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第一章第三部 アンデッドのゲロアラームと男の子ソード

翌朝、昨晩飲みすぎた俺が気持ち悪くなってその辺に吐いていたら彼が起きた。


「ゲロアラーム。スヌーズを切れ」


「今は何人も話しかけることはできぬ。ゲロで時を刻んでおる」


はっきり言って二日酔いだった。

異世界転生ものは二日酔いになって吐いたりしないと思っていたのに吐いている。最高に気分が悪い。


「異世界でアンデッドを召喚できるようになったらしい」


「まじで待って」


それからもしばらく吐き続けた。



全てを失った俺と彼が小屋から出ると、アルとリルが出迎えてくれた。

二人は上等な着物を着ているが少し、なんというか昨日よりもセクシーだった。

二人とも異世界転生前ならばそうそう声をかけることができないほどの美形なので、二日目にしてその美貌に酔いそうだった。

それにしても昨日あれだけ鼻の下を伸ばしていた我々の前にこのような恰好で現れるとは。


「これは儀式のための恰好ですから悪しからず」


リルにぴしゃりと心を削られた。

それからアルたちの案内で村の中央通りを抜けていく。

体感では小屋から2キロほど進んだ先で大きな神殿のような神社のような建物に出くわした。

デザインは洋風。

配置は神社。

手水なんかもある。


龍をモチーフとした鬼瓦や龍が持つ玉の意匠が日本に似ている。

更に木造建築のため、余計に和風な印象を受ける。

戦前の学校といった方が近いかもしれなかった。



「こちらで名受けをします」


アルがそう言って建物の中へと我々を案内する。


「どうもこの度は」


そう言って神殿の奥から初老の女性が現れた。

年齢は40歳くらいでこれもまた非常に美人だった。


それからお賽銭箱のような箱の近くに案内されて儀式が執り行われた。

とてつもなく長い儀式で6時間はかかったのではないだろうか。

その間俺たちは藁の上に正座をして耐えていた。


神官らしき女性が何かに祈りを捧げ続けて数時間が経過した頃、これまでとは色合いが変わって今度はその何かに許しを乞うている。

神なのか、なんなのか、こんな発展途上の村には似つかわしくないほどに真剣で鬼気迫るものだが、ほとんどの時間その尻を眺めていたせいであまりよく内容が分からなかった。

それから間もなく。


「汝に名を授けん」


決め台詞のように神官らしき女性が言う。

辺りは静まりかえった。

空気が凍るのを感じた。

波動のような衝撃のような何かが上から降り注いだ。

そうはいってもなんの打ち合わせもなかった俺たちはここでどうしていいのか正直分からなかった。


「汝の名はハルキ…汝の名はケン」


ただそれだけ告げられた。

どっちがどっちなんだろう。


「ケンさんとお呼びします」


リルにそう話しかけられた。

つまりそういうことなのだろう。

同様に彼もハルキと呼ばれていた。



儀式を終えて神殿のような神社をあとにすると、道中でハルキがこんな事を言い出した。


「アルさん、風呂ってある?」


ハルキはまだ風呂への未練を捨てきれないままだったらしい。


「ありますよ。大衆浴場ですが」


ハルキは歓喜していた。

俺は冷めた態度のまま尋ねた。


「そこにタオルと着替えはありますか?」


「あります」


今度はリルが答えた。

風呂と聞いては行かねばならぬ。

俺には難しいことは分からぬ。

だが、かの大衆浴場に入らねばならぬ。

強く決心をした。




風呂とは我々が思う以上に重要なもので、心と体を休める最適な場所である。

心も体も裸になる場所だからだ。


「アルさん。なぜ一度男女分かれて別室を通過したのに浴室は男女で同じなんですか」


ハルキが聞いた。

なぜ同じなんですか。俺もそう思った。


「元々の世界では男女が違う浴室に入る文化だったのですか?」


はいそうです。

こんな暴力は聞いていません。


「そうでしたし、湯船に服を着たまま入るとは聞いていなかったです。着替える場所というかさっき通過した部屋は靴脱ぎ場でしたよね」


「帽子や濡れては困るものも置いて来るんですよ」


いらぬ説明だった。

なぜそこだけ男女を分けたのか。

村長の趣味なのか。



それからお背中お流ししますとアルとリルが洗い場で我々の服を脱がすので非常に困った。

我々にできることは男の子ソードがシールドフォームのままでいることを祈るのみ。



風呂から上がって湯屋が用意した浴衣のようなものに着替えると濡れた服はそのまま湯屋に預けて帰路についた。

どうやら洗濯もここでついでにするものらしかった。

後日取りに来いと言われた。


こうして俺たちのこの村での生活が始まった。


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