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凄腕忍者、TS魔法少女にされる 〜護衛対象に溺愛されても、某は百合には落ちぬ〜  作者:
六章 乙女心や芽生えし夏の月

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第97話 まるで初夜ではないか

「ひとりなあ、いるんだ、君みたいな堅物……真面目なのが。最近会ってねえけど、死んでるとは思えねえし……あれ、ていうか、兄妹だって言ったっけ、春ちゃんの、ってことはあいつの……そんなことある?」


 口は閉じたまま、なにも言わない。集の視線を感じるが、黙る、黙っている。

 いやしかし余計に怪しいのではないか。いや、だが口を開けばボロが出かねない。


 凝視するような、視線を感じた。


「よく見たらあいつに似て……似てねえな別に。しっかし、全然知らなかったなあ、なんで今になって急に、表に出てきたの?」

「……雫のためだ。あの方を守護するために、最精鋭である某が抜擢された。これ以上は機密ゆえ、話せることはない。もう聞くな」


 息を荒げない。視線を変えない。声の調子を一定に。

 肌が粟立つような感覚は、むしろそのまま受け入れる。これでバレないはずだ、どんな嘘も。


 集は言った。


「へへ、なんか嘘っぽいなあ、俺そんな話聞いたことねえもん」


 集は笑った。忍びのくせに、歯を見せていた。


「君の兄さんも嘘が下手だったなあ、真面目なのが災いしてんだなあ。およ、やっぱ性格はそっくりだあ」


 わざわざこちらに向き直って、集は言った。


「俺、嫌いじゃねえよ、そういうの」


 真正面を向いたまま、答えた。


「男に興味はない。少しでも良好な関係を築きたいのであれば、そのような発言は今後控えられたし」

「わ、すまんすまん、そっちはもう諦めたさぁ。兄さんのこと言ってるつもりだった」


 斜め下を見て、集は頬をかいていた。嘘が下手なのは、お互い様ではないか。


 集の謝罪を受けて、それからは静かに雫たちを待った。


「女の風呂って長えな」

「まったくだ」


 うっかりそんなこと言ってしまうと、駆け足するような足音が風呂側から聞こえてきた。

 浴衣姿の雫が、いの一番にのれんから顔を出した。


「おっまたせぇ、長引いたから急いできちゃった」

「いえ、まだゆっくりされてても構いませんでした。日が変わり、朝になっても、この場は守り続けましょう」

「それじゃふやけちゃうよぉ、でも、ありがと」


 やや湿った人差し指に、ほっぺたを触られた。柔らかさが波のように広がって、温泉に浸かったような心地になった。


 雫の後ろからすぐにまひるがやってきて、最後にアリスも現れた。


「お待たせしちゃってすみません、あ、明日は私が番をしますから」

「ゥぅ……のぼせちゃいました」


 アリスがゲップのような息を吐いて、その拍子に集のことを思い出した。

 雫を守らねば、と思い身体を傾けると、もう奴の姿はなかった。


 のれんの奥を覗くと、足音を立てずに大浴場に入っていく集がいた。


「むぅ……存外わきまえているのかもしれぬな」

「リンちゃんどしたの? あ、今から入る?」

「いえ、某は着替える前に水を浴びたので、結構です。さ、部屋に参りましょう」


 雫の背中を押して、大浴場を後にした。



 まひるとアリスと別れて部屋の前まで戻ると、はつさんが待ち構えていた。にこにことしながら、雫に言った。


「おかえりなさいませ。お布団を用意しておきました」

「わ、ありがとうございますぅ、ほんとに旅館みたいだなあ」


 はつさんは口に手を当てて、こちらを見た。


「では、ごゆっくり」


 足音を立てて、はつさんは去っていった。笑顔を絶やさず、終始楽しそうな様子だった。

 首を傾げながら、襖を開けた。室内を見て、思わず手が止まった。


 隣で、雫が驚いたように声を出した。


「あっ」


 部屋の真ん中に白い布団が敷かれていた。


 なぜか、一組だけだった。

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