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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第114話 死ぬこと自体はいい、雫と会えなくなるのが辛い

 どれが自分だ、という雫の問いに明確な答えは出なかった。


 ただ、今となっては戦いと任務に溺れているだけではいられない。


「ぶ、物騒な某では雫は喜んでくれません。射撃練習場にも、興味がなさそうにしていたのは承知しています。ですから、高台や花畑などがよろしいかと」

「そういうの凄くいい、ほしいよ、物騒な場所よりいいし、二人で行きたい。けど、リンちゃんが最近ちょっと違う、だから聞いてるの」

「聞かれても、答えられませぬ。変わるのは、いけないことでしょうか」

「いけなくはない」


「けど」と言って、雫は手首を引いた。するりと拘束から抜け出して、一歩下がったところで低く剣を構えた。


 雫の表情が、一瞬だけ崩れた。目尻を垂らして、悲しむようにこちらを見つめていた。

 触れたくて、手を伸ばした。けれど雫は、剣を下ろしてくれなかった。


「わたしは、どれも好きなの。どのリンちゃんも、どの瞬間も好きなの」


 雫は口を閉じた。足元を見るように視線を動かしてから、また顔を上げた。


「置いてきぼりにされて、すごく嫉妬したよ。だけど、知りたいって思ったの。好きだからもっと前のめりでいいって、合わせてもらうだけなんて、嫌だって」

「ぁ……雫」


 胸の奥に、一滴の雫が落ちた。ちゃぽんっと音を立てて、波紋が広がった。


 剣を構える雫が、一人前の武士に見えた。立ち姿は、もはや武器の格に負けていない。

 一撃を、受けてみたい。たとえ死んだとしても――まさか、死ぬのはもったいない、一度限りなど考えられない。


 雫の表情が引き締まった。


「わたしの全力、受け止めて。リンちゃんの全力で」


 短刀を握る手に、力が入った。ミシミシと骨が鳴った。

 心臓が騒いでいる。頬が上がっていく。


 雫、やはりあなたは最高だ。


「……わかりました。想いを刃に込め、想いを刃で受けましょう」


 五歩分だけ後退した。十分な距離を取ったら、雫と相対して腰を低くした。

 腕を曲げて、短刀を構えた。持てる力を、全ての魔力を、刃に込めた。


「ただし一太刀だけです。これが終わったら、でぇとしてくれると約束してください」

「本気で受け止めてくれるって、最初に約束してくれるなら」


 リンが深く頷くと、雫の顔に小さな笑みが浮かんだ。

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