表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/134

第128話 故郷は、悪くない場所だった

 なぜここに――と棗と綾に聞いたのは雫だった。


「え、なんでいるの。もう遊びに来るの?」


 二人は左右に首を振った。


「ううん、お見送りー。師父様に聞いたら、乗り換えまで一緒に行っていいって」

「暑いから中で待ってたー」


 雫の表情が驚きから笑顔に変わった。


「そっか、ありがとう。とっても嬉しい」

「当たり前だよー」

「雫さんとも友達だもん、それにぃ」


 綾が振り返って、前方の座席を見た。そこに座るまひるは、こちらの様子などまるで気にせずに、ポテトチップスの袋を開けようとしていた。


「まひるさんがお菓子いっぱいくれるからぁ」


 綾は天井を這って移動して、まひるの手から袋を取り上げた。


「あ、私のぉ。なんでいつも狙ってくるんですかぁ」

「いつもなにか食べてるからですよぉ、はむ」

「ザッツライト、まひるにも責任がお有りですねー、あーん」


 アリスが、綾にポテトチップスを食べさせてもらっていた。


「私もー」と棗も近づいていって、最終的には仲良く分け合うことにしたようだった。


 ため息を吐いて、リンも前方に戻った。


「まったく、里の規律が心配になる」


 すぐ近くに座っていた雫が言った。


「でも、気持ちは嬉しいよね」

「騒ぎに来たのか、本当に名残惜しいのか怪しいところですが」


 リンは表情を崩した。


「寂しく帰路につくよりは、いくらかマシだとは思います」

「だね」


 雫と笑い合っていると、今度は運転席の方から男の声が聞こえてきた。


「俺もいるぞー」


 運転中に振り返っているのは、集だった。


「俺も最後にリンちゃんに会いたかったー、寂しいぜぇ、結局お泊まりに来てくれなかったし」


 リンは小走りで運転席に駆け寄った。集に耳打ちする。


「雫の前でそのようなことは口にするな、消されるぞ」

「は?」


 肩を小突いて、運転席から離れた。


 集は指折り数えるような動きをした。


「あとそう、帰りにパチンコ行きたかったし、サウナにも寄ってこうかなって。それと」


 信号で止まって、集はこちらを見つめてきた。


「兄さんによろしくな、リンちゃん」


 なぜか、胸を穿たれたような気分になった。そういえば、ジンを覚えているものは、ここにもいたのだったな。


「ああ。案ずるな、奴は元気にやっているさ」

「そっか、なら良かったぜ」


 集は親指を立てた。


 そのとき「え?」と大声を出したのは、棗か綾のどちらかだった。


 棗は大げさに首を傾げた。


「あれ? お兄さんって亡くなったんじゃなかったっけ?」


 綾が両手を合わせた。


「あー、春ちゃん言ってたもんね」


 その春は、一番前のシートに座って窓を眺めながら、ひゅーひゅーと口笛を吹くような真似をしていた。


 集が声を上げた。


「え、うっそ、マジ、あいつ死んだの?」

「うん死んだー」

「らしいよー」


 運転席付近が、にわかに盛り上がり始めていた。雫たちはぽかんとしているが、リンも同じ心境だった。


 春の隣に座った。


「お前は、勝手に兄を殺したのか?」


 こちらを向いた春は、顔をひきつらせながら、同時に笑っていた。


「ま……死んだようなものだし、いいんじゃない?」


 リンは頭を悩ませた。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。もはや戻る気はないが、鬼籍に入ったのだというのなら、ここにいる自分は幽鬼も同然だということになってしまう。


 なので。


 真顔で、リンは言った。


「よくはない」

「ごめんなさいっ」


 春が慌てて頭を下げてきた。必死だったので、ひとまず許してやった。


 がたがた、がやがや、騒がしいバスは街に向かって走り続けていた。




いつも応援ありがとうございます。


これにて、第六章は完結となります。


ずいぶん長いあいだ里に滞在していたような感覚がありますが、リンちゃんたちはようやく、いつもの生活へ帰っていくことになります。


少しだけ成長したリンちゃんと雫のお話は、第七章以降もまだまだ続けていく予定です。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


【今後の更新について】


なろう版は、明日8月2日(日)12時10分投稿予定の幕間をもって、カクヨム版の最新話に追いつきます。


以降は両サイトの更新ペースを揃え、同じ最新話を同時に公開いたします。


第七章は8月4日(火)12時10分より開始予定です。その後は、毎週火曜日と土曜日の12時10分に更新いたします。


毎日更新はここで一区切りとなりますが、引き続きお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ