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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第92話 恋人にアルバムを見せることすら、忍びには叶わない

 雫に見つめられて、口は勝手に動いた。


「い、いえ、隠そうとしていたわけではなく、危険が迫っておりました。からくり屋敷も同然ゆえに、気軽にお手を触れぬようにお願いします、毒薬が塗られていました、柱には! ……こちらの準備不足です」

「そっか」


 雫の顔に表情らしい表情はなかった。笑顔でも、怒っている様子でもなく、平坦だった。

 胸が狭まった。この方だけには伝えるべきかもしれない。しかし、それでは師父さまとの取り決めに反してしまう。


 雫の目を見た。


「……里では、このようなことが頻発するかもしれません。困惑させてしまうことも、あるやもしれません……ですが、もし許されるのならば……」


 雫は言った。


「なにも聞かないでほしい?」


 リンは無言で頷いた。


 雫は、微笑を浮かべた。仰向けのまま、こちらを見つめていた。


「わかった、そうする。その代わり、見せられるものは見せてね、全部」

「全部……ですか、ではよろしければ秘伝書などの読み聞かせを」


 吹き出すように、雫は笑った。


「そういうんじゃなくてぇ、子供の頃のアルバムとか見たいな」


 アルバム、写真、雫が見たいのは、そういうものか。

 当然ながら、見せられる類いのものではない。


 だが、それ以前に。


「そういったものは、残されておりません。忍びゆえ、記録には敏感なのです」


 雫の笑みが、消えた。へなりと眉が萎れた。


「それは、嘘じゃなさそう。じゃあ練習着とかでいいよ」

「練習着ですか、その手の物品なら残されているかもしれませんが……なにゆえ」

「持ち帰る。代わりに、裸エプロンの写真とか残していこうねえ」


 雫は真顔でそんなこと言った。


「あれだけは、ご勘弁を。里の者に見られてしまえば、正気ではいられなくなります」

「でも、なにかは残そうよ。アルバムがないなら、一緒に作りたい」


 どくんっと胸が跳ねた。こんなこと、誰にも言われたことがない。

 記録は消せと、そればかり。


「雫……」


 見つめ合う。無言になる。心臓だけが、音を鳴らしている。


 もう少し、顔を近づけてみようか。胸を重ねてもいいかもしれない、足を絡めてみても、多少重くても、きっと雫なら――「ヘイっ!」


 ガララっと勢いよく襖が開いた。見ると、股を広げてアリスが立っていた。


「ウェルカムパーティーを開いてくれるそうです、お二人も早く――ア」


 アリスの顔から、軽薄な笑顔が消えた。一瞬沈黙して、顔を逸らした。


「あ、あとで呼びに来ますね、お邪魔してごめんなさいっ」


「ま――」待てという暇もなく、アリスは走り去っていった。


 悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。


『まひるぅ、二人はもう始めちゃってたですぅ』

『は? なんのことです』

『パーリィです……お邪魔しちゃいました』

『はぁ?』


 声が聞こえなくなってから、雫に向き直った。


「や、奴らの存在を忘れていました……またおかしな誤解をされてしまったのかもしれません」


 雫は笑顔に戻っていた。


「んふっ、誤解じゃないからいいんじゃない」

「しずっ――――んっ」


 腕を伸ばしてきて、抱きしめられた。背中を引き寄せられて、胸が密着した。

 雫の細腕に、すっぽりと収まってしまう。厚い布越しに、弾力と熱とが伝わってきた。


 足音が戻ってくるまで、その体勢のままでいた。

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