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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第122話 どうか共に道を歩んでくれませんか

 一緒に逃げてほしいと聞いて、雫の顔に動揺が浮かんだ。


「なんで、そんなことをするくらいならここに残ろうよ。いいんだよ、本当にいい、どうせ戻れないなら……ここで幸せになったっていい」


 雫は声を、やや荒らげていた。


「選んでいるのと、選ばされているのは違うのだと、あなたに教えられました。ですから、その教えに反する道は絶対に選べません……いいえ、選びたくありません」

「わたしが拒否したら……?」

「悲しいです、とても」


 雫には珍しく、困ったような表情をしていた。すぐに言葉が出てこない、そんな顔だ。


「どうか共に道を歩んでくれませんか。人としての道を」


 雫はぷいっと顔を逸らした。


「いやっ、そんな言い方じゃいや。告白はロマンチックだけど、リンちゃんってばわたしに気を使いすぎるんだもん、そういうこと言うのなら、お願いじゃなくてさ」


 顔に入っていた力が緩んだ。つまりどういうことだ、つまり――雫は言った。


「自分で言ったことは守って」

「自分で……ああ」


 そうか、そういうことか。

 表情を作り直した。雫の顎に手を添えて、こちらを向かせた。


「師父様でもなく、里でもなく、あなたを選びます。ずっと側にいてください」


 声量を抑えて、つぶやくように雫は言った。

「それでも嫌だって言ったらどうするの」

「攫ってでも連れていきます。あなたをこんな里には置いていけない」

「あ……そう、そっか……は、はは」


 硬かった雫の表情が、やっと崩れた。


 雫はへなへなと身体をくねらせるような動きをした。


「ぬはぁ、脳天直撃ぃ。結局わたしの意思なんてみーんな関係ないんだー、リンちゃんも酷いんだー、んふふ、でもぉ、さらわれたいって思っちゃった」


 照れたように笑う雫は、途端にしおらしくなった。


「大切にしてね、いなくなったりしたら許さないから」

「はい、もちろんです」

「あとぉ、最初っから諦めちゃダメだよ、ちゃーんと師父さんとお話してからね」

「は……はい」


 肝が冷えるような、背筋が震えるような、そんな感覚があった。むしろ師父様と対面してる時よりも、落ち着かなかった。


 話は通るか、通らぬか。刃を向けるか、穏便に済むか。街に戻るか、逃亡生活に移るか。

 少なくとも里には残らない、残らせない。


 それだけは確かだ。


 小さく頷くと、背後から声がした。振り向くと、本殿の陰からまひるが顔を覗かせていた。


「あ、こんなところにいたー、待っててくださいって言ったじゃないです……ぁ」


 まひるは口を押さえた。みるみるうちに顔が青くなっていく。


「あ、あ、こんなとこで、ふ、ふたりで、ま、マナー違反です」


 なぜかまひるは、目の縁に涙を浮かべていた。


 雫はまひるのところに駆け寄って、手から落ちたハンドガン入りの袋を拾い上げた。


「ごめんなさい、大事なお話があって。別に変なことしてたわけじゃないから……あ、そんなことよりね、リンちゃんがわたしのこと攫ってくれるんだって、一緒にどう?」

「へ? へええ?」


 泣き顔から困惑へと、まひるの表情は目まぐるしく変わっていった。

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