表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/133

第116話 兄姉さまは人気者【side 春】

 兄姉さまと雫さんの決闘……のようなノロケがあって以降、ずいぶんと里は静かなものだった。最初こそ異物は警戒されていたりしたけれど、もうすっかりあの人達は日常に馴染んでいた。

 あの二人と来たらイチャイチャベタベタ、人目なんて気にしないで抱きついたり、毒見あーんしていたりしてたのが、どうやら反対に警戒心を解いたようで、今では逢瀬を目撃するだけでご利益があるともっぱらの噂だ。


 早いもので、あれからもう二週間になる。雫さん達は、今度開かれる夏祭りの準備を手伝いに行っていた。もちろん、兄姉さまも一緒に。

 神社からは遠く離れた小川にまで、櫓を建設する音が聞こえてくる……ような気がした。


 水面を白い雲が流れて、周りでは蝉がジージー鳴いている。

 人生の中休みに脇役と化した妹は、まったく飽きもせず小川を眺めていた。朝から午後までそうしていた。雑用とか、勉強とか、害獣駆除の手伝いとか、やれることは色々あるけれども、そんなことよりもゆーっくりしていたかった。


「……里は今日も平和なり」


 つぶやくと、耳元で甘ったるい女の子の声がした。


「平和で結構~、里の危機なんていらないよ~」


 暇があれば理由もなく一緒にいる、同期の(なつめ)だった。


 反対側からも、女の子の声がした。


「ねー、川が真っ赤になったらいやだよー」


 もう一人の親友、(あや)は腑抜けた顔でふわふわしていた。半袖の忍び装束なんて着てなきゃ、とても忍者には見えない。


「真っ赤と言えば~」


 最近この二人には流行りがあって、それは脈絡もなく話題に侵入してくる。


「リンさんってかっこかあいいよね~、あんなふうに戦える女の子になりたかったな~」

「ねー、この間目が合ってきゅんってしちゃったー」


 人を間に挟みながら、そんな話を延々としていた。なにが好きなのかとか、雫さんとはどこまで行ったのかとか、要人暗殺の経験はどのくらいか、なんてことをこれまでも色々聞かれた。


「雫さんの前ではでれでれなのに、話すとけっこー冷たいのがいいよね~」

「わかる、わかる、キュートでクールでビューティーだよねー」

「……」


 のどかな川辺は、この子達のせいで存外騒がしかった。


 兄姉さまをお気に召したのは結構、言ってることもよくわかる。けど、足りない。足りないよ、棗、綾、二人ともあの人とよく似た堅物兄さまのことを知っているのに。


 だから聞いた。


「ねえ、春にさ、兄さまがいたのって覚えてる?」


 二人の視線が、シンクロするようにこちらを向いた。

 五秒くらい経ってから、返事がやってきた。


「あ~いたいた、えっとぉ……」


 考え込むように、棗は視線を下げた。ぽんっと手を叩いて、すぐに顔を上げた。


「タカシさんだっけ? 元気ぃ?」

「うん、ぜんぜん違うけどね、名前」


「あっ」と綾が声を上げた。


「シンさんだよね、あのちょっと怖い人」

「惜しい、あと一歩」


 ぽかんとする二人に、ジンという本当の名前を伝えた。特に興味のなさそうな「へえ」という相槌だけが返事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ