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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
四章 黒いのは忍び装束だけにあらず

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第42話 だらだらも任務ゆえ無問題なり

 雫に申し付けられた通り、帰宅後はソファーに向かった。


 クッション面に顔を埋めた。鼻が痛い。息がしづらい。

 ふしゅー、ふしゅーと息が漏れる。口周りが湿ってくる。


 これは違う、いくらなんでも。


 身体を半回転させて、仰向けになった。腹に手を置いて、天井を眺める。白い。真っ白というわけではないが、白に分類されることには違いない。


「ふむ……にゃん」


 首周りがこってくる。ソファーの幅では、腕が窮屈だ。足ははみ出ていない、女子の短さゆえか。


 天井を眺める。眺める。カチカチと時計の音が繰り返し聞こえる。

 ソファーの裏で春が雫をモニターしている……機器の作動音と、時折あくびも聞こえる。


「春、春、いるか……にゃん」


「んー」


 と、なにか咥えているようなくぐもった返事が返ってきた。軽い足音を立てて、春は正面へと回り込んできた。


 ヘッドホンをして、口でピザの切れ端を頬張っていた。左手にコーラの赤い缶まで握っていた。


「ふぁに?」


 ノースリーブのシャツに、ショートパンツ……本当にこの妹はくノ一なのだろうか。


 天井を眺めたまま言った。


「そろそろだらだらを終了しても、雫に叱責されないだろうかにゃん」


「えーと、あと三時間くらいしておいたほうがいいんじゃない?」


「なっ――」


 思わず春の方を見そうになって、すぐに顔を元の位置に戻した。


「危ない……しかし、そんなにか。なぜだ、根拠はあるのか……にゃん」


「ないけど。でも、なんとなくサボってたらそんくらいになっちゃうでしょ」


「ならんぞ。むしろ余計に消耗する。この体勢を維持するだけでも、いささか苦しいにゃん」


 春は半眼になって、舐め回すようにこちらを見た。


「それ誰に吹き込まれたの? また雫さんにからかわれた?」


「いや……不意に起き上がってしまえば約束を違えてしまうのではないかと……にゃん」


 吐き出すような調子で、春はゲップを出した。


「ふへへ、真面目なのかボケてるのかわかんなーい。そういうんじゃなくてさー、あ、ちょっと待ってて」


 忙しなく春は台所へ駆けていって、慌ただしく戻ってきた。赤い缶とスナック菓子の袋を投げ渡された。

 それらを両手で受け取ると、胸にもう一つ――スマートホンが飛んできた。

 ばいんっと弾けて、ヘソのあたりまでスマホは滑り落ちた。


「もっと足崩して、手も。せっかく雫さんがくれた時間なんだからさぁ、有意義に使おうよ、もったいないじゃん」


「有意義とは正反対の行為だと、思うのだが――な、待てっ」


「待たない」


 両膝の側面に手を添えられる。ぴとっと冷たい感触がして、一瞬肌が震えた。そのまま足を持ち上げられて、無理やり膝を三角にさせられた。

 それからシャツの第三ボタンまでを開けられた。前がはだけて、雫に借りた下着が露出した。


「なっ……なにを……するにゃん」


「にゃんにゃん言ってるくせになんでそう硬派なのさ。ギャップ萌えにしても兄姉さまはやりすぎだよ」


「事情は説明したはずだ……にゃん」


 春は声を上げて笑った。にんまりしながら、人差し指を向けてくる。


「りらっくすぅ、りらっくす、任務だって名目でサボれるんだよ、いつものぶん休んじゃおって。報告書にも書けるじゃん、護衛対象に懇願された結果ほにゃららってさ」


 春はヘソに落ちていたスマホを拾い上げた。指でつまんで、差し出してくる。


「お菓子食べて、ジュース飲んで、動画見て、寝落ちして、そこ目指そ。天井なんか眺めててもだらだらじゃないよ」


「なるほどそれが極意か……にゃん」


 春は顔を近寄せてきた。額に手を当ててきて、デコを露出させられた。


「せっかく普通に高校生やれてるんだからさ、兄姉さまはちゃんと楽しんでよ。ずっとお留守番の妹のぶんまでさ」


 笑顔を作って、春は「ね」と強調した。


「そうか、お前も……いや、そうだな、務めは果たそうにゃん」


 菓子の袋を脇において、スマホを受け取った。


 遠ざかった春は、手を広げてくるりと一回転した。


「動画見てさぁ、SNSいじってさぁ、推し活なんてしちゃってさぁ、堅物やってるよりそっちのほうがずっと馴染めるよ。そんなにかわいいんだからさ」


 タンっと軽く飛び跳ねて、春は足を揃えて着地した。


「では、春は仕事に戻りますので、頑張ってください兄姉さま、だらだら応援していますので」


 腰を折るように頭を下げてから、春はモニターへと戻っていった。


 足音が止まってから、リンはスマホを見つめた。黒髪の、控えめに言っても美少女が、ガラスに反射していた。容姿への評価は理解する、ただ、雫やアリスとはなにかが違う。

 雰囲気、だろうか。


「かわいい、か、にゃん」


 つぶやく顔は、笑顔とはまだ遠かった。


 息を吐く。肩の力を抜いてみる。スマホの電源を入れる。

 物は試し、言われたとおりに――手が止まった。


「春、春、来てくれにゃん、急ぎだ」


「はいはいはーい、どしたの? ダンスとか撮っちゃう?」


 両手で持って、スマホを顔から遠ざけた。春の方を見た。


「いや……」


「いや?」


「動画やSNSとはどうやって鑑賞したらいいのだ……にゃん」


 目をしばたいて、春は静止した。

 数秒経ってから、どどどっと笑い声が響き渡った。

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リンにゃん、かわいい
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