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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第121話 師父様なら女同士の結婚も可能にする

 雫の手を引っ張って、境内を奥へと進んだ。


 途中、雫はまひるとアリスを発見して「あ、いたよ」と言っていたが、リンは足を止めなかった。


「おーい……っとと、リンちゃん?」


 黙ったまま手を引き続けた。

 一瞬だけ抵抗があったが、すぐに力は緩んで、雫はなにも言わずに着いてきてくれた。


 櫓の横を抜けて、本殿の後ろに回った。見えるものは暗く、祭囃子もどこか遠い。

 雫が呼吸を整えるのを待たず、両肩に手を置いた。


「大事な話があります。雫の……二人の将来に関わることです」


 ぽかんと前を見ていた雫は、軽く顔を上げた。


「もしかして、師父さんの言ってたこと?」

「はい。実は、里に帰郷したその日から、師父様に同じ話をされていました。もう街には戻らず……」


 契りを結んで夫婦になれ。そのままでは伝えられない、しかし言葉を変えたとして伝えられるのか。男女だとかそれ以前に、結婚という行為自体を雫は拒まないかもしれない。


 雫は首を傾げた。


「どうしたの? 街には戻らず……なに?」

「……この里で暮らせと」

「うん、それはさっきも聞いたよ。でも違うよね、他になにか言いたいことがあるみたい」


 雫に見つめられる。闇に浮かんだ栗色の瞳は、自分にだけ向けられていた。


 やはり拒むことなどないのだろうなと、思った。


「結婚しろと、命じられました。二人は一緒になってこの里で生きろ、それが最善だ、と」


 力が抜けたように、雫の口が小さく開いた。


「結婚……?」

「はい。無理だとおっしゃられるかもしれませんが、あの方は無理を通します」


 発熱するように、雫の頬が赤くなった。


「そっか、そうなんだ、里に残れってそういうの、そうなんだ、へえ……」


 雫は視線を下にむけて、きょろきょろと行き場がなさそうにしていた。

 やがて、雫はぽつりとつぶやいた。


「わたし……それならいいかもって思う。急だし、まだ早いかもって思うけど……嫌じゃないよ」


 甘えるような視線に、どきりと胸が跳ねた。腕を背中に回したい、抱きしめたい、唇を奪いたい。

 身体が勝手に動きそうになる。抑えねば、食らってしまいそうになる。


 けれど違う、それは違う。契りを結ぶのは、こんな辺境の村じゃない。


「……ですが、その申し出を断りました、今でも正しかったのだと思っています。街に帰るべきです、某は学校にいる雫が好きです」

「そっか……リンちゃんがそう言ってくれるなら……うん」


 雫は何度か頷いていた。小動物のようなその動きを見ていると、少しだけ笑みが漏れた。


「しかし、忍びとは己の生き方を己で決められぬ生き物ゆえ、望みが叶うかどうか未だにわかりません」


 賭けには勝てる。男には戻らない。対話の機会は設けられる。師父様は誠実なお方だ。


 しかし、要望が通るとは限らない。

 里に残れと言われれば、それまでだ。

 制服に袖を通すと決められるのは、自分ではない。


 雫の眉が、垂れた。


「じゃあ、どうするつもりなの。師父さんが話を聞いてくれなかったら」

「そうなれば……忍びをやめることになるかもしれません。従えぬ命令をくだされた場合、逃亡生活もやむなしかと」

「そんな……じゃあやっぱり、わたしリンちゃんと結婚する、この里に残る」


 首を左右に振った。


「一緒に、逃げてくれませんか。学校にはもう通えません、不自由な思いもさせてしまいます、しかし……雫には隣にいてほしい」


 返事は、すぐにはやってこなかった。

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