表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/134

第91話 部屋は地雷原にも等しい

 振り向いたリンは、襖の前で両腕を広げた。


「部屋を片付けて参ります、少々お待ちください」

「いいよ、気にしないから。はいガラガラー」


 雫は脇の下に手を差し込んできて、襖を開けてしまった。そのままリンのガードをくぐり抜けて、部屋へと入ろうとしていた。


「お、お待ちください、いくら恋人といえここは元私室、その態度は横暴が――」

「でも、リンちゃんだって土足で人の部屋入ってきたじゃん」

「ぬぐっ」


 足のバランスが崩れて、ややのけぞった。気にしていたのか、初めて襲撃から守った日のことを。

 確かに入った、無断で入った、しかも窓から。


 喉を鳴らしていると、雫がこちらを見上げてきた。両手で目を覆うような仕草をして、すぐに解いた。


「なんてね、どうしても嫌なら待つよ。でもぉ、わたしはそのまんまが見たいなぁ、ダメ?」


 上目遣いの視線に見つめられる。目を合わせるだけで、頭の輪郭が溶けていく。

 なにか甘ったるい物が染み出してくる、脳幹から。


「い……いえ、特別、物も多くないですし……どうしてもというのなら、雫にだけは……許可を……」

「わーい、やった」


 襖を引いて、今度こそ雫は部屋に踏み込んだ。

 大丈夫、写真などは飾っていない、即座に露呈はしない。少々、男臭いだけだ。



 背中を追って、その和室へと入った。雫は足を止めて、部屋を見回していた。


 雫の視線を追いかける。部屋の中央に置かれた背の低い文机、硯、使い古された筆、まっさらな和紙の束、おかしなものはなにもない。

 床の間を見る。鯉の描かれた掛け軸、刀、鎖鎌、クナイ、普通だ、こちらも平気。


 雫は、部屋の隅に置かれたいくらかの瓶を指さした。


「あれなに? お酒?」

「毒草を調合した、特製ブレンドです。常人ならば指先に触れるだけで、死に至ります」

「へえ、パーティとかするとき注意だね、雫ちゃんは平気だけど」

「宴会はしないので……」


 次に雫は、瓶とは反対側の隅に積まれている緑のスチールケースを見た。


「あれは? 爆弾?」

「弾薬、まきびし、及び煙玉などです。室内では火気厳禁でお願いします」


「じゃ、こっちは?」


 雫は柱の根元を指さした。ピンク色のクレヨンで、人やら、文字やらが描かれていた。


「春の落書きです……こんなものまでそのままとは」

「わ、かわいー、あ、なんか書いてある」


 たたっと足音を立てて、雫は柱へと近寄っていった。子供の身長くらいまでかがんで、絵と文字に顔を近づけた。


 ――文字だと。


 リンの背筋が跳ねた。魔力を巡らせ、視力と集中力を高めた。落書きを読んだ。書かれていた。『春と兄さま』。クナイを手に出現させて、振りかぶった。


「雫っ、危ない!」

「え? ――きゃっ」


 雫に飛びついて、痛くないように組み伏せた。

 着物のせいで足がもつれて、自分も転んだ。が、クナイで落書きを切りつけた。横一線、兄さまと書かれた部分だけを削り取った。


「ふぅ、危ないところだった……ぁ、も、申し訳ありません」


 雫に覆い被さるようになっていた。ミドルショートの黒髪が、畳に広がっていた。


「もう、抱きしめたいなら言ってくれればいいのに」

「次は……そうさせてもらいます」


 両手で自分の頬を挟んで、雫はちょこちょこ頭を揺らした。


 よかった、疑われていない。ふぅっとバレないように息を吐いた。

 身体をどかそうとしたところで、雫は言った。


「でぇ、なにを隠そうとしたの?」


 雫の目は、笑っていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ