表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
五章 忍び妹は兄姉さまを取られたくない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/82

第63話 めいたんはドギツイのを穿いているらしい

 2つになった杖を右手と左手にそれぞれ持って、めいたんは膝をついた。

 この世の終わりのような暗い顔をして、両手を震えさせていた。


「折れるとかありえないし、てか折れるんだこれ、折れるんだ……グラフェン複合強化素材……折れるんだ……」


 ぶつぶつ、ぶつぶつ、独り言をつぶやいている。戦いの最中にうなだれるとは、完全に芯が折れている。


 この隙に殺してしまおう。


 短刀・黒き翼を構えて、めいたんに近づいた。刃を下に向け、頭蓋の中心を狙う。

 腕を引き一思いに――


「ちょっと待って」


「む」


 リンは耳の横に手をおいたまま、動きを止めた。

 足元から侵食してくるような腐った声で、めいたんはぼやぼやと喋りかけてきた。


「それ違うから、それはやめてね、魔法少女じゃないから。奇跡の復活するから、それまで突っ立ってるのが礼儀でしょ」


 なにを言っているのだ、この気狂いは。やはり外見だけではなく、中身も狂ってるらしい。しかし、不意打ちにならんとは、どこまでも読めぬ奴。


「頭を垂れる者と、頭上を取る者、大勢は決した。それでもまだ続けると申すか」


 手元を見つめたまま、めいたんは口を動かした。かすれる声が、僅かに聞き取れた。


「当たり前でしょ、正義の魔法少女は負けられないんだから、こんなところでやられるわけにはいかないんだから、ステッキなんか無くったって、魔法が弱体化したって、絶対――」


 最後の言葉だけが、力強かった。めいたんの後頭部が発光する。雪玉のような球体が浮かび上がって、めまいがするような閃光を放ち始めた。

 すぅっと息を吸う音が聞こえた。頭を一度下げて、弾みをつけるようにめいたんは顔を上げた。


「お、わ、れないんだからあああああああ」


 めいたんが立ち上がると、爆発的に光が弾けた。リンはとっさに腕を交差させて、防御の構えを取った。

 しかしそれに熱も魔法的な威力もなく、めいたんは上空へと飛び上がった。


「目眩ましかっ」


 折れた杖をバトンのように回して、めいたんは腕を大きく広げる構えを取った。こちらを見下ろして声を張り上げた。


「めいたんはね、逆境から蘇ったの。キラキラを集めて、大々復活、応援ありがとみんなっ。頑張るからね、絶対あんなやつに負けないからっ」


 目に、涙を溜めている。赤くした鼻を、何度もすすっている。上空二メートルほどに浮かんでいるめいたんは、ぐしゃぐしゃに顔を歪めていた。


 リンは軽くのけぞった。身体を斜めにして、めいたんを見つめた。


 どこかで落としたのか靴が片方脱げている。両サイドで結んだ髪が、これも片側ほどけている。火薬玉の影響で、衣服はすすだらけ、むき出しの両足も黒くなっている。

 顎からはぽたぽたと血がたれていて、目は完全にイカれてしまったかのように見開かれている。もちろん杖は真っ二つに折れていて、魔力らしきものは感じられないし、視認も出来ない。

 よく見れば、墜落寸前のヘリのように飛行も不安定だ。


「街の平和は、めいたんが守るっ」


 だというのに、なぜ笑っているんだあの女は。


 リンはつばを飲み込んだ。身震いがした。不気味だ、なにを隠しているんだ、奴は。ここは毒を使うか。吹き矢で神経毒を流し込めば、いくら魔法少女とて


 ――塀の向こうから、カシャッとシャッターが切られる音が聞こえた。

 それもひとつやふたつではない。数え切れないほど、大量に。


「おいおいおい、マジじゃん、人飛んでんよー」

「うわなにあれぇ、ぼろぼろ、だっさぁ」

「すっごい、動画撮影にお金かけすぎじゃん。どこのチャンネルなんだろ」


 無数の足音、群衆の声、閑静な住宅街に人が溢れている、ようだった。こちらからでは見えないが、その数50はくだらないだろうという圧がある。

 めいたんは呆気にとられたような顔で、路地を見ていた。目と口が、忙しなく開いたり、閉じたりしている。


 リンは言った。


「これが貴様の言うみんなか」


 めいたんは、こちらに向き直った。呆けたまま、首を左右に振っていた。


「ち、ちがうちが、知らない、しらなっ、めいたん秘密だもん」


 群衆の中から、ひときわ大きな女の声がした。


「うっわ、おぱんつ丸見えっ。やばっドギツ、魔法少女なのにえっぐいの穿いてるよー!」


 男の歓声が上がった。


「まじ?」

「え、でもあの子何歳、アウトじゃね?」

「さすがに未成年じゃないっしょ」


 カシャ、カシャとシャッター音が、いくつも連なった。フラッシュが焚かれて、めいたんのパニエが明滅した。


「え、ちが、やっ」


 めいたんは慌てて股を押さえた。視線が下に動いて、自分が靴を履いていないことにも気づいたようだった。それから髪を触って、最後に胸のあたりをさすった。


「や、あ、見ないでぇ。ていうかめいたんドギツイのなんて穿いてないしー!」


 身体の至る所を覆い隠そうとしているが、間に合っていない。


「人の注目を集めたいのではなかったのか……まあいい」


 リンは吹き矢を生成した。上衣をまさぐって、毒針の包みを探した。見つからない、戦闘中に位置がズレたかもしれぬ。

 探していると、めいたんが嬌声のような、叫び声を上げた。


「もう無理ぃ、やーだぁ、勝負はお預けー!」


 するすると高度を上げて、めいたんはどこかに飛び立っていった。

 流星のような速度で、目で追うのがやっとだった。


 先ほどぱんつ発言をしたのと同じ女が叫んだ。


「逃げたぞー! 追え追えっ、みんなであいつを捕まえちゃえー!」


 また歓声が上がって、足音が大移動していった。


「賞金だー」

「スクープだー」


 それぞれ思い思いの叫び声を上げながら。


 飛び去るめいたんを見つめながら、胸のあたりを探していたリンの手が、止まった。


「あった」


 それと同時に、塀から女が顔を出した。髪を片側に結っている、見覚えのある女。今の自分と同じ顔をしている女。

 春だ。


「よかったぁ、姉さま無事だったぁ」


 深く息を吐いて、干される布団のように春は塀に突っ伏した。

 春は右手にスマートホンを手にしていて、動画配信サイトの画面が映っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ