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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第110話 リンちゃんってたまに男の子っぽい【side 雫】

 お庭に出ると、リンちゃんは忍者の格好をした人たちと戦っていた。


 塀の上に上ったり、砂埃を巻き上げたりしながら、カキンカキン音を鳴らしている。

 気絶したおじさんが植木みたいになってたり、池にお尻が浮かんでたりするけど、見た感じ血は流れていなさそうだった。


 今は、小学生くらいの子供の忍者三人に、リンちゃんは囲まれていた。


「殺す気でこい。某に一太刀でも食らわせることができたのならば、師父様に推薦してやろう」


「やぁああああ」


 飛び込んでくる子を、リンちゃんは軽々といなしちゃう。

 一人の腕を掴みながら、もう一人の武器をクナイで弾いて、頭上に跳んだ女の子が振り下ろす短刀も、二本の指で真剣白刃取り。全く相手にならないで、三秒もすれば子供たちはみんな地面に倒れていた。


「攻撃に掛け声はいらぬ。音を消してこそ忍び、一から出直せ」

「は、はい……ありがとうございました……」


 糸が切れたみたいに、子供たちは上げていた顔を地面につけた。


 それが終わると、また大人がリンちゃんの前に立ちはだかる。口元を黒い布で覆ったおじさんが、鎖鎌をぶんぶん振り回していた。


「手合わせ願おう!」

「承知」


 そしてリンちゃんは短刀片手に迎え撃つ……ってなにこれ。


 だーれもこっちに気づいてない。庭の隅っこから大乱闘を見物しつつ、隣にいるまひるちゃんを見た。


「これ、なんだろうね。撮影かな?」

「いやあ……たぶん本気なんじゃないかなって思いますけど……」

「だよねえ、リンちゃん楽しそうだし」


 チャンバラを続けるリンちゃんは、笑っていた。真剣で真面目な表情なのに、ほんのりと笑ってるのがわかる。

 声も弾んでいるし、久しぶりに忍者っぽい。なんか夢中、すごく夢中。


「これじゃ声かけるの躊躇しちゃうよね、いつ終わるんだろ」

「ですね……って、雫さんが?」


 まひるちゃんは、変なものを見るような顔になった。目に、疑の字が浮かんでいた。

 一度視線を合わせて、すぐにリンちゃんの方に向き直った。鎖鎌さんとの対決は終わって、今度は仕込み杖のおじいさんと戦っていた。


 腕を真っ直ぐに伸ばして、リンちゃんの身体と手のひらを重ね合わせてみた。けど、ひょこひょこ動くから、すぐに手の中からいなくなっちゃう。

 グーパーとニギニギしても、手応えってやつがなかった。


「だってぇ、今のリンちゃん、男の世界って感じなんだもん。あんまり邪魔したくないよ」

「……確かにそういうノリかもですけど、男なんて言ったら悪いような……」

「でもぉ」


 なんか、そういう感じ。近づけないってちょっと思う。声かけてみようかな、きっと飛んでくるんだろうな、でも、でもなんか、なんだろう。


「似合ってるなって思うんだよね、ああいうのも。裸エプロンとかもかわいいけどね、戦ってるのもやっぱりいいなって」


 まひるちゃんから返事がやってこなかった。見ると、目を点にしてこっちを凝視していた。


 あ、裸エプロンのことは二人の秘密だった。たぶん。

 まあいいや。


「まひるちゃんも思わない? 男っぽいところも素敵だって」

「ぇ……あ、そうですね、そういう言い方をされると否定はできませんけど」

「ほら」


 笑顔を向けると、まひるちゃんも笑ってくれた。楽しそうっていうよりは、困ってるけど。


 リンちゃんの周りには、気絶した人の山がどんどん積み上がっていた。峰打ちで、誰一人として大怪我してない。それになんだか、みんな嬉しそうな顔してる。


「まひるちゃんは、ああいうのわかる? 戦って、楽しいって気持ち」

「ええと、私はあんまり近接格闘戦は得意じゃないっていうか……痛いのは嫌です。わかるかって言うと……わからない気持ちのほうが強いかなって思います」

「逆さ吊りにされてビビってたもんね」

「ぅ……見てたんですか」

「うん」


 そうだよなあ、そうだよ、普通の女の子は戦わないもん。ましてや殴り合いなんて、好きな子絶対少ない。殺されるより痛いほうがやだし。

 だけど、リンちゃんはきっと好きなんだ、ああいうの。


 わかってあげられるのかな、リンちゃんの好きなもの。

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