子どもが生まれてさ。

この歳で8人の子どもの伯父さんだぜ?笑っちゃうだろ?


でもさ、本当は違った。

誰の子かも分からない子を身ごもっていたんだ。

ここまで言えば二人はもう分かるんだろ?」


「すまん。つらい話をさせた」


そう言ったハルキの表情が怒りに燃えていた。


「いいんだ、この話をするのも最初で最後だから」


カインはそれからこんな話をした。

この村は百年ほど前にこの地に定住し始めた人間が始祖で、元々その人間たちはここからずっと遠くにある王国の一貴族だった。

王国での政争に敗れた彼らは王国から遥か彼方、転移者が現れるとされる山の麓に家臣団と村を作り、山から下りてきた転移者を村に引き入れ、その力と血を一族の中に取り込んで力をつけていた。

男の転移者には村の美女を世話役として傍につけ、子種を受ける。女は村の男たちの子を強制的に孕ませて子を産ませ続ける。

そうやってこの村は百年近く栄えてきた。

憎き王国への復讐を夢に見ながら。


「それがこの村の正体か?」


「ああ、そうだ」


「なんでこの話をこのタイミングで俺たちに?」


「おお、分かってるね~。

この村に流れ着いた転移者は最初の山のことをチュートリアルの山って呼んでるんだ。

みんなが体験したあの場所での出来事を総合すると、あの山の中にいる間転移者は死なない。

転移者以外の生物が立ち入ることもできない。

だから二人はあの山に戻れ。

戻って力をつけて王国へ逃げろ。

そう伝えたかったんだ」


「カインは?」


カインは自嘲気味に「手遅れなんだ」そう答えた。


「カインも行こう。

いや、転移者全員で行こう!」


ハルキはカインの顔を見上げてそう言った。


「転移者は全員二人セットだって言っただろ?

みんな一緒に転移してきた身内とか彼女とか奥さんとか、人質に取られてるんだ。

それに…」


カインが力なく笑って自らの背中をはだけさせた。

そこには焼印があった。


「これのせいで俺たちは村長の言うことにほとんど逆らえない。

奴隷印なんだ。

ほら、フィクション作品によくあるだろ?

この印をつけられたら主人の言うことにほとんど逆らえないし、主人から一定以上離れると死ぬような苦しみが襲ってくる。

あとは自死が禁止されてる。

だから俺たちはどこへも行けないんだ」


「カイン」


「ん?」


カインを呼んだハルキが次の言葉を紡ぐことはなかった。

感情を噛み殺すので精一杯なのだろう。

代わりに俺がカインに言う。


「必ず助けに戻って来るからな」


「ありがとう。でも、そうだな。できることならこの村ごと全部なかったことにして欲しいな」


「わかったよ。本能寺もびっくりな焼き討ちでこの村の歴史を終わりにしてやるよ」


「あはは。ケンならやりかねないね。細かいことは分からねえ!って」


ひとしきり笑ってカインが俺たちに向き直る。

きっとこれが別れの挨拶になるだろう。

三人で抱擁を交わそうとした。


ゴボッ。

液体が重く地面に叩きつけられた。

月明りだけでは何が起きたのかはっきり分からない。


「ハルキ!」


「ケン!!カインが!!!」


カインの腹が破裂してはらわたが地面に飛び出していた。

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