幕間4 姿見に映る裸体についての所感
雫の勧めで、日記という形式で己について省察するべく筆を取ったが、果たしてなにを書くべきなのか見えてこない。
はじめに、とでも挨拶を書けばいいのか、形式は省略していきなり本文から始めればいいのか、そもそも日記とはなにを書くものなのか。
散文なのか、論文なのか、レポートなのか、あるいは作文と称される類の文章なのか、人に見せることを前提とするのか、極めて私的な記録簿なのか、一種のタイムマシンなのか。
といったところで躓いてしまって、春に相談したところ自由に書けと教えられたものだから、このような書き出しに落ち着いた。しかし、それだけでは日記は成立しない。
そこで日記の定義を尊重して、日々の出来事についてひとつ書くことにした。
近頃、胸が大きくなったように思う。久しぶりにセーフハウスの浴室で見た自分の身体は、以前よりもふくよかだった。気の所為、ではないのだろうと思う。
日頃から胸を揉まれていると大きくなるという俗説を聞いたことがあるが、そのせいか、それとも成長する身体であるだけなのか、ハッキリとはしない。師父様に電報を送ってみたが『知らん』と言われてしまった。
あまり巨大になると運動に差し支えるので、これは由々しき問題だ……とも言い切れない。プロポーションは良いほうが良い。姿見に裸の自分が映った時に、貧相なままよりも、出るところは出ていたほうが言葉にしがたい嬉しさがある。
つい、ポーズなどを取ってみたくなるのも、その感情の延長線上にあるのだろうと思う。
それになによりも、雫が褒めてくれる。かわいくなったね、と言ってくれる。あの方が見ているのは、顔だけではなくて全身の魅力なのだ。
戦闘中に揺れてしまうことがあるやもしれぬが、邪魔があっても任務を滞りなく達成できるよう精進すればいいだけのこと。
喜ぼう。身体の変化は。
思うままに書いていたら、とんでもない内容になってしまった。焚書するべきではないだろうか、このような怪文書は。この手が、書いたのか、これを。嘘偽りを避けていたとしても、これではあまりにも正直すぎる。
誰に見せられるのだ、こんなものを。丸めて飲み込んでしまうのが最善だろうか。
しまった、雫にだけは見せる約束をしていたのだった。




