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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
五章 忍び妹は兄姉さまを取られたくない

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第54話 妹の前で雫が脱ぎ始めた

 学校はもうすぐ昼休みだろうか、とリンは思った。


 床に敷いた布団。重苦しい、二重の掛け布団。枕元には、春から送られてくるリアルタイムの映像が流れる7インチのモニターが置かれている。

 見ると、午前の授業が終わって、雫を昼食に誘っているところだった。アリスたちはどうするかと聞かれて、春は『二人っきりがいい』と答えていた。


 鼻をすする。身体を回転させて、モニターに顔を向ける。二人は階段を登って、屋上に出ようとしていた。南京錠を、春はあっさりと解錠していた。

 ぼやあとした頭で、その様子を眺める。今のところ問題は起きていない。屋上という選択も悪くない。部外者は訪れない、不審者がいればすぐにわかる。いいぞ、そのまま凌いでくれ。


 春はハンカチを敷いて、そこに雫を座らせた。自分もすぐ隣に、腰を下ろしていた。

 曲げた膝に手を乗せて、空を見ながら春は言った。


『ときに雫、昼食の前にひとつお話があるのですが、よろしいでしょうか』


『えぇ、なにかなあ。二人っきりじゃないといけないお話?』


 春の視線は雫に向いて、またすぐに元の位置へと戻った。落ち着きがなく、映像が安定しない。


『縁と絆について、考えていました。固く結ばれたものは、ほどけることはないのかと、疑問に思っています』


『なにそれ、急に真面目だね。それとも、雫ちゃんと別れたくなっちゃった?』


 春は慌てたように雫を向いた。


『滅相もございません。決してそのようなことはありませぬ。しかし、なにゆえ我らは隣り合っているのかと、そのようなことを思います。利害の一致と、愛や恋は同じものであるのか、異なるのか、某にはようわかりませぬ』


 雫は首を傾げた。リンも首を傾げた。

 なにを言っているんだ、うちの妹は。よもや自分の口から出ているのではないか――喉に手を当ててみるが、もちろんそんなことはない。春だ、画面の向こうで春がそれを口にしている。


 胸に手のひらを当てて、春は雫に詰め寄った。


『あなたは某を愛していますか、それとも、某を愛する自分を愛していますか』


 口調が荒くなって、春の地声に戻りかけていた。

 対面する雫は、困惑するでもなく、いつも通りの穏やかさでいた。


『わたしが危ない人なんじゃないかって疑ってる、ぽい?』


『いえ、ただ恋人としての立ち位置を再確認したく存じます。愛し合う二人が実在するものであれば、心の壁は取り払っておくべきかと』


 雫は、頬をほころばせた。


『嘘ばっかり。回りくどい言い方をするけど、本当はただ知りたいだけなんでしょ。いいよ遠慮しないで、それこそ心に壁なんて作らないで』


 なんだこれは、本当になんだこれは。幻覚を見ているのか、夢か、いや現実、だとしたら介入するべきか、春の真意はなんだ。それ以前に、雫はどこまで気づいておられるのだ。

 あの口ぶり、あの態度、あるいは変装などとっくに――


『身体検査する? 脱ごっか』


 雫は胸を突き出すように両腕を広げた。自分の方から春に顔と身体を寄せた。

 まるで無防備で、胸元のリボンをほどこうとしていた。


『触る? おっぱい。そしたらちゃんと人間だってわかるんじゃないかな』


 春は一瞬のけぞりかけて、しかしまた雫に顔を寄せた。


『さ、触りません。色でも肉でもなく、心の在りようを問うているのです。客観的に洞察すれば、やはりあなたが得体のしれない某を心から愛しているのかどうか、疑問が残りまするゆえ』


『えー、んふふ、だからぁ、そんなの言葉じゃわかんないよ』


 閉じた唇を開いて、雫はちゅぱという音を出した。


『キス、しよ。それだけで全部わかっちゃう、リンちゃんのことも、わたしのことも』


『し、しません。どうしてあなたはそうなのですか、もう少し理性を大切にしてください。破廉恥です、それだから言いたくもなるのです』


 唾が飛ぶような勢いで、春は喋っていた。それでも雫の表情は揺るがない。落ち着いていて、笑顔は絶やさず、どこか余裕を残している。


『いらないよ、そんなの』


 雫は腕を伸ばして、春の二の腕を捕まえた。モニターに顔が迫る。映像が暗くなっていく。近い、あと少し、唇が目の前にある。


『やめ……やめてください、やめっ……』


 だらだらと汗が垂れてくる。熱い身体がもっと熱い。こっちの息が荒くなる。雫、待て、やめろ、なにをしようとしている。冗談はそこまでにしろ、それは違う。それは春だ、わかっているのだろう、「雫っ!」


 画面に思いっきり顔を近づけた。両手で枠を掴んで揺すった。完全に暗くなって、動きがなくなった。もそもそと擦れるような音だけが聞こえていた。

 やがて『きゃっ』という春の地声が響いてきた。カメラは空を向いて、雫がこちらを見下ろしていた。


 雫は言う。


『ね、わかったでしょ』


『わ、わかりません、ちっとも、全然っ』


 カメラが左右に揺れた。待て、なんだその反応は、したのか、してないのか、はっきりしろ。


「春っ、なにがあった、春ぅ!」


 返事がない。あいつ、音量を絞っている。

 雫の指がすっと伸びてくる。どこか触られているのか、春はくすぐったそうな声を出した。


『ん……んぅ、触らないでください……』


『ああやっぱりぃ、ほっぺの感触全然違う。にしても凄いねえ、リンちゃんにしか見えないもん』


『なっ、気づいて……いつから』


 溶けるように雫は笑った。


『玄関出たときから。雰囲気、かな、ぜんぜん違うもん』


『そんな、一般人に見破られるなんて……ぁう……』


 映像が縦に動いて、ぼすっと重い音がした。


 雫はきょろきょろと顔を動かして、一点で止まった。モニター――春の頭部に隠してあるカメラと視線が重なった。

 唇が近づいてきて、雫はささやくように言った。


『だいじょうぶ、わたしはリンちゃんだけのものだから、安心してね』


 ちゅっ、という短い音が聞こえてきた。

 くらくらと脳内が揺れた。全身に熱が飽和して、布団に倒れ込んでしまった。

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― 新着の感想 ―
リンちゃんの体温がもっと上がっちゃう...!
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