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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第123話 世界が変わったように見えるのは、自分が変わったからだろうか

 祭りを存分に楽しみ、故郷の風を存分に感じ、余すことなく祭りの夜を満喫した。


 手裏剣的当てで高得点を出せば、雫にはかっこいいと褒められ、まひるとアリスにも拍手で称えられた。たまたま鉢合わせた春の友人二人が欲しがっていたスターライトスコープと、熊のぬいぐるみを射的で落としてやると、なぜか「姉さん」と呼ばれるようになった。

 棗と綾というその二人にくっつかれて、あれこれ聞かれたりしたが、不思議と嫌な気分にもならなかった。雫がむくれていたのは気になったけれども、手を繋ぐとすぐに機嫌を直してくれた。


 やがて太鼓の音は鳴り止み、最後に祭りの終わりを告げる狼煙が上がった。


 片付けが始まり、皆がぞろぞろ帰路につく頃、雫は言った。


「また、来年も来れたらいいね」

「同じ気持ちです」


 目の前では、まひるとアリスと、春と棗と綾が、わちゃわちゃと戯れていた。

 これは私が買ったものです、だとか、食べさせてよぉお姉さん、だとか、食べ物のことでずいぶんと騒がしい。見れば、焼きそばのパックの取り合いをしていた。


 身体中がほわんとした。軽くまぶたが落ちて、目元が垂れた。


「楽しいですね、こういうのは」


 隣にいた雫が、こちらを見上げてきた。最初は気の抜けた顔で、しかしすぐに笑顔へと変わった。


「うん」


 手を繋いだまま、その騒ぎを眺めていた。


 この景色は悪くないものだ、本当に。

 また来年も、その気持ちに偽りはない。なればこそ、やらねばならぬことがある。


 雫に断ってから手を離し、遠巻きにまひるたちを眺めていた春に、声をかけた。


「春、頼みがある、いいか」

「ん、どしたの? 帯が緩んだとか?」

「師父様と話がしたい。取り次いでくれないか」


 眉を上げた春は、数秒経ってから頷いた。


「すぐに繋げるよ。取り合ってくれるかはわからないけど、メッセージでも、通信でもなんでも」

「助かる。後ほどリンが尋ねるとだけ、伝えておいてくれ」

「わかった」


 そう言って春は、小物入れから通信端末を取り出した。電源を入れて、画面に指を添えて、しかしなかなかその先には進まなかった。


 指を浮かせたまま、春は顔を上げた。


「姉さまは……」


 言い淀んで、春は言い直した。


「姉さまは、なにか大層なことをやるつもりなの? 師父様に自分から会おうとするなんて、滅多にないよね……もしかして任務のこと? 雫さんの」

「なぜわかる。皆まで言っていないはずだが」

「わかるよ、顔でわかる。なんか吹っ切れたみたいな、清々しい顔してるし、逆に不安。姉さまらしくない」


 指でほっぺたに触れた。僅かに上がっているように思えた。

 なるほど、これが清々しいの形か。


「らしくないのは、悪いだろうか」


 春は整えた髪が乱れるくらいに、首を横に振った。


「全然、悪くない、その顔結構好き。けど……なにを話すつもりかはわからないけど、死なないでね。それだけはお願い」

「ああ。そのつもりは毛頭ない」


 たとえ切腹を命じられようとも、刃を向けられようとも、まだ死ぬわけにはいかぬ。


 春は、再び端末に視線を落とした。


「ルートの選定とか、そろそろ帰りの支度も始めようと思うから、今度暇があれば付き合ってね。敵襲にも備えなきゃいけないし、セーフハウスに細工されてないか一度見てこないとだし」


 指を動かして春は師父様宛てのメッセージを作成していた。


「荷物も面倒事も増やさないでよ。師父様との喧嘩なんて、持って帰るには重すぎるんだから。事後処理を任される身の苦労も、わかってよね」

「世話をかけるな」


 なんとなく、春の頭に手を乗せてみた。


「……別にいいけど」


 唇を尖らせながら、春はつぶやいた。

 メッセージの送信を終えても、しばらく頭を撫でていた。


 手を離したのは、すぐ後ろで雫が見守ってくれているのだと気づいたその時だった。

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