表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
五章 忍び妹は兄姉さまを取られたくない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/84

第58話 雫は、某を赤ん坊と勘違いしている

「はーい、お手々上げてー、ばんざーい」


 雫に指の先端を摘まれる。それを頭上まで上げさせられて、脇の下がピンと伸び切った。

 ゴザに放り投げられたパジャマ、今まさに脱がされようとしているインナー。朝の雫は肌に触れて、脇腹に触れて、首周りにも触れてくる。

 シャツがめくられて、腹が露出する。するする、するすると脱がされていく。


「お、お待ちください、この先は自分で処理できますゆえ……身体も昨日よりは気だるくはありませぬ……」


 身をよじっても雫の手は止まらない。出っ張りに布が引っかかって、速度が落ちたところで、リンは腕をおろした。


「じっとして、もう少しだよ」


「こ、これ以上は、朝から激しすぎます……それに……」


「それにぃ?」


 雫は首をかしげた。ぱち、ぱち、とまばたきをしていて、表情は平静のままだ。

 リンはちらっと部屋の隅を見た。布団を一枚だけ片付けてる春がいた。聞かれている、すべて聞かれている、朝のやり取りを。

 蕁麻疹でも起きたように胸のあたりがかゆくなった。


「妹が見ています……ですから……ご配慮を願います……」


 雫は言った。あっけらかんとしていて、様子はちっとも変わらなかった。


「なんで? 口にしてくれなきゃわかんないなあ」


「なんでも……なにも……」


 勝手に足が動いた。股が忙しなく動いて、太ももがこすれあった。


 にぃと雫の口元が歪んだ。ぴったり口を閉じて、小刻みに頭を振っていた。


「そ……その……二人っきりならいざしらず……気が散ります……妙な気持ちになります……」


「ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよぉ。まいっか、これ脱ぎ脱ぎしたら次は下着だからね、んふふ」


「で、ですからっ」


「リンちゃん」


 雫の口が、耳元にやってきた。ふわぁと息を吹きかけられて、耳の穴からしびれが広がった。


「言って。わかる言葉で言って」


 どくどく、心臓が暴れ出す。鼓動が弾んで、胸が割れそうになる。声にならない声が喉を振動させる。


「うぅ……」


 春の様子を窺う。背中を向けている。まだ。しかし、あの顔がこっちを向いたら、見られる。すべてを見られる。見られてしまう。

 それは、それは、それは――


 胸に手がいった。顔を伏せた。


 言った。


「その……ですから……恥ずかしい……です」


 一気に明度が上がるように、雫の顔に笑顔が広がった。胸の前で両手を合わせて、またまた頭を揺らしていた。


「忍の世界にも上下関係があります、い、妹といえど、威厳を保つ必要があるのです……ご理解ください」


「わはぁ、リンちゃんだぁ」


「し、雫ぅ」


 どばっと勢いよくシャツを脱がされる。腕を上げた下着丸出しの姿で、抱きつかれる。

 鎖骨のあたりに雫は頬をこすりつけてくる。んぅ、だとか、くふぅ、だとかおかしな声を漏らしている。


「お、おやめくだ――」


「兄姉さま」


 真横から、声がした。振り向くと、春がいた。


「は、春、違うんだ、常日頃からここまで堕落しているわけではない、雫が、雫のタガが外れて、今日は特におかしいだけなのだ」


 肩に手を置かれた。0が1になったように、春の表情が笑顔へと変わった。


「大丈夫だよ。威厳、もうないから」


 春は、空いた方の手で親指を立てた。


 声が出なかった。雫はまだ、胸と密着していた。壁掛けの時計などを見た。ああ、そろそろ出発せねばならんなあ、とリンは思った。


 春は言った。


「雫さん、洗濯物貰っちゃうね。あ、下着もお願い」


「おっけー、ちょっとじっとしててねぇ」


 ブラを外され、パンツを脱がされた。


 全てが終わってしまって、雫と春は、脱いだ服を分担して抱えた。談笑などしながら、部屋を出ていこうとしていた。

 それを眺めていると、新しい下着とパジャマが飛んできた。春が、こちらを指さしていた。


「ぶりかえさないうちに服着ちゃって。朝ごはん出来てるから、向こうで待ってるね」


 言い残して、春は部屋を出ていった。雫も引き連れて。


 廊下から、賑やかな声が聞こえてきた。


「雫さんってばすごいねえ、姉さまのことあんなトロトロに出来る人いないよ」


「んふふ、コツがあるの、リンちゃんは。春ちゃんにも教えたげよっか」


「あはっ、まじですかぁ、知りたい知りたいっ」


「リンちゃんはぁ――」


 バラバラに聞こえる足音と声は、次第に遠ざかっていった。


 リンはつぶやいた。


「か、敵わぬ」


 服を抱えて、リンは立ち尽くした。手荒すぎる、この少女たちは。


 しかし、しかしだ、飲まれてはならぬ。威厳を保とう、威厳を。惑わされるな、妹にも、恋人にも。

 丹田を引き締め、深くゆっくりと息を吐いた。



 着替えてから居間に向かうと、春は制服を着ていた。白米の盛られた茶碗を手にしたまま、駆け寄ってきた。


「今日も、春が代役任されるから」


「完調とは言わぬが、登校する程度ならば支障はない。代役は」


 春は、一歩分近づいてきた。


「必要でしょ、まだ。今日一日、今日一日だけ大人しくしてて、いいでしょ」


 視線が重なる。逆光を受ける春の顔は、やや影になっていた。

 しかし顔は引き締まっていて、目はハッキリと開いていた。


「騒いでいたかと思えば、途端に真面目になる。姉でありながら、真意は掴みかねるな」


 春の視線が、逸れた。


「姉さまには、万全でいてもらいたいから、無茶させられないよ。それに、それにね、春の方もこうなった以上、雫さんともっとコミュニケーションが必要だと思うから、いい機会なんだよ」


「そうか。ならば、あと一日程度なら、お前に委ねるのもやぶさかではないな」


「ほんとっ。じゃあ、任されるよ。よかった、姉さまが素直で」


 春は、沈み気味だった顔を上げた。揺れる瞳を、リンは見つめた。


「その代わり、命に代えても雫を守護しろ。昨日と同じように、決して気を緩めるな」


「うん、わかってる。それは絶対条件だよね。じゃ、朝ごはんにしようよ」


「ああ」


 手を引っ張られる。日の当たる場所を歩いて、雫の待つテーブルへと向かった。

 春の表情は明るい。いつも明るいが、今日は太陽にも勝る。


 リンは、聞いた。


「そういえば、報告をまだ聞いていなかったな。学校はどのような場所だった?」


 春は振り向いた。一瞬気の抜けたような顔になって、すぐに笑顔に戻った。


「えっと、うん、そうだなあ、姉さまの学校やばすぎる。死ぬかと思うし、重すぎるし、雫さん春のこと試してるし。なんか怪しい気配いっぱいあるし」


「ふっ、ようやく某の苦労がわかったか」


 くすりと笑って、春は正面に向き直った。


「ね、あんなとこ春には向いてないなーって思った。順応してる姉さまはすごい」


 やや間をおいてから「ほんと、すごいよね」と春は繰り返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ