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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第115話 戦いとは幸福なのだと見つけたり

 見つめ合ったその瞬間に、雫は飛び出してきた。まるで野球のスイングのように、デタラメに剣を引いていた。

 顔を見ていると、あっという間に雫は目の前にやってきた。


 つま先でブレーキをかけて、踵でしっかりと地面を踏みしめ、殴りつけるように雫は剣を振った。


「リンちゃん!」

「雫!」


 真横からの一撃を、短刀で受け止めた。腕が震えて、ピリピリとした痺れが走った。


 衝撃が頭に入り込んで、弾けるように思考が浮かんだ。自分の声を、自分だけで聞いていた。

 雫、聞いてくれ雫、変化の是非はわからないが、変われることは嬉しいのだ、尽くせることがなによりも嬉しいのだ。だから、世界で一番大切な人を、血なまぐさい世界に踏み入れさせたくないと思うのは、当然のことだ。


 拮抗したまま、口を開いた。


「申し訳ありませんでした、排除するように扱ってしまって。しかし、あなたが大切だからです、愛しているから、こちら側には連れてきたくない」

「わかってるけど、それ寂しいよ。リンちゃんのこともっと知りたい、好きなもの嫌いなものそのまま知りたい」


 火花のような、魔法の光が散っていた。

 全力を出しているつもりなのに、押し返せない。雫の想いは、あまりにも力強い。


「こうしてみて、ひとつわかったことがあります。変わろうとするのは、嬉しいからです。かわいい自分になって、雫に喜んでもらえたら幸せだからです」

「でも本当に好きなものを捨てないでほしい。元のリンちゃんもわたしは好き、嫌いになんてならない。だからね、射撃練習場に行きたい、毒薬も調合してみたい、たまにこうやって戦ってみたい」


 緩む。顔が、胸が、腰回りが、全身が緩んでしまう。雫の声が聞こえるだけで、幸せというものがどんどん増幅されていくのがわかる。


 戦って嬉しい、あったかもしれない。戦って幸福だ、そっちは知らなかった。


「構いません、雫が望むなら、なんだって」

「リンちゃんが望んで」

「はい、喜んで」


 笑顔が溢れて止まらなかった。嬉しい、嬉しい、嬉しい、変になる、頭がおかしくなる。

 ああ、ああ、震える、身体が敏感になる、ダメだ、これは。


 熱い吐息が出た。


「生まれて初めて、本当の意味で素直になれた気がします。ありがとうございます、いつも、いつも……嬉しいことを教えていただいて」

「うん、わたしも嬉しい。少しかもしれないけど、リンちゃんがわかった気がするもん」


 雫の顔に、満面の笑みが浮かんだ。


 やがて剣と短刀は自然と下りていって、互いの手元から消滅した。見つめ合う――そんな暇もなく雫に抱きついていた。


 耳元に頬をこすりつけながら、雫は言った。


「もう、みんな見てるんだけど」

「見せましょう、あるいはそのための帰郷かもしれませんから」


 体温があった。東山雫の形をしていた。


 しばらくして「ひゅう」と口笛を吹いたのはきっとアリスだった。

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