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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
三章 忍びには恋をさせろ

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第23話 銃器に食いつく女子高生は、比率にして33パーセントと判明した

 ビーチから徒歩1分、砂浜の目と鼻の先に目的地はあった。

 忍の里の合宿所――表向きには旅館――を見上げて、アリスが声をあげた。


「ヤー、お見事な宿場です。リンさんのお知り合いには頭があがりませんね」


「下げさせるつもりはなかったのだがな」


 ため息を吐いて、リンは受付へと向かった。



 声を掛けるやいなや、受付にいた主人は頭を下げてきた。

 何事かと尋ねると、主人は言った。


「実は、大浴場のメンテナンスにて、少々トラブルがありまして、本日は使用を中止させていただいております。明日には復旧する予定ですので、大変申し訳ありませんが、ご了承ください」


 リンの眉間にシワが寄った。


「なに……温泉が目当てだったのだが……」


 ちらと、背後で鷹の剥製などを見物している雫を見た。

 胸の確認が目的だというのに、出鼻をくじかれた。まさか部屋風呂に二人で入るわけにも……致し方ない、明日に賭けよう。


「本当に明日には復旧するのですか?」


「はい、それは間違いありません。朝一番からご利用いただけるかと」


「わかりました」と言って、リンは部屋の鍵を受け取った。


 なんとも間が悪い。雨こそ降らないが、明日は天気も芳しくない。気温も下がるというし……なにより、夕方までには発たなくてはならないので、時間的余裕もない。

 ぐっと鍵を握りしめた。いきなりのトラブル、これ以上なにも起きなければいいのだが。


 受付から離れて、雫たちに事情を説明した。越谷まひると雫は真っ当に残念がっていたが、アリスだけは「そーなのですねー」とそっけなく言って、ほっとしたように息を吐いていた。


 観察していると、軽く赤面しながら、アリスは胸の前で手を振った。


「そんなに見つめないでください、なんですか、恋ですか? 吊り橋効果にはまだなにも起きていないです」


「いや、貴様にしては妙な反応をするなと思ったものでな。まあいい、それぐらいのほうがやりやすい」


 リンは、雫に頭を下げた。


「申し訳ありません。このような事態は想定外でした、某の責任です」


「ううん、全然気にしてないよ。温泉だけが目的じゃないし、明日もあるしね」


 リンは顔を上げた。


「そのようにおっしゃっていただけると、気が楽になります。――それでは、このあとはどうしましょうか。この施設の目玉、あらゆる状況に対応した修練場を見学なさいますか?」


 リンは指折り数える。


「密林、湿地帯、砂漠、市街地など多様な環境はもちろん、様々な屋内環境にも対応しております。大きな声では言えませんが、世界各国のありとあらゆる銃器を、メジャーからマイナーどころまで余す所なく取り揃えています。もちろん、お望みであれば試射のご用意をさせていただきます、ぜひ申してください」


「へぇ」


「本来、一般開放厳禁とされている場所ではありますが、この度、特別に公開の許可が下りました。ぜひ、この機会にご体験を」


「うん、それはいいから、とりあえず荷物置こうよ。何階?」


 そう言って、雫は手元の鍵を覗き込んできた。


「わぁ、上の方だ、やった、海見えるかなぁ」


「高いところはハイテンションマックスですねー!」


「ねー」などとアリスとはしゃぎながら、雫はエレベーターへと向かっていった。


 リンは、しばし遠ざかる背中を眺めた。


 越谷まひるだけが残って、赤カーペットの上に突っ立っていた。なぜか前のめりになって、聞いてくる。


「さっきの話、本当ですか?」


「ああ、風呂は使えんらしい。残念だったな」


「いえ、そうじゃなくて、あの……試射とかって」


「ああ……」


 返事をして、一度見て、雫に視線を戻して、また越谷まひるを見た。


「……ん? 貴様、興味があるのか?」


 越谷まひるは、薄笑いしながら、小さく開いた指を見せてきた。


「ちょこっと……ちょっとだけ、東欧のメーカーで見たいライフルが……なんて、冗談です、冗談、はは」


 まじまじと、越谷まひるを見た。

 この女、また媚を売ってきてるのか、あるいは、こちらの戦力を測ろうとしているのか。いずれにせよ、自己主張してくるなど珍しい。


「すまぬが、先程の話はこちらも冗談だ、聞き流してくれ」


「ですよねー、あはは、だと思った」


 越谷まひるは、はぁ、と息を吐いて暗い顔になった。気が抜けたようにも見える。


 そうしていると、エレベーターの前で雫が手を上げた。


「なにしてるのー? 来ちゃうよー」


「は、はーい、今行きます」


 越谷まひるは、つんのめるようになって動き出した。早歩きで、足元がもつれかけて――


 もつれた。


「わっ、わわ」


 荷物の詰まったリュックを抱えているせいか、なかなか安定を取り戻せていなかった。

 いよいよこけそうになったところで、リンは越谷まひるの手を取った。


「なにをしている」


 さりげなく、手のひらの感触を確かめた。銃撃慣れのタコなどがあるかと疑ったが、そのようなことはなかった。魔法少女状態と、平常時はやはり別物か。


 体勢を立て直した越谷まひるは、ぐっとリンの手を握りしめていた。眼鏡のずれも直さず、上目遣いで見つめてくる。


「あ、ありがとう……ございます。あ、あの、なんで」


「なぜもない。雫の友人が倒れかけていた、手を貸すのは当然だ」


 越谷まひるはつぶやいた。


「あ……東山さんが中心なんですね、やっぱり」


「無論だ」


 いつまでも手を離そうとせず、越谷まひるは視線を左右に揺らしていた。


「あの東山さんのこと……いえ、なんでもないです、早く行きましょう」


「ん、ああ」


 勢いよく手を離した越谷まひるは、ショルダーストラップに手をかけて、小走りでエレベーターへと向かった。


 首をひねりながら、リンは後を追った。

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