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チュートリアル3

三話目です。


短めに切りました。

それからここまでのことを整理していった。

まずここは現実世界?ではなさそう。

腹が減らない、眠くならないのは魔法?のある世界だから?

異世界召喚されている?

しょんべんは魔法?

様々現状を鑑みたが、そんな些末なことはどうでもよかった。今は魔法で風呂を沸かすのが先決だった。



数十分後。

風呂釜もない、桶もない、鍋もない、沸かせない。そうした現実が我々の眼前に立ちはだかった。


「『ホットウォーター』」


と唱えてみるも、前に突き出した手の平辺りから冷たい水がチョロチョロ出るだけで終わった。


色々試行錯誤した結果、粘土質の大地が広がっていた地点で粘土を掘り、浴槽に見立ててそこにお湯を注ぐ。

お湯は片方が水出し担当、片方が炎担当ということで決まった。



いざ実行してみるのだが、浴槽になるはずの穴を掘るのが難儀だった。

近くにあった太めの木の枝で地面をえぐっていくのだが、なかなか掘り進まない。


「ショベルカー欲しい~...」


「欲しい~...」


そうして無事に風呂に入れたのは日が出てからであった。

しかも


「タオルのことまで考えてなかったー...」


「自然乾燥で湯冷め」


「髪が乾かぬ」


後始末が散々だった。



風呂作りが終わって体を乾かしたらそれまで着ていた服の水洗いもした。

やはり後始末が面倒で、『ウィンド』なんて唱えてみたが、そよ風程度だったので、天日で乾くのを待った。


二日目と三日目の境目もなく、けれども清潔感を手に入れた我々は、ある程度諦めと悲しみを引きずりながら居住空間を作ることにした。

正直なところはお互い口にはしなかったが、家に帰りたかった。


とはいえ、まずは快適な風呂。1にも2にも快適な風呂。

もう風呂が我々の生活の中心だった。

第一回の入浴はもちろん泥まみれで風呂から上がる羽目になり、湯冷め前提の入浴だったため、そこから改善していくことにした。


それから何日たったのだろう。

数えることすらやめてしまったが、風呂の小屋が完成した。


風呂の小屋は浴槽として作った穴を囲うように枝を地面に差し込み、テントのような形のドーム状に形成した。

ドームの枝の周りにはできるだけ粘土を練り込み、葉っぱを被せた。

焚き火をすることもあるので少しだけ穴を開けたりそれなりの工夫をしたものができあがったのだった。


その晩。


風呂に入りながらこれからのことを話し合った。


「あれからしょんべんは出ない」


「それはもうどうでもいいんだ。でもなんで汗はキラキラにならないんだ?」


「お前もじゃねえか。キラキラから離れろ」


「そもそも魔法が使えるのに俺たちの他に生き物がいないって色々無駄遣いじゃないか?」


「一里ある。原始人類として俺たちが子を成すわけか?」


「…これはやはり人里を探さないとだな」


そんなことを話しながら、今いる森を抜けて、今の風呂のある生活を捨てて、人里を探そうぜ。ということになった。

なんというか風呂小屋の制作はただの現実逃避だった。




もうここへ来てから何日目か、何ヵ月目か、何時なのかすら分からないまま、森を横断しようと汗まみれ、足の裏傷だらけで歩いていた。

途中で思い付いて草を足に巻いてみたが滑る。

こんなことならここに召喚される前だけでも靴を履いて寝たらよかったと、せめて靴下がほしいと嘆いた。



歩き続けて足の裏の皮が厚くなって痛みも引いた頃、俺たちはとうとう見つけてしまった。

虫がいた。

ここまで生物に全く出会わなかったが、昆虫、それもアリを見つけたのだった。

一匹や二匹じゃない。

ゆうに千を越えるアリの大群。

それと目が合った。

目があって、一秒、襲いかかってきた。

アリと目が合うなんて可笑しなことを言っているのは分かっている。

目が合ったのが分かるほど、奴らはでかいのだ。

1匹20センチはあるのではないか。

恐ろしすぎて打ち合わせもなしに我々は疾走した。


「死ぬ」


息切れしながら彼はそう言った。

確かに死ぬな。と俺も思った。

大量のアリが雪崩のようになってこちらに向かってくる。

訳も分からずアリを背に一直線に走り続ける。


「アリ...速すぎるだろ!!!!!」


右にも左にも視界の端に加速したアリたちが見える。

我々を取り囲むように位置取りしている。

追いたてられるように向かわされているのはそびえ立つ崖だった。


「無理だ...!逃げきれん...!」


「...魔法!...!」


俺が息も絶え絶えにそう言うと


「『ファイア』」


翻って唱えた。

彼はアリに火炎を向けた。

最初の時よりも気合が入っていたからか、弱火ではなくガスバーナーくらいの威力が出ていたと思う。

合わせるように俺も同じ動作をしてアリとの戦闘を始めた。

それからは壮絶だった。


四方から襲いくるアリに火炎をぶつけて互いに背中を守りながら、手の平を焦がしながらアリを殺し続ける。

千もいるアリはちょっとやそっとじゃ引いてくれない。

それでも炎に当たれば一気に焼けて死んでいく。

積み上がった死骸で熱が滞留して頬まで煤けてしまっている。

アリも炎の脅威を理解したのか迂闊に近づく個体が減っていく。


何時間も経ったのではないかという頃に香ばしい匂いと共にアリはかなりの数の犠牲を見て撤退していった。

知性があるような動き方だった。


それからしばらくしてアリの気配が完全になくなった頃。


「身体が怠い...眠い...」


ブラックアウトし始める視界。

急激な眠気。

背中にぶつかるもう一つの背中の感覚。

彼も同じなのだろう。

互いの身体が火傷しそうなほどに熱い。

酩酊しているような異常な感覚。


「駄目だ...もう無理だ」


そのまま抗いきれずに意識を手放してしまった。

読んでくださってありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします。

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