表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS魔法少女になっても「某は忍び」と言い張る凄腕忍者、護衛対象の美少女にガチ恋されそうろう  作者:
三章 忍びには恋をさせろ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/18

第16話 防犯設備を自慢していたら、接吻を求められた

 リビングに通すと、雫は感嘆の声を出した。


「うわぁ、立派なお部屋。ここほんとに使ってないんだ、もったいなぁい」


「はい、こちらは偽装用の一室でして……早速見破られてしまいましたが……」


 リンは軽く俯いた。


「へへ~、わたしの目は誤魔化せないんだぞー」


 誇らしげに笑いながら、雫は大窓へと近づいた。


 暮れなずむ街を眺めて、また雫は声を上げた。


「わはぁ、綺麗な景色。いいなぁ、わたしもこんなところに住んでみたい」


「お望みであれば今日にでも、むしろこちらとしてもそのほうが助かります」


「同棲ってこと!? リンちゃん大胆だよぉ、でも……ちょっと迷っちゃうかも。パパママ、いいって言ってくれるかな」


 下唇に人差し指を当てながら、雫はさらに大窓へと近づいた。ガラスに手を伸ばしかけたところで、リンが間に割って入った。


「お待ちください。いささか面倒なことになるので、窓にはお手を触れぬようお願いします」


「ふぇ? 面倒って?」


 リンは頷いた。


「はい。防犯装置が反応し、プラスチック爆弾の信管が起爆、壁一面が吹き飛びます。さらには催涙ガスが噴出し、シャッターにより部屋は完全封鎖、手順を踏まなければ脱出不可能になります」


 雫は首をかしげた。


「どうしてそうなってるの? マゾ?」


「いいえ、安全のためです」


 リンは窓の外に目をやった。


「ベランダにも十分な防犯対策を施してあります。手すりと物干し竿には高圧電流、足元にはクレイモア地雷です」


「あ、それ知ってる、雫ちゃんじゃなかったら死んじゃうやつだよね? うっかりミス気をつけてね」


「はい、危険ではありますが、必要です。それだけではありません、さらにAI搭載の全自動12.7ミリ迎撃機銃を二門設置し、死角をゼロにしました」


「魔法少女と戦うにしてはミリタリー」


「敵の種類は無関係です。もちろん室内も手抜きはありません。対人火器を十分に備え、64の脱出経路を設定、あらゆる襲撃パターンを想定し、どんな状況にも対応可能となるように万全を期しました」


「へぇ、なんか早口だね」


 思わず笑みがこぼれる。雫に説明した防犯装置はほんの一部。単分子網戸や鍵穴粘着トラップなど素人が聞けば驚くような仕掛けがまだまだ大量に隠されている。

 我ながら、完璧な布陣だ。


「安全対策に抜かりはありません。ご興味とあらば、一つ一つ紹介いたしますが、どうしますか? ふふふ」


「うん、別にいいや」


 あっけらかんと言って、振り返った雫はソファーへと向かっていった。


 羽根を落とすように優しく座って、雫は真横の座面をぽんぽんと叩いた。


「リンちゃんもおいでよ、そんなとこにいると爆発して死んじゃうよ」


「は、承知しました。ではそちらで、じっくりと装備について解説させていただきます」


 リンもソファーに向かった。



 隣に腰を下ろすと、雫は「もっと寄ってよ」と言った。

「まだ」とか「まーだ」などと何度も叱責されて、最終的には二人の上腕と太ももがぴったりとくっついた。

 4人がけのソファーで余裕はあるのに、なぜだ。


 微妙に体重をかけられていて、素肌の感触が余計に伝わってくる。だいふくのようにやわく手触りの良い肌には、ぬるめの体温が宿っている。


 やはり、雫殿も人なのだ。自分とも、春とも、その他多くの人間となにも変わらない。

 肌は人のもので、体温を持ち、体内には骨と肉が隠されている。

 この親密な距離で、多くのことがわかる。ならば告白は正解だった、と思いたい。


 雫はリンの肩に頬を寄せ、目を閉じていた。


「リンちゃんあったかぁい」


 手首のあたりを、指で押された。


「肌、すべすべだね。クリームとか、なに使ってるの?」


「い、いえ、そのようなスキンケア製品は、特には。おそらく、エストロゲンの分泌による、生理的な要因によるものかと思われます、はい」


「ふぅん……いいなぁ……」


 雫は鼻をぴくぴくと動かした。


「いい匂い……シャンプーはどんなの?」


「い、妹に用意させているもので、詳しいことは、某にはわかりかねます。ご所望であれば、調査の上、後日お伝えさせていただきます、申し訳ありません」


 雫がリンから顔を離した。閉じかけていた目が、ぱちりと開いた。


「え、妹さんいるんだ。一緒に暮らしてるの?」


「あ、いや……」


 しまった、春のことは秘密だった。この口はなにを言っている、愚かな。だが、どうせこの方には秘密などあってないようなものではないか、仕方がない。


「……私生活の補助を任せております。が、妹について、特別お話することもないかと、雫殿には無関係ですので」


「お父さんは? お母さんは? 妹さんもやっぱり忍者の人なの? 名前は? 学校は?」


 雫はぐっと詰め寄ってきた。


「……どうか身内のことはご容赦を。そ、そんなことよりも、床下の隠し武器庫などについてお話しませんか?」


 雫は即答した。


「それはいいや。へぇ、へぇ、リンちゃんに妹さんかぁ。あ、じゃさ、今度は本当のお家にお邪魔していい?」


「な、なにゆえ、妹など会って楽しいものでもございませぬ。愚妹は礼儀を知らぬもので、きっと雫殿にも無礼を働き――」


「あー、雫殿って言ったぁ」


 ぷくぅと雫の口元が膨らんだ。


「ぁ、し、失礼を、まだ慣れぬもので……」


「やっぱり任務だったんだ、こっちはちゃんとリンちゃんのこと好きなんだけどなあ」


 胸元から、雫が見上げてくる。わずかに閉じた目が、どこかいじらしい。

 無言で見つめられる。栗色の瞳が揺れている。ピンク色の唇が、かすかに震えている。


 貧相な腹の筋肉が暴れ出す。呼吸に合わせて浮いて沈んで、落ち着かない。頭が窮屈になる。

 任務だ、これは任務だ、他者を欺いてこその忍び。真実など、どこにもありはしない。


「任務のことだけではありません。雫、あなたのことを個人的に愛してしまったのです」


「じゃあ……」


 雫の唇が、なめらかに動いた。


「キスしてほしい。リンちゃん風に言うなら、接吻、かな」


 ちょこんと二人の胸と胸が触れ合った。

 雫はぴったりとくっついて、垂れた目でリンを見つめていた。


 「ん」と艶めかしい声を出して、雫は目を瞑った。


 つややかな唇と、少し突き出された顎、それを見ているとリンの鼓動はどこまでも早くなった。

 血が上って、くらくら、くらくら、今にも倒れてしまいそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ